2003年12月9日(火)「しんぶん赤旗」
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「ウチでとっている新聞に“完全失業者数は五カ月連続で減った”と出ていたけれど、失業問題は良くなっているの?」。先日の日曜日、甥(おい)の耕治君がこう質問してきました。中学三年生です。「いや、まだまだ深刻だよ」と私。次はその叔父・甥の会話です。(篠田隆記者)
耕治君 ねえおじさん。完全失業者は減ってきているんでしょ。
記者 うん。統計上ではそうだ。総務省が先月の二十八日に発表した十月の完全失業者数は三百四十三万人で、一年前の同じ十月と比べ十九万人減った。減少は確かに五カ月連続だ。
耕治君 やっぱり!
記者 ただ、完全失業者数は「労働力調査」という統計で分かるんだが、調査方法をよく知っておく必要があるよ。
耕治君 どういうこと?
記者 その調査でいう「完全失業者」とは、(1)仕事がなく調査期間中(月末一週間)に少しも仕事(一時間超のバイト含む)をしなかった(2)仕事があればすぐ就ける(3)調査期間中に仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた─という三つの条件を満たす人だ。一つでも合わないと完全失業者には数えない。
耕治君 その「完全」ってなんなの?
記者 昔は求職活動をしていなくても失業中なら「失業者」と数えた。でも一九四九年から求職活動を加え、「完全失業者」としたんだ。
耕治君 ふーん。
記者 実はその「完全」が問題なんだ。たまたま月末の一週間に求職活動をしていなかった失業者も外されるんだから、「完全」でなくても失業者はいっぱいいる。
耕治君 でもそれは統計の基準だから、それを変えるわけにはいかないんじゃないの。
記者 ハハハ、そりゃそうだ。でもね、統計というのは一面からみていてはだめだよ。君も知っているように、いまは大変な就職難だ。何回面接を受けても採用されないという失業者が多くいる。同じ労働力調査の詳しい分析で分かったんだが、一年以上も失業している人の割合が完全失業者のなかで34・3%と最も多くなったんだよ。
耕治君 へー。そうなんだ。
記者 そうなると、求職活動を一時あきらめたり、様子をみる人もでてくる。東京のある私立大学の調査だと、卒業式までに就職できた人は、十年前は83%だったが今春は55%だ。就職をあきらめ、資格をとるための勉強やバイトなどをしている卒業生も多い。
耕治君 友達の兄さんもフリーターだよ。
記者 同じ労働力調査に「非労働力人口」という項目がある。ここが増加し続けている。働いてなく求職活動もしていない人たちだ。高齢化で増えている面もあるが、完全失業者に数えられなかった失業者も入る。最新の調査では、非労働力人口のなかで就業を希望している人は五百三十一万人もいた。このうち八十九万人は適当な仕事があれば「すぐ就ける」という人たちだ。
耕治君 有効求人倍率が改善しているのはどうなの?
記者 十月は六年ぶりに〇・七〇倍台を回復した。しかし、増えているのはパートなど低賃金で不安定な雇用だよ。パートの有効求人倍率は一・五八倍で求職者二人に求人が三人以上もあった勘定だ。しかし、パートを除くと〇・五五倍で求職者二人に求人は一人という寂しさだ。
耕治君 そうだったのか。
記者 企業はいま、正規社員を減らし、パートや派遣社員などを増やしている。しかも、働いている人は過労死もでる「サービス残業」、低賃金・長時間労働だ。
耕治君 仕事はあっても雇用面ではちっとも良くなっていないんだね。みんなが希望する職場で、安定した雇用と生活できる賃金で働けるようにならないかなー。そうなったらバリバリ働いちゃうけどね。