2003年10月22日(水)「しんぶん赤旗」
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豊かに見える日本の食料事情も、実態は砂上の楼閣(ろうかく)です。生産基盤が毎年、急激に崩れ、自給率は世界でも最低水準。国際的に食料不足が深まるというのに、こんなことで二十一世紀はやっていけるでしょうか。
欧米諸国は農業を国の安定のもとと考え、食料自給率を国が責任をもって高めてきました。
ところが日本の政府、自民党は農業を切り捨て、自給率(カロリーベース)を40%と世界の最低水準まで低下させました。これは人口の六割、七千六百万人分もの食料を外国に依存するという異常事態です。穀物自給率(量)は28%しかありません。
豊かにとれる主食のコメまで輸入したうえ、世界に先駆けて価格政策をやめ、さらに農業つぶしをすすめているのが小泉自民・公明政府です。
こうした長年の自民党農政のもとで、耕作地の放棄、荒廃が急速にすすみ、この三十年間で作付のべ面積が半分になってしまいました。国民の生存を根本から脅かし、国の将来を危うくする政治はもうごめんです。
日本の農業の柱となっている稲作は、百七十万戸の農家で支えています。それを、自民党や公明党は“農政の対象とする経営は二〇一〇年までに八万程度”という「米政策改革」を強行します。九割以上の中小農家排除の計画を今年中につくれといいます。市町村の職員からは、「五十戸の農村集落で一人だけを担い手とするのはものすごい矛盾だ」という不安の声がでています。
農政の対象となる農家も大変です。米輸入を前提に水田の減反(生産調整)が拡大します。その減反を達成しないと転作奨励金は受けられません。しかもその助成金は三、四年で大幅に削られ、七年後は廃止です。もともと米改革は、「過剰米に関連する政策経費の思い切った縮減」(米政策改革大綱)が目的だからです。
これでは、水田の有効利用と麦や大豆などの自給率向上がすすむはずはありません。
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農政の対象となるには、農水省試算で北海道は37・3%しかない十ヘクタール以上、都府県は2・8%の農家しかない四ヘクタール以上の水田経営面積が必要です(知事が特別に認めれば八割の面積まで緩和)。
地域で共同経営する「集落営農」をする場合は二十ヘクタール以上(中山間地は十ヘクタール)が必要で、しかも法人化しなければダメです。小泉・自民党内閣の「米改革」は、農業の「担い手」をせばめる厳しいハードルばかりなのです。
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九月のWTOカンクン閣僚会議の決裂にみられるように、自国の食料生産の水準を決める権利(食料主権)が途上国を含め大きな流れになってきています。
日本共産党は、米の輸入を削減・廃止するとともに、市場原理一辺倒の米「改革」を中止します。
生産意欲がでる価格・所得保障の充実が日本では早急に必要です。日本共産党は、価格・所得保障を総額一兆円程度に水準を高めます。
当面、稲作では、市場価格と再生産水準の差額を補てんする「不足払い」制度を導入します。環境対策として畑地・水田にたいし十e一万円の直接支払いを実施します。
農業を続けたい人、新しくやりたい人は日本農業の大事な担い手です。農業にチャレンジする若者に月十五万円・三年間の「青年農業者支援制度」を創設します。フランスなどでは実施している制度です。
これらの財源は、農林水産予算三兆一千億円のなかで半分を占める公共事業のムダ、外郭団体のムダを省くことなどで実現できます。不必要となった諫早湾干拓事業、作物を運ぶと損をする農道空港などのムダをやめます。
農業の振興なくして、地域や国の持続的な繁栄はありません。国民の78%が「将来の食料供給に不安」を感じ、84%が「食料はできるだけ国内産」と答えています。
世界的な食料不足が懸念されているなか、世界最大の食料輸入国の日本が農業を立て直し、食料自給率を計画的に向上させることは国際社会への責務です。
国連食糧農業機関(FAO)が昨年公表した『世界食料農業白書』は、一九九七−九九年に世界で八億一千五百万人の栄養不足人口(飢餓人口)が存在し、そのうち、七億七千七百万人が途上国に住んでいると報告しています。
日本共産党は、政府の食料・農業政策を根本的に転換し、農業を基幹的な生産部門に位置づけ、食料自給率を早期に50%台に回復し、さらに60%台をめざします。
農地を自由に使いたいというのは、財界の一貫した要求です。小泉内閣のもとで、そうした農地を株式会社一般に取得させようとする動きが続いています。
衆院選にむけた各党の農業政策をみると、株式会社の参入をはじめ、農業分野の規制緩和は自民党も民主党も推進の態度です。
自民党 「株式会社など地域農業の担い手を創出(する)」ことや、「WTOとFTAの推進」を掲げ、いっそうの市場原理を持ち込むことを主張(自民党政権公約2003)
公明党 「農地の集約化を強力に推進」など、一部の大規模農家に助成を限定する小泉内閣とほぼ同じことを主張(政策綱領マニフェスト100)
民主党 「株式会社による農地取得や農業法人の設立要件などの参入規制を緩和」と主張(マニフェスト、政策集)。
民主党の前原誠司衆院選京都二区候補は、「たった1・5%の農家を保護するためにFTA(自由貿易協定)を拒んでいるのが今の日本政府」「農業こそがまさに規制緩和、民間参入をさせて伸ばしていく。そして荒波に放り込まなければいけない産業」とのべ、自民党・小泉内閣と同じ主張であることを、はっきりさせました。(十四日、事務所開きで)