日本共産党

2003年11月21日(金)「しんぶん赤旗」

主張

障害者支援費制度

利用増加に見合う予算確保を 


 今年四月に障害者支援費制度が始まって七カ月余りがたちました。

 障害者が安心して利用できる制度にするためのとりくみがすすめられていますが、ここにきて今年度の国の補助金不足が懸念されています。このままでは、必要なサービスが抑制・縮小されかねないと、全国知事会をはじめ、地方自治体や障害者団体から政府に対して、予算増額を求める要望が相次いでいます。

上限撤回の経過からも

 厚生労働省によると、身体、知的障害者のホームヘルプサービス事業の利用実績が、四月、五月でみると昨年度に比べ、一・三五倍−一・五倍に増えています。たとえば、東京都の場合、四月−六月までの利用実績をみると、ホームヘルプサービスの一人当たりの月平均利用時間は全身性障害者を対象にした「日常生活支援」が約二百三十三時間で、昨年度平均の約一・四六倍です。

 支援費制度の目的は障害者の自立支援です。障害者が地域で自立していくための支えとなるホームヘルプサービス事業の利用増加は、当然のことです。

 問題は、新制度の発足にふさわしく、国がホームヘルプサービス事業の予算を確保していなかったことにあります。今年度の予算額は二百七十八億円(十一カ月)ですが、利用増加を考慮すると、三百三十億円必要です。約五十二億円の不足です。

 そもそも、厚生労働省は、今年一月、予算抑制を意図して、障害者ホームヘルプサービスへの国庫補助金に「上限」を設ける方針を打ち出しました。全身性障害者のホームヘルプは一人月当たりおおむね百二十五時間とするなどの「基準」です。

 それが、障害者団体などのつよい抗議と要請を受けて、厚生労働省は、これらの基準が「市町村に対する補助金の交付基準であって、個々人の支給量の上限を定めるものではない」との見解を示さざるをえませんでした。また、当面は経過措置として「基準」を上回る場合でも、これまでの国庫補助額を確保すると明言したはずです。

 こうした経過をふまえても国は、サービスの利用実態に見合う十分な財源を確保する責任があります。

 近く、国は自治体にたいし、補助金の配分を示す予定ですが、財源不足を自治体や利用者に転嫁することは絶対に許されません。

 同時に、来年度概算要求が今年度実績見込みにも満たない三百二十七億円では話になりません。来年度に向けて、予算を大幅に増やし、サービス利用の増加に応じた抜本的対策の強化があわせて必要です。

 支援費制度は障害者本人が利用したいサービスを決め、事業者を選んで「契約」する仕組みです。しかし、選べるサービスが整備されていないなど、問題が山積しています。

基盤整備に力つくせ

 障害者団体の今夏の調査では、ホームヘルプやデイサービス、ショートステイ、グループホームの在宅四サービスを「提供できる」と答えた自治体はわずか17・7%です。これでは「自由に選択」といっても絵に描いたもちです。関連予算を大幅増額し、国が遅れているサービスの基盤整備に全力をあげるべきです。

 支援費制度の実施にあたり、財政的裏づけが不明確であることは繰り返し指摘されてきたことです。ホームヘルプサービスの予算不足は、この問題点を改めて浮き彫りにしました。障害者予算の大幅な増額に向け、政府の責任ある対応が求められています。


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