2003年10月16日(木)「しんぶん赤旗」
到着した車列を先導するパトカーのサイレンが早朝からひっきりなしに聞こえます。十六日からイスラム諸国会議機構(OIC)首脳会議が始まります。これを準備する閣僚会議は十四日に終わりましたが、そのなかで痛感することは、開催国マレーシアの政治的、経済的な位置です。
「エクスオルヂネール、スプレンディド(すごい)」という声がバスに乗っているチュニジア代表団からあがります。クアラルンプール市内のネオンが輝く夜景を目にしたときのことです。高いビルが林立した清潔な町に、ヨーロッパの延長といえる比較的発達した国の代表がため息をつく姿があるのです。「回教国は二級国家として甘んじない」という決意が語られる会議の主催国が達成した経済発展がマレーシアの権威をつくっているのです。
同時に、東南アジア諸国連合(ASEAN)がつくりあげてきた達成と結束がこの会議に生きています。最大のイスラム国インドネシアなどが加盟国であり、今回、オブザーバーとしてフィリピンのアロヨ大統領、タイのタクシン首相が駆けつけ、ASEANがマレーシアを支えている、十月末をもって引退するマハティール首相への連帯を示しているといわれています。さらに、閣僚会議では、効率のよい機構改革・運営が提起されましたが、そこには、ASEANの経験が念頭にあることも、会議事務局はほのめかしています。
今年二月にマレーシアで開かれた非同盟諸国首脳会議は、イラクでの戦争開始前であり、百十六の加盟国が政治的な立場を超えて、「イラク問題の平和的解決」で声を一つにすることができました。しかし、今回は、戦争を経て米英軍の占領というもとで、イラクの将来のあり方でどのような一致がはかれるのか複雑な問題が横たわっています。
マレーシア政府は、米英軍の侵略であり、占領状態を終わらせ、国の再建とイラク国民の自決のために国連が中心的な役割を果たすべきだと表明しています。パキスタン政府も、「イラクでの他国軍隊の活動は、国連、OICの指揮下でおこなわれるようにならなければならない」という立場です。会議では「OICとして、軍隊の派遣はありえない」という一致が確認されました。
同時に、イラクからはアメリカが任命した統治評議会が代表権を得て参加しています。加盟国トルコもイラクへの軍隊派遣を決定しており、マレーシアの立場がそのまま会議に反映されるわけではないのです。
アメリカとの関係で悩めるイスラム諸国の状態が会議で垣間見ることができます。そのなかでOICの結束と一致を維持しながら、合意をつくるという難しい外交活動を見ることは、イスラム各国の思いと心を知るうえでも、国際政治のなかにいることを実感します。