2003年10月23日(木)「しんぶん赤旗」
国連女性差別撤廃委員会は今年八月、日本における女子差別撤廃条約の実施状況を審査した結果を「最終見解」として発表しました。そこでは日本政府に女性にたいする差別是正の措置をとるよう勧告しています。
政府は、「女性だからの差別は許せない」「子育てしながら働き続けたい」という女性の願いにどういう態度・施策をとってきたのか、これまでとこれからが問われています。
日本が女性差別撤廃条約を批准して十八年。国連での審査は三回目です。
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前回(一九九四年)以降、女性たちの要求と運動を反映し、男女共同参画社会基本法、配偶者間暴力防止法の制定、ILO(国際労働機関)家族的責任条約の批准、育児介護休業法の改正などがありました。ところが、現実の女性の賃金は男性の半分のまま、妊娠・出産にともなう解雇などの違法行為がまかり通っています。労働基準法を改悪し、女性も男性並みの残業、休日・深夜労働も可能という女性保護規定の撤廃(反対は日本共産党だけ)が、仕事と子育ての両立の困難を広げ、健康と母性の破壊をすすめてきました。
委員会は、この日本の現実に対してパートなど不安定雇用に占める女性の割合が高く賃金も低いこと、女性が家庭生活と職業との「調和」が困難な現状に「深い懸念」を表明しました。そして日本政府に「男女の事実上の機会均等の実現を促進する努力」「家族的責任と職業上の責任の両立を可能になる施策」を強化するよう求めています。
そのためには、日本共産党が主張しているように、同一労働同一賃金の徹底、パート労働法に均等待遇の明記、妊娠・出産にかかわる不利益扱い禁止規定を監督・監視する体制の強化、母性保護規定条項の復活などが必要です。
第一回の審査以来、毎回指摘・勧告されているのが夫婦同姓制度です。
審議のなかで、「社会的コンセンサスがない」ことを理由にする日本政府は「国際基準や条約を使って世論を変える努力をしているのか」と厳しく追及されました。「夫婦の姓をはじめ、婚姻最低年齢、離婚後の女性の再婚禁止期間、非嫡出子差別など民法に残っている差別規定を廃止し」「法や行政上の措置を条約に沿ったものとすること」が求められました。
世界でも数少ない夫婦同姓制度をとっている日本。タイでも今年になって姓の選択ができるようになった(法改正は検討中)と報道されています。国民の世論も選択的夫婦別姓を認める人が半数を超え、民法改正案がくりかえし野党から共同提案されていながら、いまなお改正しない自民党政府の責任は重大です。
日本共産党は一九八七年以来、民法の改正を主張。女性の独立した人格を尊重し、社会的、法的地位を高めるために、差別的な法制度の改正はまったなしです。
「女性の三人に二人が出産を機に退職する」との日本政府報告には、国連の委員もびっくり。
委員会は「日本において、家庭や社会における男女の役割と責任に関し、根深く、硬直的な固定観念が持続し、労働市場における女性の状況、教育の選択、政治・公的分野への参画の低さに反映」していると懸念を表明。そのうえで、子育てが父母双方の社会的責任とする考え方やメディアが「私的、公的領域における男女の平等な地位と責任を伝えるよう奨励」を勧告したのです。
“男女平等にたいする政府の姿勢”も勧告されました。審議の中で自民党政府の閣僚や石原慎太郎東京都知事による女性蔑視(べっし)発言にたいし、いったい日本政府はどう対応したのかと糾弾されたことが反映しています。
審議の冒頭から提起された問題が、選択議定書(権利侵害を国連に通報できる制度)の批准でした。司法の独立を侵すという日本政府に対し、むしろ「司法の独立を強化し、司法が女性に対する差別を理解するうえでの助けとなる」とその見解を明確にのべています。
次回の報告提出は二〇〇六年です。個々の問題にどう対応したのかが求められます。さらに政府は「最終見解」の内容を広く徹底することが「要請」されています。
本来、国際法を批准した国(締約国)は、誠実な履行を義務づけられています。日本共産党は、政府が女性差別撤廃条約やILO一五六号条約(家族的責任を持つ男女労働者の権利保障条約)にもとづく具体的な施策の充実を求めています。