2003年12月13日(土)「しんぶん赤旗」
広島に原爆を落とした米軍B29爆撃機「エノラゲイ」が十五日から、ワシントン郊外の国立スミソニアン航空宇宙博物館別館で一般公開されます。同機の展示は、原爆投下の被害についてなんら言及がありません。米国内で批判が広がり、公開にあわせ日本から被爆者も訪米し、要請・抗議をおこなうとともに、展示のあり方、原爆投下の正当性の是非、米国の現在の核政策などについて米国民と対話をする予定です。(ワシントンで遠藤誠二)
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エノラゲイは、四十三年ぶりに完全復元され、バージニア州にあるダレス国際空港隣に新しく建てられた別館で展示されます。スミソニアン博物館側は、爆撃機そのものの技術的な紹介と「初の原爆投下を広島におこなった」などの説明にとどめる意向。米国内の歴史家、平和団体代表らでつくる「核の歴史と現政策を討議する全国委員会」は、展示を「歓迎する」とする一方で、原爆による被害状況も説明すべきだと主張し、十一月上旬、請願署名を博物館に提出しました。請願は、「展示が、最初の原爆投下はテクノロジー分野での偉大な業績」のみの紹介に終わるのなら、核兵器を将来、再び使おうとしている人たちの目的に沿ったものとなってしまう、と危ぐを表明します。
スミソニアン博物館は七日、「航空・宇宙博物館は、飛行と航空の発展、飛行を可能にした歴史と記録を伝える」として、当初の予定を変えるつもりはない考えを表明。全国委や被爆者らは、十五日の公開開始日、博物館周辺で抗議行動に取り組みます。
エノラゲイは、一九九五年にワシントン市内のスミソニアン博物館で機体の一部分が一般公開されました。この時、博物館側は原爆被害についても展示する予定でしたが、議会内の保守派や退役軍人団体の圧力で取りやめた経過があります。
ブッシュ大統領は十一月二十四日、小型核兵器の研究・開発を十年間にわたって禁止していた法律条項を廃止。十二月一日には小型核兵器の研究に「ゴー」を与え、より大型の地中貫通核爆弾の開発を促進する予算に署名しています。「討議する全国委員会」は、原爆使用から約六十年を経た今、展示のやり方だけでなく、原爆投下の正当性、小型核兵器などを開発する現ブッシュ政権の核政策など、米国をめぐる核問題について「バランスのとれた議論をしたい」といい、活動を継続させる必要性を説いています。