2003年11月5日(水)「しんぶん赤旗」
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「ようやく、景気にも明るい兆しが見えてまいりました」(小泉首相)。自民党や公明党は、自分たちの手柄であるかのように、“景気が回復しつつある”と繰り返しています。
とてもそんな実感はもてないというのが多くの国民の思いですが、「景気回復に向けた動き」を否定したらリアリティー(現実性)がないと非難する経済評論家などもいます。はたしてそうか。
日本全体をみて、景気がよくなりはじめてきたと感じられる状況にはありません。
例えば、比較的最近、日本銀行が三カ月に一度、大企業から中小企業までかなりの数の企業に、足元の景気判断などを聞いた九月の「短期経済観測調査」(短観)をみてみましょう。
大企業・製造業の景気判断の指数(「良い」とする割合から「悪い」の割合を差し引く)が二年九カ月ぶりにプラスに転じました。中小企業は製造業、非製造業とも幾分マイナス幅は前回調査(六月)に比べ縮小しているものの、依然「悪い」が「良い」を大きく上回っており、いわば水面下でもがいているというのが実態です。
大企業・製造業に「回復感」があるのは、米国やアジアなどへの輸出で稼ぐ有力大企業が中心の業種が景気判断指数を押し上げているからです。
大企業は徹底したリストラで人件費と部品調達費を削減して、売り上げが増えなくても利益があがる“体質”に変わってきており、現に自動車など大幅増益見通しの企業が相次いでいます。
半面、そのしわ寄せをうける勤労者世帯などの消費は低迷し、下請け・中小企業の経営は委縮したままです。こうした悪循環が足かせとなって、大企業・製造業が回復感をもっても、国内需要に火がついて日本経済・景気の自律的回復へ進む道筋がみえてこない−−これが実態です。
政府の白書も「個人消費が増加してこないと、景気の自律的回復は望めない」(〇三年度「経済財政白書」)といっています。要は、家計消費をもり立てていく経済運営ができるかどうかです。日本共産党は、大企業応援の政治から国民の暮らしを応援する政治への抜本的転換を訴えています。