2003年12月3日(水)「しんぶん赤旗」
国立大学法人法が成立し、二〇〇四年四月からの移行を控え、全国大学高専教職員組合(全大教、委員長=関本英太郎東北大学教授)は十一月二十八から三日間、東京・国立市の一橋大学などで、教職員研究集会を開催し約三百人が参加。大学の自治をどう守り発展させるか、国家公務員でなくなる教職員の労働はどう変わるかなど、法人化後の新たな問題を討議しました。
副委員長の糟谷憲一一橋大学教授が基調報告。法人法は成立したが、大学人の声を反映して衆参両院で付帯決議が採択され、今後の運動で権限乱用の歯止めとなる重要な論点を引き出したとのべました。今後中期目標・中期計画と評価システムの導入によって、自治・自律的機能の弱体化の危険があるが、「それに対抗するのが学問の自由と大学自治の理念」であるとし、奮闘を呼びかけました。
「国立大学法人の課題」のテーマで記念講演にたった羽田貴史広島大学教授は、日本の法人化のなかでも推進されている「企業的大学運営」が、アメリカ、イギリス、ニュージーランド、オーストラリアなどでどう行われているかを、調査をふまえ報告。経営学修士号取得コースなど「商業性の高いプログラムを“売る”」傾向、資金を提供してくれた企業の意向で研究発表が制約される例、外部からの資金集めに向く分野と向かない分野の格差(人文系の衰退)、若手研究者の身分の不安定化などの諸外国の実態は、法人化を目前にした参加者に衝撃を与えました。
分科会では、法人化後の自治機能の行方や教育研究と地域との関係、教職員の労働・身分問題、教員養成の現状などの課題を議論。
「法人制度下における大学の自治・自律的機能の枠組づくり」分科会では、東京大学の参加者が、法成立直後の七月に、総長が自らへの「包括的な授権」を要求した「所信」を表明し、評議会に総長信任投票を要求したと報告。京都大学からは、総長選挙で、法人化を推進する候補を抑え、総長の権限強化に批判的な候補が当選したと報告されました。
法人化後は、教職員が、労働条件などが法律で決められる国家公務員ではなくなります。「法人化と労働関係」分科会では、労働者と大学法人が交渉して労働協約を結ぶ新たな労働のあり方への不安が多くの参加者から出されました。「国家公務員は男女平等の職場と思って就職した。民間では男女平等は努力義務として扱われている。就業規則に平等の項目を入れるべき」などの声が出されました。ほかに、非常勤職員の雇用保障や育児休業、裁量労働制などさまざまな不安が表明されました。