2003年10月18日(土)「しんぶん赤旗」
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前日午後から開始された首脳の演説の続きが十七日午前九時から始まりました。今日は、イスラムの聖なる金曜日。日程には西のメッカに向かってのお祈りの時間もあります。通常の国際会議と異なり、首脳発言でアッラーの教えなどイスラムの教義が語られ、文化、文明の香りのある宗教哲学から今日の政治課題まで語られる場となっています。発言時間は十─十五分と合意されたものの三十分を超える演説が続出していますが、興味がつきません。
首脳演説を聞きながら、うかびあがってきたキーワードは、「団結と挑戦」です。イスラムで結集しているイスラム諸国会議機構(OIC)は、本来結束力が強いのですが、イラン・イラク戦争に見られたように戦争をはじめ内部に各種の紛争・対立を抱えてきました。
「イスラムの問題は、残念ながら外部からだけでなく、内部にある」(ムシャラフ・パキスタン大統領)という指摘には異論がでません。今回の会議を「イスラムの尊厳と団結の回復」の機会にという声とともに、「イスラムの解体さえねらう西側のたくらみに挑戦を」(次期首相に決まっているアブドラ・マレーシア副首相)というよびかけもあります。ベルケジズOIC事務局長は、「イスラムは包囲されている。その包囲を突破することが必要」と前向きの一致と団結の行動を強調します。
同時に、現実には複雑な諸問題と意見の相違が横たわっています。焦眉(しょうび)のイラク問題では、マレーシアなどの反対にもかかわらず、米国任命のイラク統治評議会の正式代表が出席しており、カタールなどは、これを「イラク問題の解決の一歩として評価する」と表明しています。イランは、同評議会設立を同国主流のシーア派が評議会に参加していることをもって評価する立場です。
イラクへのトルコ軍派兵については、OICとしては支持しないが、加盟国の独自の決定であり、コメントもしないという立場です。参加首脳全体は、この派兵について批判的です。イラク統治評議会は、クルド勢力の離脱を招くと反対を表明し、米国との矛盾を露呈しています。
OICは、聖都エルサレムの解放、パレスチナ国家の樹立を直接の目標に掲げて設立されました。この経過があるだけに、中東問題には力が入り、イスラエルのシリア攻撃をふくめて強い非難では一致します。しかし、パレスチナのカドウミ外相は、「自爆行動を止めることはほとんど不可能だ」と言明してはばかりません。マハティール・マレーシア首相は、「自爆はテロ行為であり、中止すべきだ」と強調しています。OICとしては、「罪のない市民を殺りくすることは間違いというのが会議の一致点」(マレーシアのハミド外相)であり、これ以上は踏み込めないと説明しています。
団結という訴えのそばで現実にはこうした複雑ななかで会議は進行していることが、演説を聞きながら感じ取れます。それだけに、議長国マレーシアの苦労も大きく、同時に手腕の見せどころでもあり、アジアで最初のOIC首脳会議となっているマレーシア会議を契機に、「加盟国は、態度、行動、決意を新たにしよう」(インドネシアのメガワティ大統領)とよびかけ、マレーシアへの期待を隠していません。
マレーシアは、イスラムと他文明の対話、さらに相互理解と共同という方向を打ち出しながら、OICの加盟国、オブザーバー国という資格を超えた対話の活発化を提起し、機構改革もすすめる方向です。その点で、ロシアのプーチン大統領の参加は重視されています。マハティール首相は、会議議長を務める多忙ななかで、他の加盟国首脳との個別会談の二、三倍にあたる四十分間もプーチン大統領と会談しました。当地のスター紙が「プーチン、回教国指導者の心をつかむ」と報道しているところにみられるように、マレーシアは今後の外交戦略にロシアを位置づけているのです。