2003年10月2日(木)「しんぶん赤旗」
東京、埼玉、千葉、神奈川の一都三県で一日、条例に基づくディーゼル車排ガス規制が始まりました。初年度登録から七年たったディーゼル車は、排ガス中の粒子状物質(PM)除去装置を装着するか、規制に適合した新車に買い替えないと運行ができなくなります。
深刻な大気汚染の改善は国民の願いであり効果が期待される一方で、対策を迫られるユーザーには重い経済負担がかせられています。「弱いものにだけしわ寄せがきている」と怒りの声があがっています。
国は除去装置を装着する費用に補助を行ってきましたが、四十億円の予算枠を使いきり六月上旬に打ち切りを決定。ユーザーの対応を遅らせる一因となりました。その結果、新車の納入や装置装着が規制開始に間に合わない混乱した事態を招いています。
「排ガス対策を怠ってきた国と自動車メーカーは責任を取れ」。一都三県のディーゼル車排ガス規制が始まった一日、関東一円のダンプ労働者が排ガス対策の重い経済負担を訴え、三十一台のダンプを連ね、明治公園(新宿区)から都内をデモ行進しました。
主催は、みずからダンプを所有する労働者でつくる全日本建設交運一般労働組合(建交労)全国ダンプ部会。東京、神奈川、千葉、茨城、栃木などから八十人参加。「政府、自治体は排ガス補助金の拡充を」などの横断幕を掲げ、信号待ちのダンプから「頑張ってやってよ」の声援も飛びました。
規制をクリアするには百万円以上する排ガス除去装置をつけるか、一千万円以上する規制適合の新車へ買い替える必要があります。
政府とメーカーが新車販売に力を注いだ結果、古いダンプに装着できる除去装置の開発・製品化が遅れ、補助を受けても装置の供給が間に合わない事態が続いています。
杉山忠通全国ダンプ部会長は、出発前の集会で「会員の昨年の平均純所得は二百四十九万円。対策をしようにもお金がないし、仕事もない。廃業が続出しています」と訴えました。
「除去装置は注文したけど納期は未確定だな」と話す栃木支部の鈴木清吉さん(55)。「砕石の仲間百五十人が今年廃業しました。仕事減少、運賃単価引き下げでどうにもならない」
同じく除去装置の納入を待つ千葉・野田市の石坂昭夫さん(62)。仕事の日報をくりながら「七月の稼働日数が十六日、八月が十九日。これからやっていけるかどうか」と不安を語ります。
埼玉・八潮の坂入康夫さん(61)は昨年、新車を購入。「本当は買いたくなかった。家のローンもあるし、仕事をやっていかなきゃいけね。最近じゃ運転手は、時間におわれ高速代も片道だけ。文句いうなら『嫌ならやめろ』だ。つらいぜ…」
出発前集会では、東京大気汚染公害裁判訴訟の西順司原告団長や、日本共産党の大森猛衆院議員らが激励のあいさつ。ダンプ労働者は、デモ終了後、環境・国土交通・経済産業省へ請願行動を行いました。