2003年11月10日(月)「しんぶん赤旗」
【モスクワで田川実】日本企業も参加しているロシア極東サハリン島での石油、天然ガス開発が地域の環境を破壊しているとして、ロシアの市民団体が事業体への政府支援の停止などを求めています。影響は北海道にも及ぶといいます。市民団体は「経費削減のために企業は、ロシアの自然と住民の健康を犠牲にしている」と訴えています。
環境法律研究所(エコユリス)のミシェンコ所長や世界自然保護基金(WWF)のチェスチン・ロシア代表によると、サハリン北東沿岸ではタラの漁獲量の急減、ニシンの大量死などが起こっています。
「石油のにおいがプンプンする魚がたくさんいる」。ミシェンコさんは、海底からの石油・ガスのくみ上げが影響していると話します。
市民団体は特に、沖合での新たな掘削やぐらや海底パイプラインの建設が、太平洋西部に生息する希少種コククジラに重大な影響を与えかねないとしています。
問題となっている事業は「サハリン2」と呼ばれる、同地域の八つの開発計画の一つ。ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事の企業連合が一九九四年から進めています。九九年に最初の石油採掘を行い、将来は日本にも送る計画です。
WWFロシアのチェスチンさんは「開発事業そのものに反対ではない。環境を守る、より高い基準の適用と、よりよい技術の採用を求めているのだ」と説明。五十以上の環境グループとともに、石油やぐらやガス工場からの土砂や廃棄物・排水の海への投棄中止、新たなやぐら建設は岸から十二マイル以上離すこと、などを要求しています。
事業がロシア憲法と環境関連の法令、国際的環境基準に違反していると主張するチェスチンさんらは、ロシアと欧州で裁判も起こす予定です。
市民団体によると、開発事業は住民の生活向上にもあまり結びついていません。
「膨大な石油、ガスが掘られる一方で、サハリンなど極東では、この冬も住宅への暖房や水の供給が何度も止まっている。漁業被害などへの補償もない」とミシェンコさんは憤慨します。
投資会社はロシアの地方政府へ税金も免除されており、ミシェンコさんらは十二月初旬に改選を迎える国会議員らに、事業からの税金徴収を働きかけています。