2003年10月19日(日)「しんぶん赤旗」
日本道路公団の藤井治芳総裁の解任問題をめぐり混乱が続く道路公団「改革」。その発端は、小泉内閣の「民営化」方針でした。「民営化」でムダな高速道路建設や不透明な癒着関係はどうなるのか。本当の改革とはなんなのか−−。
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四つの道路公団(日本道路公団、首都高速公団、阪神高速公団、本四架橋公団)は四十兆円もの債務を抱えています。
過大な交通量予測とズサンな収支計算をもとに次々と高速道路を建設してきた結果です。
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料金収入で返済するはずなのに、全国の四十二の高速道路のうち半数が赤字です。これ以上ムダな道路建設を続ければ新たな国民負担となります。
ところが小泉内閣は、九千三百四十二キロの高速道路の整備計画を見直しもせず、約二十兆円が必要とされる残りの二千百キロを何が何でも建設しようとしています。
財界の総本山、経団連(当時)は二〇〇二年に出した意見で、高速道路建設は続けて、赤字路線は税金を使ってでも造るよう求めていました。
これにこたえて小泉内閣は先の通常国会で、民営化後を見越して、赤字路線を税金で建設する法律をつくりました。すでに三兆円の税金投入を決めています。これではムダな道路建設に歯止めはかかりません。
四十兆円の借金はどうなるのでしょうか。
四十兆円の借金を抱えて民営化会社は成りたちません。民営化すれば結局、国鉄の民営化のように借金は民営会社から切り離され、国民に背負わされることは目に見えています。
日本経団連も借金を切り離して処理するよう求めています。これを先取りして先の国会では本四公団の債務のうち一兆三千億円を国民負担で処理する法案を通しました。
藤井総裁がイニシャルをあげて政治家の介入を示唆したとされる問題は道路公団に巣食う「利権構造」を改めて浮かび上がらせました。
しかし、小泉内閣はこの癒着関係に何一つメスを入れられません。
それもそのはず、自民党とその国会議員は道路公団の受注企業から多額の献金を受けています。
道路公団とも持ちつ持たれつの関係です。自民、公明など五年間で三十四人の議員が酒食会議接待を受けていました。
財界と自民党政治がつくった債務を国民に押しつけ、利権構造を温存するための「民営化」など許せません。
民主党は三年以内に通行料を無料化(都市部は有料のまま)し、公団は廃止するといいます。
年間二兆円かかる借金返済と道路の維持管理費には「道路予算の一部を振り替える」としています。これは結局、無料化を性急にすすめるため、新たに二兆円規模の税金を投入するということです。
道路予算を他の予算に振り向けるのなら、来年実施を国民に約束している基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げる財源に回すなど社会保障に真っ先に使うべきです。民主党の無料化案は、税金の使い方として優先順位が間違っています。
民主党はこれまで自民党と同じ「道路公団の民営化」が方針でしたが、総選挙を前に公団廃止・無料化に転換しました。背景には何があったのか。当事者の発言を見ると−−
菅直人代表「半年ほど前深く研究している民間人から詳しい提言を受け、政策的に筋がいいので検討をすすめてきた」(自分のホームページ)
前原誠司・高速道路整備検討チーム座長「菅代表が政治的に無料化の方がよいと判断した」「(民主党と)小泉さんの『民営化』では違いがよく分からないという指摘もあった」(「毎日」五日付)
財界からはこんな声が――。
経済同友会・北城恪太郎代表幹事「(無料化案は)理解できる」「仕組みづくりが重要な課題であろう」(七日の会見)
日本共産党は、巨額の借金を国民に押しつける「民営化」には反対です。三つの内容で道路公団の改革を進めると訴えています。
ムダな高速道路建設が続く大もとには、九千三百四十二キロの高速道路の整備計画があります。 日本共産党は、この整備計画を廃止し、新たな高速道路建設は凍結し、抜本的に見直します。 地域経済や福祉・医療のため必要な道路は、赤字額などを公表し、国民合意が得られるならば国の責任で建設すべきだと提案しています。 過大な整備計画をきっぱり廃止すると主張しているのは日本共産党だけです。
日本共産党は、計画的に借金を返済しながら、通行料を段階的に引き下げて無料化に向かう道筋を提起しています。 四公団の通行料は年間二・五兆円もあります。新たな建設に歯止めをかければ、債務返済に回す財源は確保できます。新たな国民負担や税金投入をしない返済計画を示しているのも日本共産党だけです。
ゼネコンと政治家、官僚による癒着・利権構造の改革も焦点です。公団の関連会社であるファミリー企業が公団の仕事を事実上、独占している問題もあります。 日本共産党は、天下りを禁止して、ファミリー企業をなくすことを主張しています。公団の組織はスリム化し、第三者機関の監視のもとにおくことも提案しています。 |