2003年11月19日(水)「しんぶん赤旗」
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ヨドバシカメラ携帯売り場の派遣労働者暴行事件で損害賠償請求を求める裁判が十八日、東京地裁で始まりました。原告の二人が意見陳述。「人間の尊厳回復を」「派遣労働への警鐘に」と訴えました。この裁判は、派遣労働者のAさん(26)と母親で作家の下田治美さんが、ヨドバシ、DDIポケット、派遣会社らを訴えたものです。
Aさんは、全治二カ月の重傷を含む四つの事件の経過と背景を述べ、「最後に『便器をなめさせる』といわれ、身の毛がよだつ恐怖で退職を決意せざるをえなかった」と表明。なぜ反抗できなかったか、なぜ早い時期に退職しなかったかについて、派遣先企業と派遣会社の絶対的な支配関係をあげ、「派遣しか仕事のないなかで、とにかくこの世界で働きたかった」「なんとか早くこの仕事で一人前になりたかった」と述べました。
Aさんはそのうえで、「提訴の動機は人間としての尊厳回復。このような支配関係を野放しにせず、派遣労働への警鐘にしたい」と述べました。
下田さんは、自分の目の前での暴行について「息子を守ってやれなかった自責の念に八カ月後のいまも苦しんでいる。(精神的後遺症のため)原稿が書けなくなり、絶望感にうちのめされている」と述べました。
また「息子のほかにも暴行された人がいる。彼らはヨドバシを異様に恐れている」と陳述。傍聴席の青年を見やり、「彼らはモノではない、人間だ」と結びました。
Aさんの労働実態について労働基準局は違法な二重派遣と認定していますが、DDI側は派遣契約ではなく業務委託だと主張。原告側はDDI・ヨドバシ間の契約書類の提出を強く求めました。
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裁判には、「首都圏青年ユニオン」の組合員や同労組のビラを見たという人などが詰めかけ、傍聴席は満席。裁判後の集会では「私も派遣労働者。人ごとではない」「私も職場で殴られた」という声も出ました。