2003年11月15日(土)「しんぶん赤旗」
奥田碩日本経団連会長が会長を務めるトヨタ自動車は史上最高の大もうけをあげているのに、家計は凍えるばかり。十四日発表された七−九月期の国内総生産(GDP)速報は、日本経済のゆがみを映し出しています。小泉首相がいう「改革の芽」は、大企業製造業の収益改善の「芽」とはなっても、家計の「芽」をしぼませるばかりです。
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収入落ち込み低迷 |
国内総生産(GDP)の六割近くを占め、日本経済を引っ張る個人消費は冷え冷えとしています。
七−九月期は実質で前期比0・0%と横ばい。物価が下落しているなか、より実感に近い名目では同0・3%減です。
冷夏の影響だけではありません。四−六月期にみられた医療費の負担増やたばこ増税前の駆け込み需要といった「痛み」による個人消費押し上げ要因ははげ落ちました。
とくに七−九月期で特徴的なことは、雇用環境の悪化が個人消費低迷に与えている影響がくっきり出ていることです。
雇用者報酬が名目で前期比1・8%減(前年同期比2・2%減)と大幅に落ち込みました。ボーナス(一時金)支給が六月に偏った反動だけではありません。民間調査によるとボーナス支給額は三年連続の減少でした。
手取り額も大幅に減りました。自民、公明などが強行した改悪で、厚生年金や健康保険の保険料の徴収方法が、毎月の給与中心から、ボーナスにも同じ料率で保険料をかける「総報酬制」に変更されたためです。
このため、電通調査によると、夏のボーナスの使い道(複数回答)は、「消費」が過去最低の48・3%に落ち込む一方、「貯蓄」「借金の返済」が62・1%と過去最高となりました。
大企業のリストラ・賃金カットと小泉政治が重なりあって、家計を痛めつけています。
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外需頼みの危うさ |
七−九月期のGDPの伸びは、外需(外国の需要)に大きく依存しているのが特徴です。
これは、内需(国内の需要)、あるいは外需の増加額を前期のGDPの金額で割った割合を示す「GDPの内外需別の寄与度」でみると明らかです。それによると、現実の生産額に近い「名目」での内需の寄与度は0・1%減、外需の寄与度は0・1%増です。
一国の経済は、内需に対応した生産を中心にしていかなければ、バランスのとれた自律的な経済成長は期待できません。この点でも日本経済の危うさが浮き彫りになっています。
また、輸出で生産を増やして大もうけしているのは、一部の大企業にすぎません。その典型がトヨタ自動車です。
同社は今期中間決算(二〇〇四年三月期の中間決算)で、史上最高の七千六百七十七億円の連結営業利益(内外の子会社を含む連結決算での本業のもうけ)を稼ぎました(図)。
一方、国内生産の大部分を担う中小企業の生産や利益は、大企業のすすめる従業員のリストラによる個人消費低迷もあって、落ち込んだままです。
日銀が十月一日に発表した九月の企業短期経済観測調査(短観)でも、自動車など一部の大企業製造業がその業況判断を若干改善させたほかは、大企業非製造業や中堅企業も、中小企業も、大幅なマイナスです。
財界主導、自・民が競う「構造改革」の転換こそ 奥田碩日本経団連会長は十四日、このGDPの結果について「消費が引き続き低調に推移していることは注意を要する」といいながら、「内需主導の成長を実現するため、構造改革の加速が求められる」と発言しました。 また、財界が主導してきたこの小泉「構造改革」を推進してきた竹中平蔵金融・経済財政担当相は、実質GDPが前期比0・6%増になったことで「われわれが描いている(景気の)持ち直しに向けた動きが示された」といっています。 しかし、銀行の「不良債権最終処理の加速」という小泉「構造改革」の最優先政策が、大企業のリストラを支援し、日本経済の主役である中小企業を経営難や倒産に追い込み、失業者を増やしてきました。また、大企業向けの減税・負担減を優先し、庶民に増税や負担増を強いるだけの財政の「構造改革」が、国内の個人消費を低迷させる最大の原因をつくってきたのです。 その反省もなく、小泉「構造改革」の加速を競い合う自民党や民主党の政策では、低迷する日本経済を国民の立場にたって打開することはできません。 日本共産党が主張するように、財界主役ではなく、国民のくらしを応援する経済政策への転換が求められています。 |