日本共産党

2003年12月17日(水)「しんぶん赤旗」

主張

大学予算削減

国立大学法人化の前提崩す暴挙


 国立大学は来年四月から「国立大学法人」に移行しますが、政府は年内にも、国立大学法人に支出する国の予算を、毎年削減するルールを決めようとしています。“法人化は教育研究をいっそう発展させるためで、財政削減のためではない”という政府の国会などでの説明をくつがえす、とんでもない暴挙です。

毎年数%ずつの削減

 これまで国立大学の基幹的な研究費や人件費は、国の財政支出が抑制されても一律削減の対象とならない「義務的経費」となっていました。しかし、政府は法人化を契機に、これを一律削減の対象となる「裁量的経費」に変更しようというのです。さらに既存の独立行政法人と同じように、前年度予算に「効率化係数」をかけて毎年数%ずつ削減できるルールをつくろうとしています。この予算削減計画を年内に決定し、二〇〇五年度から実施しようというのが政府の考えです。

 仮に、予算が五年間毎年一%ずつ削減された場合、小規模な大学が二十以上なくなる金額です。教職員のリストラが引き起こされるなど、高等教育や基礎研究の基盤が掘り崩されることは明らかです。まさに国立大学の存立基盤そのものが失われかねない事態です。

 学費の高騰につながることも濃厚です。実際、財務省は、授業料の標準額を二年ごとに値上げするルールをつくろうとしています。これでは国の予算削減がそのまま授業料値上げにはね返るしくみとなります。メディアでも「国立大と私学と同じにならないか。貧しい家庭の子弟の学問の道を閉ざすことにならないか」(「朝日」十二月九日付)との論評が出されているのは当然です。

 重要なのは、予算削減しないことが国立大学法人化の前提になっていたことです。文科省もくり返しそう説明してきました。国立大学法人法の国会審議でも、この法律が独立行政法人通則法の枠組みをとりいれていることから、既存の独立行政法人と同じように予算が毎年削減されるのではないかと、日本共産党や多くの大学関係者が強く反対しました。

 こうして国会では「大学の教育研究機関としての本質が損なわれることのないよう、国立大学法人と独立行政法人の違いに十分留意する」「法人化前の公費投入額を十分確保」するとの付帯決議があがり、政府もこれを守ると答弁しました。

 これは、政府と国会による法律執行にあたっての明確な意思表明です。いま起きている事態は、この前提条件を土台から崩すものです。あくまでこれを崩そうというのなら、いったん法人法を凍結して、国会で審議をやり直すのが筋です。

 国立大学協会は予算削減計画の見直しを求める要望書を文科省に提出しました。国立大学理学部長会議や農学系学部長会議などが同様の要望書を政府に提出するなど、大学関係者から批判の声があがっています。

削減計画は撤回を

 国立大学協会は要望書の中で、学長の「指名の返上をも念頭におきつつ、重大な決意」をもって提出するとまでのべています。法人の責任者の「決意」に、政府は真剣に耳を傾け、国会での答弁や決議への責任をはたすことが求められます。

 日本共産党の石井郁子衆院議員が質問主意書でこの問題をただしたのに対し、政府は先日、「付帯決議にのっとり…運営費交付金を措置する」と答弁しました。このことばが本当なら、いま検討している予算削減計画は撤回すべきです。


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