2003年11月24日(月)「しんぶん赤旗」
イラク情勢が極度に悪化するもとで、同国への自衛隊派兵に固執する小泉自公政権は、深刻な矛盾に直面しています。国際的にも大義を失ったイラク戦争と、それに続く不法な占領を支持し、自衛隊派兵を強行しようとする同政権の立場はいまや完全に破たん、その責任がきびしく問われています。
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米英による対イラク戦争は、そもそも国際法と国連憲章を無視して行われた無法な侵略戦争です。その戦争を“正当”にみせるために、米英両政府が持ち出したのが、イラクの大量破壊兵器が「脅威」になっているという口実でした。
この米国の言い分をそのまま口移しに、戦争支持を打ち出したのが、小泉純一郎首相でした。「大量破壊兵器の脅威は国際社会の大きな課題だ。今後、危険な大量破壊兵器が危険な独裁者の手に渡ったらどのような危険な目に遭うか」(三月二十日のイラク戦争開始にあたっての記者会見)
与党・公明党も「イラク問題の本質は、大量破壊兵器が保有され、これがテロリストに渡った場合にどのような危険があるのかだ」(神崎武法代表、公明新聞三月十九日付)と強調。冬柴鉄三幹事長は「スプーン一杯で二百万人の殺傷能力がある炭疽(そ)菌が約一万g」などと、テレビでくり返しのべ、大量破壊兵器の「脅威」をあおりたてました。
しかし戦争が終わって七カ月を過ぎ、米国が大規模な調査団を派遣しても、いまだに大量破壊兵器は発見されません。
それどころか、米英両政府が根拠としてきた「証拠」がこの間、次々とでっち上げの偽物であることがわかり、両国内では大問題となりました。
小泉首相はイラクの大量破壊兵器保有を断言した根拠を追及され、「フセインが見つからないからイラクにフセインがいなかったとは言えない」(六月十一日、党首討論)と苦し紛れの詭弁(きべん)で逃げるばかり。結局、ラムズフェルド氏自身、イラクの大量破壊兵器保有の「決定的証拠」はもっていなかったことを明らかにする(七月九日)など、米英両国が掲げてきた「大量破壊兵器の脅威の除去」という戦争の「大義」は、国際的に完全に失われました。
九月の国連総会では国連のアナン事務総長が米国の「先制攻撃戦略」を批判。ドイツのシュトルック国防相も十一月三日の会見でイラク戦争は「国際法違反の疑い」と指摘するなど、無法な戦争であったことは国際的に決着済みです。
小泉自公政権が、根拠すら示せない「口実」にもとづいて無法な戦争を支持してきたことの誤りはもはや明白です。
戦争の大義が失われる一方、十一月に入って米軍のヘリコプターが相次いで襲撃を受け、死傷者が増えるなか、米国が次に持ち出してきたのが「テロとのたたかい」という議論です。
ブッシュ米大統領は十一月十一日の演説で、「対テロ戦争の開始から二年、アフガニスタンとイラクで米国の意思と決意が試されている」とのべ、対テロ戦争と位置付けたアフガニスタンと、イラクを同列に論じました。
小泉首相はさっそく、十四日に東京でおこなったラムズフェルド米国防長官との会談で、「イラクで失敗すると全世界に影響を与える。テロリストの脅しに屈してはならない」とブッシュ氏の受け売りでこびをうります。公明党の神崎代表もテレビ番組で「ひるまずテロとのたたかいをやらなければいけない」(二日)とのべています。
しかし「テロとのたたかい」を口実に、イラク戦争やそれに続く占領を正当化することも成り立たない議論です。なによりテロ組織・アルカイダとフセイン政権との関係は、米政府自身が否定してきたものです。
テロはもとより許されるものではありません。しかし、いまのイラク国内の米軍に対するテロ攻撃は、米国自身が起こした無法な戦争とそれに続く占領が招いたものにほかなりません。テロ攻撃をなくすには、まず米英軍による無法な占領を終わらせ、さらに国連中心の復興支援に切り替え、速やかにイラク国民に主権を返還することが必要です。
そもそも「テロとのたたかい」という口実では、自衛隊をイラクに派兵できなかったからこそ、日本政府はテロ特措法に加えて、イラク特措法を強行せざるをえなかったのです。
そのイラク特措法に照らしても、いまのイラクの現状は「日本が攻撃対象になることは論理的に免れない」(五日、岡本行夫首相補佐官)というもの。「非戦闘地域」への派兵などまったくの虚構に過ぎません。
政府の立場が総破たんしたもとで、アメリカ一辺倒の対イラク政策は根本的見直しが迫られています。少なくとも、現状をいっそう悪くするだけのイラク派兵はきっぱり中止すべきです。
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●戦争反対は利敵行為 「戦争、戦争というけれども、それはいまは圧力をかけているわけであって、その圧力を抜くような、利敵行為のような、サダム・フセインに利益を与えるような、戦争反対とか、それはむしろ解決を先延ばしする」
「(査察継続を主張するフランス、ドイツの態度は)サダム・フセインの喜ぶところじゃないですか。そんなことをしたら」(二月十六日、テレビ討論番組で)
●無法な戦争を「国連の枠内」と擁護
「(米英のイラク戦争は)法律的には、国連の枠内での武力行使だと思う」「今回の武力行使だけを捉えて『先制攻撃』と批判するのは、いかがなものか」(「公明新聞」三月二十四日付)
●大量破壊兵器の脅威なくすため
「イラクが国連決議を無視しつづけて、大量破壊兵器の廃棄を望む国際社会の要求に対応しなかったことが世界的な脅威となっている。この脅威をなくさなくては世界は安心できない」(同前三月二十八日付)
●「いま探し中」「日本は五十八年たってから…」
「(大量破壊兵器が発見されないことを問われて)だからいま探し中だということで。全然ないというわけではありません」「日本の一・二倍の国土に隠されたんじゃ、なかなかそうは簡単に…」(五月十一日、テレビ討論で)
「(大量破壊兵器保有の断定の根拠を問われて)日本のマスタードガス、化学兵器は(中国の)チチハルから、この間出てきた。五十八年たっていますよ」(十一月二日、テレビ討論で)