日本共産党

2003年10月1日(水)「しんぶん赤旗」

ヨドバシなど提訴

27歳派遣社員と母親

「笑顔足りない」50回殴打

1,800万円賠償要求


 ヨドバシカメラの携帯売り場を舞台にした違法労働と暴力事件で、被害者の青年と母親が三十日、ヨドバシ、DDIポケットと派遣会社などに総額千八百万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴しました。

 訴えたのは派遣労働者Aさん(27)と母親で作家の下田治美さん。訴状などによると、Aさんは昨年十月から今年三月まで東京・渋谷区の派遣会社に所属し、ヨドバシの店舗でDDIの販売に従事。その間、四回の暴行事件がありました。(別項)

 第三、第四の事件は「遅刻」を理由にしたものですが、早出のサービス残業に遅れたもので、雇用契約上は遅刻ではありませんでした。重傷のAさんを連行し「遅刻」への謝罪を強要したさい、DDI側は傷だらけのAさんを目撃しながらなんの処置もとりませんでした。

 ヨドバシの携帯売り場は一、二人のヨドバシ社員とDDI、ドコモなどからの派遣要員十六、七人で構成。ヨドバシ社員が絶対的な権限を握ったうえ「自らの手をほとんどわずらわさずに莫大(ばくだい)な利益をあげるシステム」(訴状)でした。これは違法な「二重派遣」であることが、厚労省の調べで判明しています。

 訴状は「派遣社員軽視が暴力の容認に直結」し、「二重派遣構造における支配関係がその背景にある」と指摘。加害者個人だけでなく、企業側には使用者責任や安全配慮義務違反などの責任がある、とのべています。

 一方、下田さんは、面前でおこなわれた息子への暴力によるショックで重度のうつ、睡眠障害などを発症。入院と長期の通院を余儀なくされ、いまだに執筆不能の状況が続いています。

 提訴についてヨドバシカメラ、DDIポケットはそれぞれ「訴状を見ていないので現段階では何とも言えない。法廷で見解をのべる」としています。

 ◇

 提訴後、両原告と代理人の笹山尚人弁護士らが記者会見しました。

 Aさんは「裁判に勝つことで人間としての尊厳を取り戻したい。この裁判を通して派遣労働者の条件が少しでも改善されればよいと思う」と語りました。弁護団は「労働者を過酷な条件で支配する状況下で発生したもので、どの派遣労働者にも起こりうる事件だ」と強調しました。

「便器なめさせる」と発言/母の面前でも暴行

 第1の事件(02年11月29日・派遣会社内)。ヨドバシから「笑顔が足りない」との通告で、バインダーなどで頭部を約50回殴打。

 第2の事件(同12月7日・ヨドバシ上野店売り場)。仕事上のミスで、ヨドバシ社員がひざげり数回。

 第3の事件(03年3月13日深夜−14日未明・派遣会社内)。早出サービス残業への「遅刻」がヨドバシから通告され、派遣会社員が社長の面前で3時間半にわたり暴行したうえ「ペナルティーでトイレを磨き、『便器をなめさせる』と発言」。

 第4の事件(同14日夕・下田宅) 前夜の社員が押しかけ、母親の面前で暴行、ろっ骨骨折など全治2カ月の重傷を負わせたうえ、DDIに連行して「遅刻」への「謝罪」を強要。


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