2003年10月1日(水)「しんぶん赤旗」
先の通常国会で政府・与党が強行成立させた国立大学法人法がきょう施行されます。これによって国立大学は来年四月から「国立大学法人」となり、文部科学大臣が決める中期目標にもとづいて教育研究を行い、その達成状況の評価によって財政削減や教育研究組織の改廃などの措置をうけることになります。
法人法は、大学への国家統制の強化によって学問の自由を脅かし、教育研究の発展の基盤をほりくずす悪法であることが国会審議でもうきぼりになりました。
大学関係者や世論の批判のひろがり、日本共産党をはじめ野党の厳しい追及によって、政府は「中期目標は簡潔なものにし、個々の教員の教育研究に言及しない」「大学の自主性を尊重し、再編・統合も押し付けない」など法の運用に制約を加える答弁をしました。参議院で二十三項目に及ぶ付帯決議をあげたことも今後にいきるものです。
法人法の施行にあたって、これらの国会論戦の成果をいかして大学の自主性と教職員、学生・院生の権利を守るたたかいを発展させることが重要になっています。
法制定における答弁や付帯決議は、法律執行への政府や国会の明確な意思表明という特別の意味をもっています。これを厳格に守ることは政府の重い責任です。
ところが、政府が公布した政令(国立大学法人評価委員会令)は、国立大学法人の業績を評価するなど強い権限をもつ評価委員会の組織・事務について、大学にはなじまない独立行政法人の評価委員会とほとんど同じ内容になっています。付帯決議が求めた「評価にあたっての配慮」や「会議の公開」などは明確にされておらず、学問の特性や大学の自主性を尊重したものに根本的に改めるべきです。
政府の総合科学技術会議が、資源配分に関する評価の対象に国立大学を加えようとしていることも見過ごせません。法人法の規定にはなく、国会審議の対象にならなかったものであり、やめるべきです。
来年度概算要求では授業料の標準額を現行の五十二万八百円としながら、値上げ可能な上限を10%まで認めるとしています。これでは値上げが誘発され大学・学部間の学費格差をうむ危険があります。政府は「法人化で学生の経済的負担を多くさせない」との大臣答弁に責任をもつべきです。
各大学では法人化準備の作業が急ピッチですすめられています。重要なことは、国会審議で何が問題になり、政府がどう答弁したかを大学構成員に明らかにし、文科省の不当な介入を排しながら、学長のトップダウンでなく全構成員の意見をくみつくして準備をすすめることです。
たとえば、学長の選考手続きは「各大学で自主的に決める」ことになります。解任手続きを含めて、大学構成員の意向投票を各大学の規定に定めることが重要です。法人化後の労働条件は、法人が労働組合と結ぶ労働協約や、職場の過半数代表の意見を聞いて作成する就業規則などによって決まります。これらの内容は非特定独立行政法人(非公務員)をまねるのではなく、大学にふさわしい内容にする必要があります。
憲法が定める「学問の自由」は、大学関係者をはじめ国民の長年のたたかいがかちとったものです。私たちは、法人制度下においてもこれを守り、国民のための大学づくりをすすめるために力をつくします。