2003年10月30日(木)「しんぶん赤旗」
十月十三日から十七日にかけてマレーシアのクアラルンプール近郊のプトラジャヤで開かれたイスラム諸国会議機構(OIC)閣僚会議、首脳会議に初めて日本共産党から公式ゲストとして参加した緒方靖夫国際局長・参院議員に、会議出席について聞きました。
OICの会議への招待を受けたのも参加したのも、日本共産党として初めてです。そもそも日本からの参加が初めてで、会議でたいへん歓迎されました。一九九九年の不破哲三委員長(当時)のマレーシア訪問から四年をへて、日本共産党とイスラム諸国との関係がここまできたことに感慨深いものがありました。
なぜ日本共産党がイスラムと交流するのかとよく聞かれます。イスラム世界の人口は十三億人で全世界の五分の一。二十年後には三分の一になるといわれます。貧困と開発途上という課題に挑戦しながら、しかもテロとイスラムを結びつける「大きな誤解」を受けています。こうしたイスラム世界と理解を深めあうことは世界政治のなかでとても重要です。
日本共産党はまったく違和感なく迎えられました。バビットOIC政治局長が「今後イスラムの会議、セミナーどこでも出られますよ」とのべたように、いわば白紙の招待状をもらいました。
ソ連のアフガニスタン侵略などにより、イスラム世界では「共産党は敵」という見方があります。その中で日本共産党が迎えられたことはとてもうれしいことです。
イスラム諸国は西側諸国との対話と平和を強く求めています。これに非イスラム社会がどうこたえるかが問われます。
それだけに会議では、平和の課題が重視されました。OICは国連憲章に基づく平和を基本としています。イラク戦争と占領の継続については、複雑なことはあっても、国連憲章に基づく平和に立ち戻ろうという立場です。
特定の国を批判する場ではありませんが、米国の覇権主義、一国行動主義、先制攻撃に対する不同意の基調は明確でした。国連の承認がないのだからOICとしてイラクに派兵することはありえないことが表明されました。最終コミュニケでも国連の中心的役割、イラクの完全な主権回復を急ぐ必要が強調されました。
会議中、国連でイラク問題の新決議案が論議されていたこともあり、米国、フランス、ロシアなど各国の主張が討議され、オブザーバー参加したロシアのプーチン大統領は、終始政治的存在感を示し、マレーシアの現地紙も「イスラムへのロシア外交のデビュー」と報じたほどでした。やはりオブザーバー参加した欧州連合(EU)代表は発言で文明間対話を強調しました。
会議の中で国名が出ず、存在感のない国が日本でした。東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で東南アジア友好協力条約に中国とインドが調印したのに日本ができなかったわけをみな知っていました。「不可侵」「永久平和」の条約と日米安保条約がぶつかり、東南アジアとの友好の妨げになっているのです。
日本国憲法第九条はよく知られ、パキスタン以西では、日本は戦争をしない国だから経済発展したという教訓にされています。東南アジアは日本の侵略の犠牲になったので、日本は二度と侵略しないという反省の証しとして憲法九条があるのに、なぜ自衛隊をイラクに派兵するのか、と各国代表に聞かれました。「日本政府は一体なにを考えているのか」と真剣なまなざしで聞いてきた人もいました。なぜ九条を変えるのか、日本は戦争をする国になるのかという懸念です。
イスラムの人たちは友情と信義を大事にします。不破議長が訪問したチュニジアの代表団長はベンヤヒヤ外相でした。不破議長に「くれぐれもよろしく」といい、先の訪問は暑い八月だったので、今度は「いちばん季節のいい十一月から二月に不破議長を砂漠に招待したい」とのメッセージを託されました。
マレーシア戦略国際問題研究所のソピー会長はこんなことを言っていました。
「マレーシアではマラヤ共産党が武装闘争をしていたので今も共産党は禁止されているが、私は日本共産党の歴史、政策、立場をよく理解してしまった。妻が『共産党とつきあって大丈夫』と心配するので『日本共産党は私と同じくらい理性的だ』といって安心させている」
この方はマレーシア政府の重要な外交ブレーンです。
マレーシアとの関係は九九年不破委員長(当時)の訪問で始まり、原水爆禁止世界大会への政府代表の参加やマハティール首相のメッセージなど、発展してきました。イスラム世界との交流は、その後、私たちの中東訪問、志位委員長のパキスタン訪問、不破議長のチュニジア訪問へと東アジアから北アフリカまで広がりました。
イスラムとの相互理解に力を尽くす、その中で平和を求めていく日本共産党の活動。それは国連憲章に基づく平和という点でイスラム諸国と完全に重なるのです。互いに知り合って深い信頼関係がつくられ、日本共産党への理解と期待も大きく広がり、交流に何も障害がありません。「日本共産党は心が広い」と言われます。「早く与党になってくれればいい」という声すら聞かれます。
サウジアラビアのワリ駐日代理大使に帰国報告すると、大きな成果があったことを喜び、「二十七日からラマダン(断食月)に入る。イスラム教の重要な行事の中で平和の心を世界に広げるために、日本共産党が見聞してきたイスラムを日本の国会や社会に伝えてほしい」と期待を語っていました。
世界の平和と社会進歩の流れを大きくする日本共産党の役割に、今は野党であっても日本の国益と国民の立場に立つ本来の外交をすすめていることを感じました。
【関連】
【政策】