日本共産党

2003年12月12日(金)「しんぶん赤旗」

日航裁判

“空の安全 守った”

「完勝」に副操縦士ら歓声


 「日本航空は、運航の安全と乗員の健康を守れ」−−。副操縦士。航空機関士で構成する日航乗員組合の訴えに東京高裁は十一日、再び日本航空を断罪する判決を下しました。提訴から十年、勝利判決に組合員や支援者らは、冷たい雨のなか「完勝だ」と喜びをかみしめ、報告集会で会社の安全軽視体質を是正させる決意を固めあいました。

 日本航空は、交代要員なしの太平洋横断など「世界で最も過酷な運航」を乗務員に強要してきました。

 交代要員なしで「乗務時間九時間・勤務時間十三時間を超えて勤務する義務のないことを確認する」。判決が読み上げられると傍聴席から「よっしゃ」の声が沸き起こりました。

 国内線の三日を超える連続勤務も退けられた判決に、こぶしを握り締めて聞き入っていた機長(35)は「日航のやり方を是正する大きな一歩です」と語ります。「無線の聞き間違いなど細かいミスが頻繁にあっても会社は、体はきついかもしれないが安全上は問題がないと繰り返すだけだった」と憤ります。

 「非常にうれしい」というヨーロッパ航路などで乗務してきた稲垣一郎さん(38)は、「会社の勤務協定が安全だという人はだれもいない。それでも会社は(協定を)変えることがなかった」といいます。

 「ぼーとして管制の指示に気づかなかった」「着陸の減速が遅れる」など疲労蓄積によるミスの体験は、組合員から何度も会社に訴えられています。

 濱田俊郎乗員組合前委員長は、「判決は、リストラなど労働条件の不利益変更が安易に認められる一般の風潮に歯止めをかけるうえでも意義がある内容だ」といい「会社は、居眠りを訴えた機長の報告書を書き直させ、ミスは個人の能力の問題にすり替えてきた。職場の声を握りつぶす経営者の責任を糾弾したい」と話します。

 日本航空広報部の話 改定は必要性や安全性の検討が十分された上で、激化する経営環境における人件費効率に向けた向上施策であり、判決は遺憾だ。


リストラ政策への警告

解説

 労働者の基本的権利とともに安全問題を問う「空の安全裁判」として国際的にも注目されてきた裁判で、東京高裁は十一日、九九年十一月の東京地裁判決をさらに前進させた組合側完勝の判決をくだしました。

 高裁判決は、一審のように直接的な形で安全性について論じてはいませんが、乗員の労働条件の改善によって安全性の確保を求めたものといえます。さらに、監督官庁である国土交通省航空局の責任や、運送業の責務である公共性と安全性に背を向けた日航の営利優先、人権無視の経営体質を改めて問い直すものとなりました。

 九四年四月に組合側が提訴に踏み切ったのは、会社側が九三年十月三十一日に労働協約を一方的に破棄し、翌日の十一月一日に就業規則を改定したからでした。

 日航と同乗員組合間では、労働協約(労働協定)と就業規則で、国際線二人乗り交代要員なしの編成で着陸回数一回の場合、乗務時間(実際に操縦する時間)が最長九時間、また二回着陸する場合は八時間半を超えてはならない、と決められていました。

 ところが、日航が最長九時間乗務を十一時間としたため、勤務時間(乗務時間+飛行前後の約二時間半を加えた拘束時間)制限が延長されました。また、最終目的地までは機長と副操縦士が責任をもって運航する「勤務完遂の原則」も導入されました。

 米西海岸のサンフランシスコやロサンゼルス線では、交代要員なしで往路を運航し、現地で一日休息。復路では逆風の長時間勤務となり、睡眠と疲労、集中力の低下などで乗客・乗員の安全に影響がでかねない状態になっていました。

 判決は、日航という巨大企業がおこなった労働条件の大幅な切り下げについて、その効力を真正面から否定したものです。判決は組合側の勝利にとどまらず、ルール無視の会社側のリストラ「合理化」政策に対する警告であり、空の安全を守っていく上で大きな意義をもつものです。(米田憲司記者)


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