日本共産党

2003年10月3日(金)「しんぶん赤旗」

米国いいなり、小泉首相の正体見たり
イラクへの自衛隊派兵を中止せよ

衆院予算委 志位委員長の総括質問(大要)


 日本共産党の志位和夫委員長が一日の衆院予算委員会でおこなった総括質問(大要)は次の通りです。

 志位和夫委員長 日本共産党を代表して、小泉総理に質問いたします。今日はかぎられた質問時間ですので、イラクへの自衛隊派遣を中心にうかがいます。

イラク派兵問題が重大局面に――ことの緊急性と重大性

 志位 この問題を取り上げるのは、十月十七日に、米国ブッシュ大統領の来日が予定され、その場でも日本政府が自衛隊の派兵を確約するのではないか、巨額の財政支出を約束するのではないかと、報道でいっせいに伝えられるなど、事態が差し迫ってきているからであります。

 くわえて、これまでも自衛隊の海外派兵というのは繰り返されてきたわけですが、今度のイラクへの自衛隊の派兵というのは、これまでの自衛隊の海外派兵とは質の異なる重大性を持っていると私は思います。

 すなわち、テロ特措法にもとづいて、アフガン戦争の支援のために自衛隊を出したわけですが、活動しているのは、おもに公海上、インド洋上です。それから、PKO法にもとづいて、世界各地に自衛隊が派遣されましたが、PKO法というのはともかくも紛争当事者同士の停戦合意が成立しているというのが前提のもとでの派遣です。

 ところが、今度のイラク特措法というのは、現に戦闘がおこなわれている外国領土に、自衛隊の地上部隊を送り込むという点で、まさしく戦後初めてのこととなります。

 ですからこの問題への対処というのは、私は、日本国民の命のかかわる問題、日本の平和がかかわる重大な問題として、徹底的に問題点が究明されなければならないと思います。そういった立場にたって、いくつかの角度から、総理にうかがいたいと思います。

志位イラクの状況が悪化しているのに、「必ず派遣」と断言したのはなぜか
首相(質問に答えられず) 状況をよく見極めて…
志位米国の一喝で、早期派兵への舵を切ったのがことの真相だ

7月25日から9月8日――首相の態度が変化した理由は何か

 志位 まず、イラク特措法の基本問題について、総理に確認しておきたい点があります。ここに議事録を持ってまいりましたが、総理は、七月二十五日の参議院外交防衛委員会のしめくくり質疑の中で、つぎのようなやりとりをされております。質問者が「現在のような戦闘状態にあって非常に危険だというときに、派遣をしないということだってありうるんですか。簡単にいいますと、空振ることはありうるんですか」と聞いているのに対して、総理は、「それは可能性ということをいえばありうると。これは自衛隊を派遣しなければならないという法案じゃないんですから、自衛隊を派遣できるという法案ですから、状況を見て派遣しない場合もあるし、派遣する場合もあるということであります」。こうおっしゃられておりますね。これは事実の確認をしたいんですが、いかがですか。

 小泉純一郎首相 そうなんです。何回も申し上げていますように、このイラク支援法案は、自衛隊を派遣しなければならないという法案じゃあないんです。自衛隊を派遣することもできるという法案なんです。

 志位 いま確認しました。すなわち、七月二十五日の時点では、総理は、イラク特措法を発動して自衛隊を派遣するという選択肢と、派遣しないという選択肢と、二つの選択肢が政府にあるということをはっきり明言していたわけであります。

 ところが、それから一カ月半あとの九月八日、自民党総裁選が始まった日の夜のテレビの討論番組で、イラクの自衛隊派遣について、首相は、「イラク支援に日本はひるんではならない」とのべたあと、質問者から「自衛隊が行かない選択肢はあるのか」と問われて、「ありません」と断言された。私はそれを聞いて、あっと思いました。

 七月二十五日には、「派遣する選択肢と派遣しない選択肢と二つがある。状況を見て判断する」。こうおっしゃっていたのが、九月八日には行かない選択肢はありません、行く選択肢しかありません。これは明らかに大きな立場の変化であります。私は、うかがいたいんですが、いったい総理は、九月八日の時点でイラクのどういう状況を見て、「行かない選択肢はありません」ということを判断したんですか。

 首相 可能性を問われれば、1%の可能性も可能性であります。99%の可能性も可能性であります。状況を満たせば、自衛隊を派遣しないということはありえない、状況を満たせば、自衛隊を派遣する、ということでございます。

 志位 これは、説明になっていませんね。七月二十五日の時点では行かない選択肢、行く選択肢、二つの選択肢があるといったのに、九月八日には、行かない選択肢はありませんといったわけですよ。それはイラクのどういう状況を見て、総理がそういう判断をしたのかと、私が聞いたことにたいして、答えになってないですね、いまのは。なっていません。

この期間、国連事務所爆破事件などイラクの状況は深刻な悪化をたどった

志位 つづけて聞きたいと思います。七月二十五日から九月八日までの間に、イラクの状況はいったいよくなったのか、悪くなったのか。総理はどういう認識を持っておられたのか。これは自衛隊派遣を判断するうえでのいちばん重要になる問題です。「派遣しない選択肢はありません」と断言したからには、それなりの認識があったはずです。この間にイラクの状況はよくなったのか、悪くなったのか、どういう認識を持っておられたんですか。

 首相 テロ活動等きびしい状況もありますが、全体的にみれば、イラク人の、イラク人による政府づくりのために、アメリカ、イギリスはじめ各国が、協力しだしているなあと。そして、イラクの国民もフセイン政権が打倒されて、悪い、悪いばかりじゃないと、解放されたなあと。今後、国づくりに励もうという意欲もみえているなあ、という状況になってきておりますので、ここで、私は、イラクの復興支援をひるんで、各国がイラク復興支援に取り組もうとしているときに、「日本はやりません」ということはないと、また、してはいけないと。テロに屈せず、イラク人の、イラク人のための政府づくりに日本もふさわしい貢献をすべきだと思っております。

 志位 これもまた設問に答えておりません。私はこの期間に、イラクの状況がよくなったと認識されているのか、悪くなったと認識されているのかと聞いたんです。国際社会の協力がすすんだとか、イラクの国民がどう思っているとか、そういう一般論を聞いたんじゃない。よくなっているか、悪くなっているか。これを聞いたんですよ。

 七月二十五日から九月八日までのこの期間に、イラクで起こったおもな武力衝突やテロをみてみますと、占領軍である米英軍への攻撃が引き続き拡大するとともに、明らかにそれまでとは質の違った状況の悪化がみられます。

 まず八月七日。バグダッドのヨルダン大使館前で車両が爆発し十九人が死亡しました。バグダッドの陥落後、外国公館を狙った攻撃はこれが初めてであって、世界に衝撃をあたえました。

 それから八月十六日。バスラでパトロール中のデンマーク兵が、イラク人と銃撃戦になり兵士一人が死亡。米英軍以外のイラク駐留兵が攻撃によって死亡したのはこれが初めてで、これも衝撃をあたえました。

 そして八月十九日。国連の駐イラク事務所が爆弾テロで襲撃され、国連のイラク復興の責任者・デメロ事務総長特別代表をはじめ二十二人が死亡し、百人以上が負傷する大惨事になりました。もとより私たちも、ああいうテロ行為は絶対に反対です。許すことはできません。しかし、この事態は、米軍も国連も見境がなく、攻撃の対象になっている。この事態を世界に象徴的に明らかにするものでありました。

 こういう事件が次つぎに起こったのが、まさに八月のこの時期ですよ。この期間に、イラクの状況が、全体として深刻な悪化をたどったのは明らかです。

 これだけ事態が次つぎに起これば、私は、日本政府はイラクへの自衛隊派遣により慎重になって当然なはずだと思う。この状況の悪化そのものは、当時の外務大臣の記者会見をみましても、「あの事件(バグダッドの国連事務所爆破)の意味というのは、いままでは米兵を中心に治安上の問題があったわけですが、それが広がっている。文民に対する攻撃があるとか、バグダッド以外の場所にも広がってきている」。事態が悪化しているという認識を示しています。

 そういう状況のもとで、こういうことが次つぎに起これば、イラクの派兵については慎重になってしかるべきなのに、逆に、そういう状況が次つぎ起こるなかで九月八日、総理は「行かない選択肢はありません」と。これはなぜでしょうか。逆の方向にカーブを切ったのはなぜでしょうか。

 首相 状況をよく見極めて、自衛隊ができることがあれば、自衛隊を派遣しないという選択肢はないと。自衛隊が民間人よりもよく活動できれば自衛隊を派遣する、ということでありまして、私はいまの時点において、きびしい状況ということはよく認識しております。そういう点もふまえて、よく状況を調査して、民間人よりも自衛隊の方がイラク人の復興支援、人道支援のためによく仕事ができると、能力も発揮できる、ということであれば、自衛隊を派遣します。

アメリカの猛烈な圧力で、早期派兵への急カーブを切った

 志位 条件を満たせば派遣するといわれるわけですけれども、九月八日のテレビの番組では「派遣しない選択肢はない」と。要するに、いつ派遣するかは別にして、「派遣するんだ」ということを断言されておられるわけですよ。そして私が、この間にこれだけ治安が悪くなった、状況が悪くなったのに、なぜそういう方向に切り替えたのかと聞いたのに対して、答えがない。

 私は実は、答えられないんだと思っています。アメリカの圧力があったからですよ。経過を調べてみますと、八月に起こったイラクでのこの連続的な重大事態を前にして、日本政府にも躊躇(ちゅうちょ)がみられた時期があったようです。たとえば、国連事務所が大規模テロにあった翌日、八月二十日の、防衛庁長官の発言をみますと、「人道支援をやっていれば襲われることはないという考えは通用しない。年内派遣は難しいかもしれない」と語ったと報道されています。かなり躊躇があった。これは明らかだと思います。

 ところがそのあと、アメリカから猛烈な圧力がかかった。八月末に、複数の日米関係筋からの情報として、アーミテージ米国務副長官が、中東担当特使の有馬政府代表と会談し、日本側の慎重姿勢にふれて、「これは問題だ」と、「逃げるな」と、「お茶会じゃない」と、強い口調で派兵を迫ったということがいっせいに報道された。これが八月の末でした。

 その後、日本政府の態度が早期派兵に急カーブを切っていく。九月一日に政府は、自衛隊派兵のための政府調査団の早期派遣を表明しました。六日には、岡本・首相補佐官が治安情勢などの調査のためイラクに向けて出発しました。十四日には政府調査団がイラクに向け出発しました。調査団自体もアメリカから一喝されてあわてて出したのです。首相は口を開けば「自主的に判断する」というけれども、アメリカの一喝で一気に早期派兵にむけた動きが強まったのがことの真相ではありませんか(「そうだ」の声)。これは、七月二十五日には、二つの選択肢があるといっておきながら、九月八日には事態が悪化しているのにもかかわらず、「行かない選択肢はない」といいきってしまったことにはっきり示されています。

志位イラクは全土が戦場だ。自衛隊を派兵する余地などどこにもない
首相テロは世界のどこでも、日本でも起こる

米軍現地司令官――「戦闘地域を区別する線など引けない」

 志位 つぎにすすみたい。イラクの現状が果たして首相のいうように「戦闘地域にはいかない、戦闘行為には参加しない」などという生易しい建前が通用するものなのか。イラクの現地で活動している当事者が何といっているかについて、いくつか私はお示ししたいと思います。

 これはアメリカの国防総省のホームページからとったものですが、イラク駐留米軍のサンチェス司令官が七月三十一日に、かなり長い記者会見をやっております。そこで、日本のNHKが質問しています。「イラクの全領土において、われわれが非戦闘地域と呼べる地域は存在するのか、もし存在するのならそれはどこか、また、戦闘地域と非戦闘地域の間に線を引くことは可能か」という質問をサンチェス司令官にしています。

 司令官の答えは、「戦闘地域を安定した地域や支援の地域からはっきりと区別する線を引けるだろうか。もちろんできない。つまり、テロリストのような動き回る小集団に遭遇する危険が常にあるということだ。彼らは望むところはどこでも動き回れるのだ」。こういっております。

 つまり、当事者の米軍の現地の司令官自身が、イラクは全土どこでも戦闘地域になりうるという認識を、この時点でもうのべているわけです。総理は、どういう認識をこの問題でお持ちでしょうか。

 首相 私は、八月中旬にポーランドを訪問したときだと思うんですが、そのときに国連の事務所が爆破されてデメロ氏がなくなったと。その報道を聞いた直後に、私は晩さん会の席上でテロは許されざる行為だと、このテロに国際社会が屈してはならんと、その国々の持てる力でイラク復興支援のために協力しなきゃいかん、ということをはっきりのべています。

 いま、いろんなことを引用されて、アーミテージ氏が「お茶会じゃない」とかいったとか、どうか、話されましたが、それはわかりませんが、たしかにお茶会とは違います。イラク復興支援のためには、こういうきびしい状況のなかでも、多くの国の人々がいま、一生懸命汗をかいている。そんな、お茶会みたいな生易しい状況じゃない、と思います。日本としても、どこでテロが起きるかわからないといえば、ニューヨークでもテロが起こったわけです。インドネシアのバリでも起こったわけです。日本でも、その可能性を問われれば、いつ起こるかわかりません。

 そういう面においては安全なところはない、といっても過言ではありません。しかし、私は、いろいろ状況を許せば、自衛隊の派遣というのは派兵じゃありませんから。戦闘行為に参加するというものでもありません。また治安の警備にあたるわけでもありません。イラク人の人道支援、復興支援のために、それは民間人ができないことは、自衛隊があるだろうと、自衛隊の持てる能力を、そういう戦争ではない平和構築のために、イラク人の復興支援のために活用する場面があれば、状況が許せば派遣するということをいっている。

 私は、共産党の考え方との根本的な違いというのは、それはわかります。日米安保条約反対、自衛隊のいかなる派遣も反対という立場はわかりますが、いまの憲法の条文とよく照らしながら、憲法九条を守りながら、そして国際社会のなかで、名誉ある一員として国力にふさわしい国際協調体制をとるにはどうしたらいいか、という観点から自衛隊員ができることはやります。民間人がやれることはやります。政府職員がやれることはイラク復興支援のためにやりますという観点から話しているんであって、一方的に自衛隊を派遣すると戦争に参加するとか、そういう派兵だとか、なにか懸念を持たせるような、そういう誤解はぜひともやめていただきたい。

国連の発表では、わずか18日間で349件の武力事件

 志位 総理は、私の質問に答えないで、本当に別のことを長々としゃべるのは、短い時間ですから、国会を愚ろうする態度だと私は思いますよ。(「そうだ」の声

 私が聞いたのは、サンチェス司令官がイラク全土がどこでも戦闘地域になりうると、(首相が)そういう認識を持っているかということを聞いたのに対して、テロは世界どこでも起こるんだと、そういう一般論でごまかすというのは、これは答弁になっていないですよ。(「そうだ」の声

 それから世界の国々は、どこでも軍隊を出しているかのようないい方をした。しかし、フランスだって、ドイツだって、ロシアだって、中国だって、派兵しない。あるいはインドだって、パキスタンだって派兵しない。二十二カ国・機構が構成するアラブ連盟も派兵はしない。これが大勢ですよ。私は、イラクの人道支援、これは国連中心のものに非軍事の方法で参加することは当然だと思います。しかし、占領軍の米英軍を支援する形での派兵は絶対に反対というのが私たちの立場です。

 日米軍事同盟に対する立場の違いはありますよ。しかし、私が聞いているのは、これはこういうやり方をしたら、憲法にも反するんじゃないか、国連憲章にも反するんじゃないかという立場で私は質問しているのです。こういうことに対する答弁はしっかりしてもらわないと、こういう場が本当に無駄になると思います。

 そこでもう一つ、イラク現地で活動している当事者の国連が、どういう認識を示しているか。国連のイラク事務所の治安局は、「セキュリティー・アップデート」、最新治安情報というものを一日から四日ごとに出しております。これはインターネットで公表され、国際NGOなども参考にできるようになっている情報です。

 毎日のように驚くほど多数の武力事件がイラクで発生して、その多くが米英軍への襲撃事件ですが、文字通り全土にわたって発生していることが詳細に出ております。これは総理、ご存じでしょうか。じゃ一部お渡ししたいんですが。(資料を渡す

 よろしいですか。それでは見ながら聞いていただきたいんですが、かなり詳細なものです。現在入手できる最新の「セキュリティー・アップデート」を見ますと、九月二十四日・二十五日付で出されたもので、九月二十三日、二十四日、二十五日の三日間に発生した武力事件が報告されています。この最新のものだけ見ても、バグダッド地区で十二件、その他の地域三十七件、合計四十九件の武力事件がわずか三日間で起こっている。

 図にしたものがこれであります(パネル=上の図=を示す)。これは九月八日から九月二十五日までに発生したイラク国内における武力事件です。これは国連の「セキュリティー・アップデート」が明らかにしているものであります。一番大きなマルは五十一件以上、つぎは二十一件から五十件、つぎは十一件から二十件、一番小さなものが一件から十件です。これを見てください。わずか十八日間ですよ。イラク全土ほとんどの場所で、武力事件が起こっていることがわかります。バグダッドで八十九件、ラマディが三十一件、モスルが三十七件。これは全部あわせますと、十八日間で三百四十九件ですよ。この白いところがありますけど、これはハジャラ砂漠。砂漠地域ですから、人の住んでいない場所であります。人の住んでいる場所はほとんど武力事件が起こっている。イラク全土が戦場ですよ。自衛隊をおくる余地なんかないじゃないですか。どうですか。

 首相 良く状況を見極めて、戦闘地域でない、そして自衛隊が貢献できるような地域があれば自衛隊を派遣します。

米軍がいるところ、それを支援する自衛隊がいるところが戦闘地域になる

 志位 この地図を見るかぎり、砂漠の中しかそんな場所はないですね。砂漠の中に行って旗を立ててくるつもりでしょうか。

 私がこの問題について、大変印象深かったのは、九月二十四日にナイト・リッダーという会社のインタビューに答えて、サンチェス司令官がいっていることです。米軍がイラクにとどまるかぎり、攻撃と死傷者は続くだろうということをのべているんです。さきほど(武力事件が)三百四十九件あるといいましたけれども、数えてみますと三百四十九件のうち、二百九十三件、84%は米英軍に対する攻撃ですよ。米軍がいるところが戦闘地域になる。そしてその米軍を支援しに行くというのが今度の法律です。そこへ自衛隊が出ていけばそこが戦闘地域になる。

 ですから私は、「戦闘地域に行かせない、戦闘行動はやらない」という政府の立場というのは、虚構の上のまた虚構だと。そういう虚構にもとづいて自衛隊派兵するということは絶対に私たちは反対です。(「そうだ」の声、拍手

志位アナン演説は、米国にむけられた批判だということを認めるか
首相アナンさんに聞いてください
志位米国が批判された事実すら認めない。それを米国いいなりという

 志位 つぎに進みたいんですが、それではなぜイラクの情勢が泥沼化の一途をたどっているのかという根本問題であります。私は、一言でいえば米軍によるイラク戦争が間違った戦争だったからだ、こう思います。無法な戦争につづく、不法な軍事占領に対して、イラク国民の全体が怒りと反発と憎しみを強めていることが、泥沼化の根源にあります。

 最近の朝日新聞ですけれども、現地のルポルタージュを出しています。「対米感情、悪化の一途」「襲撃現場 市民がゲリラ支援」「金曜礼拝『占領者にノーを』」。こう聖職者が語ったと。こういう状況があるんですね。これはもちろんフセインの残党もある。テロリストもある。しかし、それだけじゃないですよ。国連の資料で見ても民衆自体が個人で抵抗しているという事態もずっと広がっているということが報告されています。

 いまそういうなかで国際社会が根源にある戦争の無法性そのものを厳しく追及しているということに、目をむけるべきだと思います。

アナン演説が「一般論」でなく、米国への批判であることは明らかだ

 志位 私は、一昨日の代表質問で、九月二十三日の国連総会でアナン国連事務総長が、米英軍の先制攻撃戦略について、「過去五十八年間、世界の平和と安定が依拠してきた原則(国連憲章の原則)に対する根本的な挑戦」と批判したことについて総理はどう答えるのか、総理はこの批判を認めるべきではないかとただしました。

 それに対する総理の答弁は「アナン事務総長は、一般論として武力行使のあり方について問題提起をおこなったことは承知している」というものでした。「一般論」とおっしゃった。しかし、アナン発言の全体を読めば、「一般論」などというごまかしは到底通用するものじゃありません。その該当個所を今から読み上げてみたいので、総理はしっかりお聞きいただきたい。アナンさんはこういうふうにおっしゃっています。

 「国連憲章五一条は、攻撃された場合、すべての国が自衛の固有の権利を有することを規定している。しかしこれまでは、国家がそれを超えて、国際の平和と安全へのより幅広い脅威に対処するために武力の行使を決定するには、国連が与える特別の正当性が必要だと理解されてきた。

 だが今や、大量破壊兵器による『武力攻撃』がいつ何時でも、警告なしに、あるいは秘密グループによって起こされかねないので、こうした理解はもはや通用しないととなえている若干の国がある。

 これらの国は、それが起こるのを待つのではなく、国家には、先制的に武力を行使する権利と義務があり、たとえ他国の領土に対するものであっても、またたとえ攻撃に使われる可能性のある兵器システムがまだ開発途上であっても、行使できるのだと主張している。

 この主張に従えば、国家は安保理での合意を待つ義務はなく、代わりに、単独で、あるいは臨時の連合を組んで行動する権利を保持している、ということになる。

 この論理は、たとえ完全ではないにしても、過去五十八年間、世界の平和と安定が依拠してきた原則−いうまでもなく国連憲章の原則です−にたいする根本的な挑戦である」

 こうアナンさんはのべているんです。アナン国連事務総長ののべたことは明らかです。

 まずアナンさんは、国連憲章というのは、加盟国の武力攻撃について、侵略による自衛反撃以外は国連の決定があったときのみしか認めていない。これは大原則だとのべています。

 そのうえで、「大量破壊兵器」などへの対抗のためだといって、「こうした理解はもはや通用しないとのべている若干の国がある」とのべ、そして「これらの国」は、「国家には先制的に武力を行使する権限と義務があり」、「安保理での合意を待つ義務はなく、単独で、あるいは臨時の連合を組んで行動する権利を保持している」と主張しているとし、この「論理」について「国連憲章への根本的挑戦」と批判しているのです。

 「一般論」じゃありません。先制攻撃の論理、単独行動の論理、こういう論理を「国連憲章への挑戦」とはっきりいっている。世界に現実に存在している国が、現実に唱えている論理に対する、これは批判です。先制攻撃の論理と単独行動の論理を堂々と主張している国がアメリカ以外にありますか。アメリカ以外にない。米国・ブッシュ政権が、こうした論理を公然と唱えていることは否定することのできない事実であります。アナン演説というのは名指しこそしていませんが、アメリカへの批判であることは明りょうです。「一般論」じゃない。アメリカへの批判です。事実上の批判です。それをはっきり認めるべきです。いかがですか。

 首相 アナン発言のいまの発言は事実であります。しかし、一方で、いまのいったアナン発言の「根本的挑戦である」というあと、アナン発言はこういう発言をしています。

 「私の懸念は、この論理が受け入れられるならば、正当性の有無にかかわらず、一方的かつ不法な武力の行使の拡散につながる先例をつくることになりかねないということである。しかし」、ここから、「しかし、特に危機にさらされていると感じている加盟国の懸念に正面から対処しなければ、一国主義を非難するだけでは不十分である。なぜなら、これらの懸念こそが、一国主義にむかわせるからである。われわれは、集団的行動を通じて、これらの懸念に有効に対処できる、また将来することを示さなければならない」ということものべているのです。われわれは、こういうこともよく認識しながら、国際社会が協力してイラクの復興支援にあたらなければならない。

 同時に、たしかにフランスやドイツはイラクに軍隊を派遣しておりません。しかし、軍隊を派遣している国も多数あります。同時に、フランスもドイツも、いまアメリカ、イギリスの軍隊を引き揚げろということはいっておりません。

 志位 全文の訳は私たちもつくりました。あなたが続けて読んだ個所というのは、まず、ちゃんと外務省は訳していないかもしれないけれども、「もしこれが受け入れられるなら、それが先例になって、正当性のいかんにかかわらず、単独行動主義による不法な武力行使の拡散をまねく結果になることを懸念する」。やっぱり、こういうことが許されるなら、どこの国も、「じゃあうちも先制攻撃をやる」「うちも先制攻撃をやる」、そういう世界になることを懸念する、こうのべているんですよ。

 そして、その後、「単独行動主義を非難するだけでは十分ではない。懸念について、正面から受けとめる必要がある」ということはのべていますが、「こうした懸念は、集団的行動を通じて効果的に対処できるし、するべきだということを示す必要がある」。これが結論なんですよ。

 つまり、そういう懸念があったとしても、単独行動でやってはいけない。集団的行動、つまり国連がきちんとした枠組みを示す必要があるんだというのが、アナンさんがいっている趣旨なんですよ。(「そうだ」の声

 私がいっていること、聞いたことに、小泉さんは答えていないです。私が聞いたのは、その前の段落でずっとのべたように、先制攻撃の論理、単独行動の論理、これは「国連憲章への根本的な挑戦」だと、アナンさんがいっていることは、これは事実なんです。批判しているのは事実なんです。この批判がアメリカに対して向けられたものだと。「一般論」でいったんじゃない。名指しにするということは、なかなか国連の事務総長というのはできませんよ。立場上。だいたい、国連総会で名指しの批判はほとんどないです。しかし、これだけ明りょうな、名指しこそないけれども、アメリカに向けられた批判がこれだけ明々白々というものはないですよ。

 私が聞いたのは、アナンさんが「国連憲章への根本的な挑戦」といったこの批判は、アメリカにたいする批判なのかどうか、そういう認識があるのかどうかを聞いたんです。はっきりお答えください。

 首相 しかし、一方的にアメリカが先制攻撃をしているというふうに志位さんはいっておられますが、アメリカも国連憲章にもとづいてイラク戦争を開始したんですよ(場内にざわめき。「そんなことはないよ」の声)。日本も国連憲章にのっとって、アメリカのイラク攻撃を支持したんですから、そのへんは見解の相違です。

 しかもいまこの時に、イラクの復興支援について、米英軍が撤退したらどうなるかということを、現実の問題として考えなければならない。イラクの安定というのは、イラクだけではありません。中東全体、日本にも世界にもイラクの安定、復興は大きな影響をおよぼします。いまここに全部手を引け、アメリカは手を引けといって、果たしてイラクの安定はあるのでしょうか。だからフランスでもロシアでもドイツでも、アメリカは撤退しろなんて全然いっていない。むしろ、お互い協力できるように、国連の関与を強めることはいっても、手を引けなんていうことは一言もいっていない。そういう点は、やっぱり現実を考えなければいけない。

「先制攻撃」「単独行動」論をとなえている国が米国以外にあるか

 志位 最後に総理がおっしゃったことについては、私たちは、いまのイラクを放っておけといっているわけではありません。米軍主導のやり方を、国連中心の復興支援の枠組みに軌道を移しなさいといっているのです。この軌道のもとに、一刻も早くイラク人に主権を返しなさいといっているのです(「そうだ」の声)。そうしてこそ、はじめてイラク国民が主人公になった国づくりができる。そのための支援を、本当に国連中心にやるべきだというのが私たちの立場であります。これをいっているんだということを、まずはっきりいっておきたい。

 それで、私が何度聞いても答えないですね。総理は。私が聞いているのは、アナン事務総長が批判の対象にしたのはアメリカか、ということを聞いているんですよ。この一点を聞いているんです。

 アメリカが国連憲章にもとづいて行動した、国連安保理決議にもとづいて行動したというが、これはアメリカがいっていることでしょう。それをうのみにあなたがいっているだけのことでしょう。

 これが、国連憲章違反だということは、世界の国際的な常識ですよ。国連安保理決議に根拠はない。根拠がないからこそ、アメリカは新しい決議を求めた。国連安保理の場で新決議を通して、武力行使容認の決議をくれといった。通らなかったわけでしょう。通らなかったこと自体が、国連安保理決議に根拠なんかないことを示している。

 そういう状況をふまえて、アメリカの行動について、アナンさんが「国連憲章への根本的な挑戦」といっているわけですよ。

 この是非については、(首相と)意見が分かれますよ。ですから、私が聞いているのは、アナンさんが批判した相手はアメリカなんでしょう。これを認めないのかと聞いているのです。単純な質問なんです。答えてください。アメリカ以外にないでしょう。

 首相 それはアナンさんにじかに聞かないとわからない点もありますが(場内爆笑)、必ずしもアメリカ一国を非難しているんじゃないんです(場内騒然、藤井孝男予算委員長「ご静粛に」)。趣旨は、国連も現状ではいけない。安保理改革も必要だと。国連が無力であってはいけない。国連強化のためにはどうしたらいいかということもふれているんです。

 志位 かならずしもアメリカ一国とは限らないというけれども、「若干の国がある」、「これらの国は」といっているのですよ。

 じゃあ、「先制攻撃をやる権利がある。単独行動をやる権利がある」といっている国が、アメリカ以外にどこかありますか。ないでしょう。どこにありますか。「これらの国は」といっているんです。「若干の国がある」といっているんです。アメリカ以外にありますか(「そうだ」の声)。なんでこれだけ聞いても答えないんですか。どうですか。アメリカ以外にありますか。

 首相 アナン事務総長は、志位さんみたいに断定していません。国連改革も必要だといっているんです。そんなに聞きたかったら、アナン事務総長によく会って聞いて問いただしてください。

 志位 はっきりいいきっているんですよ。つまり、「若干の国がある」、「これらの国は、先制的な武力行使の権利と義務がある」といっている。「安保理の合意を待つ義務はなく、代わりに、単独でやれる」といっている。いいきっていますよ。

米軍主導の占領支配から、国連中心の復興支援に軌道を切り替えよ

 志位 私は、これほど明りょうなアメリカ批判を、アメリカ批判と認めないというのは驚きました。ここにニューヨーク・タイムズがありますけれども(実物を示す)、見てくださいよ、ブッシュ大統領とアナン事務総長をならべて、「アナン、ワシントンを批判」とはっきり書いてありますよ。これは世界中がみんなわかっている話ですよ。これだけ聞いても、アナンさんがアメリカを批判したという事実も認めない。

 アメリカがいうことはなんでもいいなりになるくせに、アメリカが批判されたときには、事実すら認めない。これがアメリカいいなりというんですよ(「そうだ」の声)。イラクへの早期の自衛隊派兵にかたむいたのも、アメリカの一喝で派兵にカーブをきった(ものだった)。それから、アナンさんが批判したのにたいしても、アメリカへの批判だと絶対に認めない。これがアメリカいいなりなんです。

 (首相が閣僚席から「反米の共産党とは違うんです」と叫ぶ)私たちは、アメリカとは、日米友好条約をつくるということを目標にしております。本当の友好というのは、対等・平等の関係でこそできるのであって、あなたのように従属的な関係では、本当のフレンドシップ(友好関係)なんかできない。はっきりいっておきます。(首相の閣僚席からの発言に)これは問題ですよ。

 私は、こういうアメリカいいなりにイラクへの派兵計画をすすめるのは、中止すべきだ、(強行すれば)日本はとりかえしのつかない道に足を踏み入れることになると思います。

 イラク問題の真の解決というのは、米軍主導の占領支配から国連中心の復興支援に軌道を切り替えて、イラクの国民に主権を返還し、そしてイラク国民が本当に国の主人公になった国づくりへの支援をおこなうことにあると思います。(「そうだ」の声、拍手

志位「消費税を3年間上げない」というなら、経団連の献金受け取りを拒否せよ
首相私は、喜んで受け取ります
志位“消費税増税の環境をつくる内閣”という正体見たりだ

 志位 最後に一問うかがいます。「政治とカネ」をめぐって、端的に一問だけ聞きます。

 日本経団連は、今年一月一日に発表した「奥田ビジョン」のなかで、公然と企業献金のあっせん再開を口にし、各政党の政策と実績を評価した指針を作成したうえで、政治献金への関与を強化する方向性を打ち出しました。

 そして九月二十五日に、各政党の政策を評価する基準となる「優先政策事項」というものを十項目にわたって発表しました。

 この第一項目は、「経済再生、国際競争力強化に向けた税制改革」とありまして、「法人実効税率を少なくとも主要国並みに引き下げる」とともに、「租税負担と社会保障負担を合わせた企業の公的負担を抑制する」(とのべている)。これが第一項目です。

 第二項目は、「将来不安を払拭(ふっしょく)するための社会保障改革」とありまして、「消費税の税率の引き上げを検討する」とあります。

 私は、これはなかなか重大だと思います。すなわち、大企業減税と消費税増税という、かねてからの財界の要求であり野望であることを、カネで買い取ろうという、最悪の政治買収だと思います。

 私は端的に聞きます。総理は、一昨日の本会議での、消費税問題をめぐる私の質問にたいしまして、私が具体的にただした税のあり方についての総理の見解についてはお答えにならず、「総裁在任の三年間は、消費税を引き上げない」と繰り返し語られました。

 ならば、聞きたいと思います。ならば、少なくとも、日本経団連があっせんする企業献金は、首相在任中、総裁在任中の三年間は、自民党として受け取りを拒否する。これが筋ではないですか(「そうだ」の声)。「三年間引き上げない」というんだったら、もしかりに日本経団連がカネをくれるといっても、「そんなカネは筋が通らない。だからこれは拒否します、返上します」というのが当たり前だと思います。せめて三年間は日本経団連から献金を受け取らない、拒否するといえますか。はっきりこの点をお答えください。

 首相 経団連は、消費税を引き上げろといっているのですよ。私は引き上げないといっているんですよ。私は引き上げないといっているのに経団連が自民党に献金しますというんだったら、喜んで受け取りますよ。(場内騒然

 いうことを聞かなくても、自民党はやっぱり日本経済活性化のために必要だと。平和と安全を守るために、よい外交活動を続けていると。日本の平和と安定、繁栄のために、やはり政権政党・自民党は総合的に考えて、なくてはならない政党だと。だから小泉はわれわれのいうことを聞かないけれども、自民党を応援しよう、献金しようというんだったら、私は喜んで受け取ります。

 志位 自民党が受け取りを拒否すべきだというふうに聞いたのに、拒否するといわなかったですね。

 経団連の要求は、「(消費税の)税率引き上げを検討する」という要求と一体になったものです。そうした一体になった献金を拒否するといえないということは、これはあなたの内閣の“正体見たり”だと。“消費税増税の環境をつくる内閣だという正体見たり”だということを指摘して、質問を終わります。(拍手


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