2003年10月3日(金)「しんぶん赤旗」
間近に迫る二〇〇四年「年金改革」。開会中の国会で小泉純一郎首相は年内に政府案の成案を示すと答えました。各省が次々と打ち出す検討案は国民に痛みを押しつけるものばかり。なぜ年金危機を打開できないのか。三つの原因(別項)と責任を日本共産党の小池晃議員が二日の参院予算委員会で追及しました。
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小池 現行の年金水準をどう見ているのか
首相 給付水準だけをみるのではなく、(保険料)負担も見なければならない。
いまでも十分とはいえない年金を、さらに引き下げるというのか。小池氏は、「まず削減ありき」ばかり、それを当然視している政府検討案の在り方を批判しました。
厚生年金の受給者の平均は一人月額十七万六千円、国民年金は五万円(自営業者は四万四千円、二〇〇〇年度)です。日銀調査で「年金だけで生活費をまかなうのは難しい」との回答が五割を超えました。
小泉首相や坂口厚労相は、給付と負担の両面から改革を考えなければいけないと議論をすり替え、給付削減の痛みなど知らん顔という姿勢がくっきり。小池氏は「現状でも暮らしていけないという声にまったくこたえていない」と批判しました。
今回の厚生年金の削減額は、厚労省案(基準ケース)の場合、現行の夫婦世帯のモデル年金(四十年加入)で年間三十四万円にも相当。一月半近い年金を取り上げられることになります。
小池氏は「不信は募るばかり。将来不安から消費は冷えこみ、景気を悪化させ、年金財政の将来は火の車になっていくだけではないか」と政府の改革案に未来がないことを強調しました。
小池 厚生年金の青年の加入者が激減している。年金制度の基盤が崩れる。雇用の流動化政策の結果だ。
坂口厚労相 雇用が悪いのは事実だ。解決することに努力したい。
年金立て直しで何が問題になるのか。財政を悪化させた原因として、小池氏は、加入者の減少、とくに二十代青年の加入が激減している実態を明らかにしました。
青年加入者の減少は、年金財政の支え手を減らすだけでなく、不安定雇用は少子化に拍車をかけて将来の支え手を減らす、「二重の悪循環を招く」という小池氏の問題提起です。
減少ラインが浮き出たパネル(グラフ)を掲げると閣僚の視線が集まります。一九九六年に厚生年金に加入していた二十代青年は九百七万人。それが二〇〇〇年には八百八万人で、政府予測の九百万人より百万人ほど下回りました。青年人口と比べた、この五年間の加入率は47・4%から44・4%に落ち込み、〇一年は七百六十八万人、42・9%と低下の一途をたどっています。
不景気、リストラによる加入者減を「一時的現象だ」と言い訳する坂口厚労相にたいし、小池氏は「一時的ではない」と青年加入者の推移を突きつけました。弁解できない坂口厚労相。「二十代の低い加入率を上げなければならないと思っている」と答え、さらに若者の雇用回復をめざす政府プランを紹介します。
小池氏は政府プラン(若者自立・挑戦プラン)に、企業に若者の採用枠を増やさせる具体策は一つもないと指摘。企業に働きかける政府の責任を強調しました。
小池 グリーンピア(大規模年金保養基地)はいくらで売却する予定か。
吉武民樹年金局長 最終的な譲渡額は確定していない。
小池 (地元の)市議会では発表している。そういう(情報隠しの)姿勢が、年金不信をあおっている。
「年金掛け金をどぶに捨てるようにムダづかいしてきた」と小池氏が批判したのが、「グリーンピア」とよばれるレジャー施設の問題です。国民が支払った年金の掛け金を使って、全国十三カ所に建てられました。政府は〇五年までにすべて廃止し、売却する方針です。
売却の見通しがたたず、ようやく地元自治体への売却が決まった宮城・岩沼と福島・二本松のグリーンピア。これまでに建設費や維持・管理費としてそれぞれ約九十億円の年金掛け金が投入されました。売却予定価格を答えようとしない吉武局長。かわって小池氏は、約三億円で地元と交渉していることを明らかにしました。
小池氏は「こういうやり方をしておきながら、だれも責任をとっていない。年金掛け金をハコモノづくりに投資し、赤字で行き詰まったら二束三文で売り払う。これで、国民に年金を削減する痛みを押しつけることができるのか」と批判。岩沼と二本松の施設ができた八八年度に厚生相だった小泉首相をただしました。
小泉首相は、「二回目の厚生大臣をやったとき(九六年〜)に、廃止しなさいと言った」とのべ、あとになってムダづかいに気がついたことを認めました。
小池氏は「年金改革というなら、積立金の運用や国庫負担引き上げの先送りなど、これまで年金財政を悪化させてきた三つの原因、問題点をきっぱりと改めることが出発点。国民にだけ痛みを押しつける議論は通用しない」と指摘しました。