2003年11月19日(水)「しんぶん赤旗」
総選挙で二大政党制にむけた「政権選択選挙」を仕掛けた財界は、すでに「改革」を牛耳る仕組みを政府のなかにつくりつつあります。
たとえば、自民党や民主党が主張している規制「改革」。日本経団連は、総選挙公示直前の十月二十一日、「二〇〇三年度規制改革要望」を公表しました。その要望項目は「官製市場の改革・開放」「民需創造」をうたい文句に、十六分野・三百六項目(新規要望百七十三項目)にもおよびます。
雇用・労働分野では、産業別最低賃金制の廃止、ホワイトカラー(事務系労働者)の大半を労働基準法の適用から除外する制度の導入、派遣労働・有期契約など不安定雇用の拡大が目白押し。そのほかにも、株式会社の医療・農業への参入、保育所の施設基準の見直しによる民間参入拡大、大規模小売店進出の際の騒音基準の緩和など、大企業本位の身勝手な要求が並びます。
公共事業のコスト削減を口実に、中小企業への官公需発注割合の削減まで求めています。
まさに「ルールなき資本主義」への道です。
この要望を受け付けるのは、政府の「総合規制改革会議」(二〇〇一年四月発足)です。議長の宮内義彦オリックス会長(経済同友会副代表幹事)をはじめ、十五人の委員のうち十人を人材派遣会社の経営者など財界人が占めています。消費者や労働者の代表は一人もいません。同会議は、首相に提言するだけでなく、ビジネスチャンスの拡大を合言葉に、各省庁と直接折衝までしています。
小泉政権の経済政策の基本や予算編成を決める「経済財政諮問会議」には、奥田碩日本経団連会長や牛尾治朗元経済同友会代表幹事の二人が“入閣”しています。学者二人と「四人組」と称して、不良債権早期処理や医療費三割負担などを推し進めてきました。
奥田氏は、年金改革で「消費税は触らないとかタブーをつくるな」と主張し、小泉「改革」で失業・倒産が激増しても「今さらたじろぐことはない」とハッパをかけています。
宮内氏は「日本の経済を動かしているのは株式会社であり、株式会社が命を守っている。自動車をつくるのも、薬をつくるのも株式会社で、なぜ福祉・医療だけが排除しないといけないのか」(五月十三日、厚労省との折衝)など、株式会社万能論を展開。委員の中には「人間の命は平等というスローガンはさすがに脱却しないと(いけない)」(鈴木良男議長代理=旭リサーチセンター社長)と、人の命も金次第という考えを表明する人までいます。
日米の軍需産業の動きも、小泉内閣になってから活発です。
日米の軍需企業の実務者や防衛庁、経産省、米国防総省などの担当者が集まる「日米技術フォーラム」。二〇〇一年の第十二回会合(五月八、九日)で、石川島播磨重工業の伊藤源嗣社長は「小泉政権は自衛隊の合憲性の明確化、日本の有事体制、周辺事態への対応、集団的自衛権の行使等について…前向きに取り組む姿勢を示して(いる)」「(軍事技術交流が)日米双方の政権交代により活発化に転じることが期待されます」とあいさつしました。
憲法改悪、自衛隊の海外派兵の「本務化」を見越して、新たな軍拡で巨額の利益を狙おうという動きです。
この動きには、自民党・民主党の国防族も絡んでいます。今年四月には、国防族や巨大軍需企業が中心となった「日米安全保障戦略会議」が第一回会議を開催。二十日からは、衆院が管理する憲政記念館で第二回会議を開き、自民党の瓦力、額賀福志郎、久間章生といった防衛庁長官経験の衆院議員や民主党の前原誠司衆院議員らが講演します。
焦点があてられているのは、日本側の導入費用だけで六兆円と試算されるミサイル防衛です。憲政記念館という憲法を守ることを建前とした施設で、「実物大モデル等の展示会」まで開催するのです。
働く人の権利や国民の命を守ることはそっちのけで、大企業のもうけを拡大するための規制緩和、軍需産業が巨額利益を狙う新たな軍拡の動き、その財源として狙われる消費税増税…。
営利追求を第一とする大企業・財界が主権者顔をして、政治を思いのままに支配したら日本はどうなるのか−−。財界が仕掛けた「政権選択」選挙を通じて、その異様な姿が浮き彫りになってきました。(おわり)