2003年11月2日(日)「しんぶん赤旗」
日本経団連や経済同友会など財界は、同じ路線に立つ政党の間で政権をたらい回しする「二大政党」をつくり、政界を意のままにしようとねらっています。政治が財界に牛耳られるとどうなるのか−−それを先取りして示しているのが「経済財政諮問会議」と「総合規制改革会議」という二つの機関です。
経済財政諮問会議は、予算編成や経済政策に「民間の智恵と感覚を生かす」として二〇〇一年一月に発足しました。
内閣側が首相(議長)と関係五閣僚、日銀総裁にたいし、財界側が奥田碩日本経団連会長、牛尾治朗元経済同友会代表幹事の二人と学者二人。
月に二−三回開かれる会議ではこの四人が毎回のように提案を出し、身勝手な財界の要求を盛りこむよう求めています。
閣僚と「直談判」して政策作成に携わるなど過去に例がありません。
いったいどんな要求が盛りこまれたのか。
中小企業の倒産と大量の失業を無理やりつくりだす「不良債権最終処理の加速」もその一つ。
政府は「二〇〇七年までに半分に」(柳沢金融相=当時)といっていましたが、財界側は「二、三年のうちに銀行機能を健全化するくらいの目標が必要」(奥田氏)と要求。これを受けて〇一年九月の「改革工程表」で「二〜三年以内に確実に不良債権を最終処理し、遅くとも三年後には正常化」と明記されました。
高齢者からサラリーマンにいたる医療費の自己負担増も、「制度を維持するために一定の負担増を求めることは避けて通れない」(奥田氏)とする四人の提案を盛り込んで具体化されました。
「構造改革」路線が失業や倒産を増やし、閣僚から「ゼロ成長すらおぼつかない」と“弱音”が出ると、財界人は「今さらたじろぐことはない」(奥田氏)とハッパをかけたのでした。
一方で、財界の利益拡大のため実施させたのが「構造改革特区」です。
国民生活を守るために必要な規制を地域的に緩和して、民間企業にもうけ口を提供する「特区」は昨年四月、「経済活性化のため民間活力を最大限に引き出し、民業を拡大することが重要」と四人が提案したものです。
総選挙の争点になっている年金改革では「消費税は触らないとかタブーを作るな」(奥田氏)として消費税増税を盛り込むよう迫っています。
総合規制改革会議は、「民間主導による改革」と称して二〇〇一年四月に発足。「民間にできることは民間に」という小泉内閣の方針を具体化する役割を担っています。
議長は、経済同友会副代表幹事の宮内義彦オリックス会長。十五人の委員のうち十人を財界人が占め、消費者や労働者の代表は一人もいません。
教育、医療、福祉、農業などを「官製市場」と呼んで、この分野の規制を撤廃して民間企業のビジネス拡大に提供せよと主張。首相に提言するだけでなく、各省庁と直接折衝までしています。
折衝に当たるのは人材派遣会社社長など、「規制改革」で利益を得る当事者という露骨さです。
その結果、労働者派遣を製造業に解禁したり、巨大ビルを林立させる容積率の緩和など、民間企業に利益を与え、国民生活を悪くする規制改悪をやってきました。
いま同会議がねらっているのが株式会社による病院経営の解禁など、人間の命まで企業の金もうけに利用することです。
宮内議長は「無限に親切な政治経済を作り上げた。その結果、むやみと『弱者』を作った。天候不順で困った農民も弱者だし、年よりも弱者。不況下の中小企業も、公共事業が減った土建業も弱者。こんなに弱者を作ったら、守りきれない」(「日経」八月二十四日)などと語っています。
二つの会議で浮かび上がった小泉内閣の実態は、政策からその実行まで財界いいなり政治そのものです。
財界はこれでも満足できず、「法人税の引き下げ」「消費税増税」などまだ実現していない身勝手な要求実現のため、これを支持する政党に企業献金をあっせんする方針を打ち出しています。
自分たちの意のままに動く財界ひもつきの「二大政党」をつくり、どちらが政権をとっても、「財界が主役」の政治が微動だにしない体制をつくろうというのです。
今度の総選挙で、「政権入り」のためこうした財界の戦略に飛びつき、消費税増税など財界の要求を次々と受け入れ、「二大政党制」に向けて比例代表の定数削減まで持ち出したのが民主党です。
こんな体制を許したら、二十一世紀の日本は財界が丸ごと支配し、国民そっちのけの悪政が大手を振ってまかり通ることになりかねません。
(深山直人記者)