2003年11月16日(日)「しんぶん赤旗」
横須賀基地(神奈川県)を母港にする米空母キティホークの艦載機として、最新鋭の戦闘攻撃機FA18Fスーパーホーネットの第一陣が十三日夕、厚木基地(同)に到着しました。配備の意味は何か、周辺地域への影響はどうなるのか。
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「キティホーク戦闘群に新たな力をもたらした。日米同盟にとっても重要な日だ」
キティホーク戦闘群(第五空母群)のケリー司令官は、厚木基地に到着したスーパーホーネット四機を前に語気を強めました。
スーパーホーネットは、すでに空母艦載機として配備されているFA18ホーネットの改良型。退役を迎え、九月に米本土に撤収した戦闘機F14トムキャットの後継機です。第一〇二攻撃戦闘中隊に所属し、最終的に十三機が、キティホークの艦載機として厚木基地に配備されます。
キティホーク戦闘群は、アフガニスタンでの対テロ報復戦争(二〇〇一年)やイラク戦争で、空爆、ミサイル攻撃など重要な役割を果たしてきました。キティホークに搭載されたF14(第一五四戦闘中隊)は、イラク戦争で三百五十発以上、二十四万ポンド(約百八トン)の爆弾を投下しています。
これに代わる第一〇二攻撃戦闘中隊は、一九九一年の湾岸戦争に参加し、その後も二〇〇〇年までイラク南部での空爆・監視作戦(サザンウオッチ作戦)を続けてきた経歴をもちます。アフガニスタンでの対テロ報復戦争にも参加し、六百四十五発の爆弾を投下しています。(いずれも当時はF14を運用)
第五空母群司令部の資料は、スーパーホーネットの性能について、(1)作戦行動範囲が従来の機種より40%まで拡大可能(2)兵器および装備品装着ポイントが十一カ所に拡大−と指摘。「空対空、空対地双方の任務をこなすことができる」と強調しています。米ソ対決時代、おもに空中戦を想定して設計されたF14と比べて、より深く敵地に侵攻し、多種類の兵器を使用することができるというものです。
米海軍がスーパーホーネットを初めて実戦配備したのは昨年七月です。第一一五攻撃戦闘中隊に所属するスーパーホーネットが、空母リンカーンの艦載機として対イラク作戦に参加しました。サザンウオッチ作戦で、精密誘導兵器JDAM十二発を使用。多くの罪のない市民を殺傷したイラク戦争にも参加し、三十八万ポンド(約百七十トン)の爆弾、ミサイルを使用しました。
湾岸戦争や対テロ報復戦争の経験を持つ部隊に、イラク戦争で試された最新鋭攻撃機を配備し、日本に駐留させる−。米海軍が唯一、海外に前進配備しているキティホーク戦闘群が侵略部隊としての能力をいっそう高めたことを意味します。
スーパーホーネットは、ホーネットと比べてエンジン出力が35%増大しています。その結果、米国でも爆音被害が深刻になっており、配備計画が進んでいる米本土東部では、配備反対運動が起こっています。
空母艦載機部隊の大部分が配備されているオセアナ基地(バージニア州)周辺には四十万人の住民が生活しており、以前から爆音被害が深刻な問題となっています。
同基地には二〇〇四年からスーパーホーネットが配備される計画になっており、住民からは強い懸念が表明されてきました。このため、米海軍は九月に、国家環境政策法にもとづいて環境影響調査を行い、(1)スーパーホーネットを分割配備する(2)着艦訓練場を遠隔地に建設する−と発表しました。
それでも、オセアナ基地周辺の騒音被害地域は10%近く拡大します。着艦訓練場建設候補地とされた自治体や住民は強い反対の意思を表明しています。
厚木基地滑走路の南側に位置する綾瀬市の測定によると、スーパーホーネット四機が同基地に着陸した際、一一一デシベルを記録しました。電車が通るときのガード下の騒音(一〇〇デシベル)を大きく上回りました。いまでも国内最悪の爆音被害にさらされている厚木基地の周辺では、住民の怒りと不安が高まっています。