2003年10月3日(金)「しんぶん赤旗」
戦時中、日本軍兵士に監禁され性暴力を受けた被害者・遺族十人が国を相手に謝罪と総額二億円の損害賠償を求めている裁判の控訴審弁論が二日、東京高裁で始まりました。中国山西省から来日した被害者の万愛花さん(73)が意見陳述しました。
一審の東京地裁は今年四月、被害事実を認めたものの、「当時の法制度では国の責任を追及できない」と請求を却下。同時に付言で「立法的・行政的な解決」による被害者救済を促しました。
万さんは、日本軍からひどい暴行を受け、首が身体にめりこんでしまい、腰骨も折られて、「高かった背が縮まってしまった」とのべました。日本軍兵士は万さんが死んだと思い、川べりに捨てましたが、村人に助けられ、九死に一生を得ました。家も肉親も失い、一年以上ほとんど身体が動かせず、養女に助けられ生きのびたことを、声をつまらせながら語りました。「どうして日本軍は重い罪を犯したのに認めないのか。謝罪し、正義を取り戻してほしい」と泣き崩れました。
中下裕子弁護団長は、旧日本軍の加害行為を著しく卑劣な蛮行と認めたにもかかわらず、司法的救済の道を閉ざした東京地裁判決の誤りを批判。「違法行為には責任と損害賠償が伴う」と強調しつつ、同判決が日本の近代法治国家としての信頼を失墜させ、国益にも反しかねないとのべました。