2003年11月12日(水)「しんぶん赤旗」
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公共事業予算に比べ社会保障支出が「五対二」と、日本の予算編成が欧州諸国とくらべ極端にゆがみ、国民の立場で言えば“逆立ち政治”になっています。これと同様なことが雇用政策費でも現れていることが、政府自身がこのほど発表した二〇〇三年度「経済財政白書」(内閣府)で指摘されています。(篠田隆記者)
それによると、公共職業紹介や失業給付、職業訓練など日本の「雇用政策費」の国内総生産(GDP、名目)に占める割合は、「ドイツ、フランス、フィンランドなど大陸欧州諸国ではこの割合が高いのに対し、アメリカ、イギリス及び日本は低水準にある」と、強調しています。
一方、日本の公共事業費のGDPに占める割合は、「他の先進国と比較して高い」と指摘。ドイツと比べ、日本のゆがんだ財政支出構造を次のように紹介しています。
「例えばドイツでは九八年の公共事業費が名目GDPの1・8%であったのに対し、雇用政策費は3・6%と、約二倍の予算が雇用政策費にあてられていることになる。これに対して、我が国では、失業率が上昇するようになった九八年においても、雇用政策費が0・76%であるのに対して、公共事業費は約七倍の5・5%となっている」
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白書は、主要国の雇用政策費と失業給付費等のGDPに占める割合をグラフにしていますが、ドイツ、フィンランド、フランス、スウェーデンはいずれも1−3%台の比率。これに対し日本、イギリス、アメリカは小数点以下という貧弱ぶりです。
さらに、他の主要国にはない日本の異常さに気が付きます。公共事業費のGDPに占める割合が抜きん出て高いこと。それは雇用対策費などで“同類”だったイギリス、アメリカをも大きく上回っています。
日本政府の公共事業重視の姿勢を同白書は、「公共事業に対する景気浮揚効果や雇用維持効果への期待が大きかったとみることもできよう」と弁護しています。しかし、景気浮揚効果や雇用維持効果を期待するなら、消費者のふところを温めるなど国民生活を豊かにする政策こそ重視すべきです。
そのことは、「サービス残業」強要や年休不完全取得、パート賃金格差など、労働者を苦しめている職場環境を改善するだけでも、おおきな景気・雇用効果を生むことからも明らかです。
「サービス残業廃止で百六十一・六万人の雇用創出と2・5%のGDP押し上げ」−第一生命経済研。
「年次有給休暇完全取得で百四十八万人の雇用創出と十一・八兆円の経済波及」−自由時間デザイン協会など。
「パート賃金の格差縮小で百二十六万人の雇用創出と消費増加」−三菱総研。
日本の雇用と景気がいっこうに改善しないのは、政権を担っている勢力の目が財界・大企業に向き、国民に向いていないからです。