2003年10月1日(水)「しんぶん赤旗」
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衆院解散が間近に迫るなか、国民の前に総選挙の争点を明らかにする本格論戦の場となった衆参の各党代表質問が終わりました。日本社会の現状を見据え、打開の方策と、21世紀の進路を正面から問うた日本共産党の論戦を、自民、公明の与党や民主党の主張と対比してみると――。
倒産やリストラ、失業者増を招く小泉「構造改革」に国民は痛めつけられ、政府の調査でも三人に二人が将来生活に不安を抱いています。小泉首相は雇用の厳しさを認めながら「悲観的な見方はしない」と無責任な態度に終始しました。
日本共産党の市田忠義書記局長は三十日、日本経済再生の道を開く大きなカギの一つとして、雇用を守り拡大するとりくみを提案。(1)長時間労働の是正、サービス残業一掃(2)若者の仕事保障(3)中小企業を守る−の三点をあげました。二十九日の志位和夫委員長の衆院代表質問を聞いた男性から「サービス残業をなくす問題を取り上げたのは志位さんだけ」と感想が寄せられたように、政府や企業に労働時間の規制や雇用の責任を求めたのは日本共産党だけでした。
自民党の安倍晋三幹事長は「今後、改革をさらに加速していく」と言明。改革の「痛み」については「『痛み』にさらされている方々に夢や希望を与えるのも総理の使命」と精神論を説くだけでした。
民主党は雇用・景気重視の財政運営や失業率引き下げ、ワークシェアリングなどに言及したものの、「小泉総理にできないスピーディーな改革ができる」(菅直人代表)と「構造改革」を競い合う姿勢を見せました。
日本経団連など財界が求める消費税大増税についても、志位、市田両氏は「暮らしと営業、景気を破壊する消費税を税制の中心にすえることは最悪の選択だ」と迫りましたが、国の税制のあり方について首相のまともな答弁はないままでした。
泥沼化するイラク軍事占領で、日本がアメリカに加担し自衛隊派兵や戦費負担を行うのか、国連を中心とした復興・再建を進めるのかが問われています。
市田氏は自衛隊派兵が「文字通りの参戦であり、憲法違反であることはあまりにも明白だ」と批判し、アメリカの一国覇権主義に追随する小泉外交に未来がないことを強調しました。
しかし、この問題で政府・自民党は「世界のなかの日米同盟をいっそう強化する」(首相)立場から、イラク派兵を「国民によく説明し理解を求めることは国際社会の一員としての義務」(安倍幹事長)と発言しました。
公明党の浜四津敏子代表代行はもっと露骨に、「わが国だけが平穏であればいいという一国平和主義はエゴ以外の何物でもない」とのべて、イラク特措法に基づく自衛隊派兵を主張しました。
民主党は、米英占領軍を支援するイラク派兵には反対を表明しましたが、PKO(国連平和維持活動)やPKF(国連平和維持軍)の参加を検討すべきだとしました。
テロ特措法(対テロ報復戦争参加法)に対しては延長が「無原則になされるなら法の趣旨を逸脱する恐れがある」(千葉景子参院議員)としながらも、「真に必要なら国会によるシビリアンコントロールを徹底した上で自衛隊の活用もあり得る」(同)とのべました。
自民党結党五十周年に当たる二〇〇五年十一月をめどに、党の改憲案をまとめることを指示した首相。「集団的自衛権を行使できないんだったら憲法を改正した方がいい。解釈でやるよりも」(九月十四日の民放テレビ番組)というように、照準は九条の明文改憲です。
日本共産党は、この憲法改悪の策動に真正面から立ち向かい、政府・与党に中止を求めました。
代表質問で志位委員長、市田書記局長は、九条改憲の狙いには、米軍が地球的規模で行う戦争に自衛隊が何の歯止めもなしに参加できるようにすることがあると告発。九条擁護は、日本の恒久平和、国連憲章に基づく平和の国際秩序を築くうえで重要だと主張しました。
首相は、「私の任期三年間で、現実の課題として憲法改正を取り上げることは難しい」としながらも、「憲法は不磨の大典、絶対改正してはならないというものではない」と強調。自民党は「総理が改正案の検討はするが、任期中はやらないというのは、議論の展開を妨げることになるのではないか」(上杉光弘参院議員)と改憲論議を加速させるよう求めました。
民主党は、この政府・与党の改憲策動にまったくふれず、党としての立場も語りませんでした。