2003年11月6日(木)「しんぶん赤旗」
大企業は小泉内閣の三年間で、三十万人以上の社員を減らし、四兆五千億円の人件費を削る大リストラを強行、その結果、売り上げは減っても空前の利益をあげています。こんごも労働者・国民犠牲のリストラを強行する姿勢を示しています。大企業の横暴に歯止めをかけ、“ルールある経済社会”を確立することは、総選挙の緊急で重要な争点の一つです。
大企業のもうけぶりは、売り上げと営業利益を対比すると明らかです(図1)。
〇二年度では、前年比の売り上げを2・4%減らしているのに、営業利益は16%増です。なかでも、製造業は2・6%減にたいし、39・9%増と異常なもうけをあげています。
大和総研の予測によると、〇三年度の売り上げは1・5%増とほぼ横ばいですが、営業利益は6・9%増の高水準です。〇四年度には売り上げ3・3%増、営業利益は十六兆円に届く10・8%増の見通し。これは、九〇年度以降の最高水準です。
売り上げが減るか横ばいでも、利益はしっかり確保する――この戦略で大企業は、やりたい放題のリストラ人減らし、賃下げをすすめてきました。
まず人減らし。東証一部上場企業の製造業(九百三十社)だけで、〇三年三月までの三年間に社員三十万六千人を減らしています(図2)。
賃金はどうか。〇二年の労働者の年収は、三年前より二十四万四千五百円下がっています(図3。国税庁「民間給与実態統計調査」より算出)。この調査は一年以上勤務したパートなど有期雇用を含むため、正社員の年収はもっと減ります。
資本金一億円以上の企業で九九年の人件費と比べると、〇二年は二兆四千億円も削っています(図4)。
労働者が、戦後最悪の雇用不安におびえ、賃下げで生活困難にさらされている一方で、大企業が空前の利益を積み上げている――自分さえもうかれば、労働者はどうなってもいいという大企業の身勝手がデータによって明らかです。
しかし大企業のリストラは、これでやむ気配はありません。最近、ソニー二万人、りそな四千人、カネボウ二千八百人など、新たな人員削減計画が相次いで発表されました。事業統合も活発で、そのたびに賃下げや賃金の安いパートや派遣労働者への正社員代替が行われています。日立など大手電機各社をはじめとした大企業は、賃金制度改悪や企業年金改悪、裁量労働制導入による不払い残業の合法化など、限りない労働条件改悪の攻撃をすすめています。
財界は、労働者にこのような犠牲をいっそう押しつけて、利益を維持するために自民党、民主党を後押ししてアメリカ式の二大政党体制をつくろうとしています。自民党、民主党はじめ各党の政策採点表までつくって、政治献金をエサに政治支配を強めようとしています。
こうした財界、大企業の横暴を許すのか、これを規制し社会的責任をはたさせるか――が大きな争点です。
自民・民主各党は、労働者の雇用と労働条件を悪化させる二つの悪法に賛成、成立させました。産業再生法の改悪です。二百十七社が九万人減らして、八百十億円の減税。労働者一人減らすごとに九十一万円の減税となります。もう一つは、低賃金・不安定雇用をひろげ、不払い残業合法化の裁量労働制を拡大する労働基準法の再改悪です。いずれも財界が強く要求していたものです。
財界はこの見返りとして巨額の政治献金を自民党に出しています。民主党も「政権交代の姿勢なども基準に入れて」(岡田幹事長)と献金をねだり、トヨタ、新日鉄、日立など各地で、企業ぐるみの選挙支援をうけています。
日本共産党は、世界では当たり前になっている「企業の社会的責任」を大企業にはたさせ、“ルールある経済社会”をつくります。正当な理由のない解雇の禁止、転籍・希望退職の強要を規制、派遣やパートの雇用と権利を守る、サービス残業・長時間労働をなくし安定した雇用をふやす、若年雇用を国と大企業の責任で拡大する――などを主張しています。
リストラした企業の税金をまけてやる産業再生法や労働法制の改悪には、きっぱり反対。企業献金は受け取らず、ただちに全面禁止を求めています。
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