2003年11月11日(火)「しんぶん赤旗」
【カイロ9日小泉大介】ブッシュ米大統領が、パレスチナ指導部を非難し、イラク占領もテコにしながら米国流の「民主化」と「自由化」を中東に押し付ける方針を示した六日の演説にたいし、アラブのマスコミは一斉に反発し批判的記事を掲載しています。
アラブ首長国連邦のアルハリージ紙八日付は、「ブッシュ大統領はアラブにたいする新たな戦争を宣言した」とのべ、「民主主義はアラブを含めすべての国によって追求されなければならないのは当然だが、それは他からの強制や抑圧によって達成できるものではない」と強調。
同紙は「米国によるイスラエルの拡張主義との協力関係は、アラブの悲劇の一部である。ブッシュ大統領が持ち出す人権や公正、国際法の原則をなぜイスラエルにも守らせようとしないのか」と厳しく批判しています。
エジプトの有力紙アルアクバル八日付は編集長の論評記事を掲載。「だれも民主主義を拒否しないし、独裁を受け入れるものもいない。それと同じように、民主主義の便宜性や恩恵を知るのにブッシュ大統領を必要とするものもいない」と指摘し、「ブッシュ大統領は米国が求める民主主義を中東で実現できなかったことの失敗を反省しているが、アラブの側も、信用する価値のないものを信用してきたという点で、対米方針の失敗を認めなければならない」とのべています。
「米国のアラブ支援は偉大なウソ」という論評記事を掲げたのはサウジアラビアの代表的日刊紙アルリヤド七日付。同紙は「自由原理の価値を訴える米国は、一方で、(国連において)アラブの利益がかかった決議に最も多くの拒否権行使をおこなってきた」「米国はアラブの経済的、政治的将来の方向とは逆の方向を歩いている」と力説しています。
シリアの有力紙アルサウラ八日付は「米政権は力ずくで民主主義を押し付けながら、実は民主主義を殺し、自由を暗殺している」「(イラクという)主権国家を占領することで民主主義を達成することができるであろうか。戦闘機や破壊兵器によって民主主義を達成することができるであろうか」と指摘しました。
ヨルダンの有力紙アッドストール紙九日付は「米国は民主主義と人権のスローガンを地域の文化や文明、歴史と関係なく、石油とイスラエルの安全のために使うようになった」と批判しています。