日本共産党

2003年10月1日(水)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議

 三十日の参院本会議で、日本共産党の市田忠義書記局長がおこなった代表質問(大要)は、つぎの通りです。


 私は日本共産党を代表して、小泉総理に質問をいたします。

地震国日本−−震災に強い街づくりなど長期的視野に立った対策を

 まずはじめに、先日の十勝沖地震で被災されたみなさんにこころからお見舞い申し上げます。政府としても被災地のみなさんの救済に万全を期していただきたい。同時に、地震国日本で、被害を最小限にくい止めるために、震災に強い街づくり、地震の予知・予報の技術確立をめざして、長期的な視野に立った対策を講じるとともに、専門家や民間の多くの努力をさらに促進させるための措置をとるべきだと考えます。

 まず答弁を求めます。

国民のくらし−−現実を直視し正しい解決策示すことが政治の責任

 さて総理、いま国民のくらしはどうなっているでしょうか。

 政府や日銀の調査によれば、国民の三人に二人がいまの生活に不安を持ち、五人のうち四人が、将来の生活への不安を持っていることが明らかになっています。この不安を取り除くことこそ、政治に求められている最大の課題ではないでしょうか。

 ところが総理の目には、こうした実態がなにも見えていないようであります。

 たとえば、所信表明演説の中で総理は、「雇用は増えている」「倒産も減った」「構造改革の成果があらわれつつある」と述べました。しかし、事実はなによりも冷厳であります。雇用者の総数はこの三年間で増えるどころか三十三万人も減りました。一方、完全失業者はあなたが総理に就任されたときとくらべて、およそ二十六万人も増えています。

 倒産は、バブル崩壊後二番目に多かった昨年度と比べて若干減っただけで、この七月をみても不況型倒産は千九十八件と、全体の八割を占め、過去最高を記録しています。しかも、小泉内閣の二年半に、倒産によって職を失った人は、四十四万七千人にも上るのであります。総理は、この事実を認めますか。そして、この責任をどう考えていますか。

 自分に都合のいい数字だけをつまみ食いして、いかにも景気の先行きが明るいかのように描きだそうとするのは、あまりにも無責任な態度だといわなければなりません。いま政治に求められているのは、こうした現実をリアルに直視し、正しい解決策を示すことであります。

 わが国経済はこの間、なんどか回復の兆しを見せたことがありました。たとえば昨年五月にも、政府は景気の「底入れ宣言」をおこないました。ところが一時的な現象に終わり、景気は再び低迷するということを繰り返してきました。

 その最大の原因は、GDP(国内総生産)の六割をしめる、日本経済にとってもっとも大事な家計消費がずっと冷え込んだままであり、それをいっそう冷え込ませる政治がおこなわれてきたからであります。政府が、景気が回復しつつあるといっていた中身は、実は、リストラと下請け中小企業の犠牲の上に立った大手製造業の収益改善と、アメリカの景気頼み、輸出頼みにしかすぎなかったのでありま。

 この二年間の家計は、年収で三十二万六千円減少し、健康保険改悪による医療費の負担増で食費まで削る家庭が増えています。日銀の調査では「貯蓄なし」という家庭が二割以上にも達しています。

 ところが総理は、「悲観論からは新しい挑戦は生まれない」とのべ、不安の解消どころか、「新しい芽」がでてきたから、さらに痛みに耐えよというのであります。これでは、景気の自律的回復も望めないし、くらしだけではなくて企業経営もなりたたなくなるではありませんか。

景気をよくし経済再生の道は雇用を守り拡大することに

 こんどこそ経済の主役である家計を直接応援し、国民の購買力を高めることによって景気をよくし、日本経済再生への道を開くことが求められています。そのための大きな鍵の一つは、雇用を守り、拡大することであります。

 第一は、長時間労働を是正し、「サービス残業」を一掃して、新しい雇用を増やす本格的な取り組みをおこなうことであります。過労死にいたるような、一人で二人分の仕事を強いられている人がいる一方、他方では職を求めてさまよう人がいるというのは、あまりにも不合理ではありませんか。ある民間の調査機関の試算では、「サービス残業」を一掃すれば百六十万人もの雇用が新たに生まれ、失業率を2・4ポイント引き下げることができるといわれています。政府が本気になって、この課題に取り組むべきではありませんか。

 第二は、未来を担う若者に仕事を保障する取り組みを、政府と大企業の責任でおこなうことです。

 大卒の就職率は過去最悪。若者の五人に一人は「フリーター」とよばれる不安定な働き方をさせられています。最近、新日鉄のガス爆発事故、ブリヂストンの火災事故など、大手製造業の現場で災害が相次ぎ、マスコミでも「安全までリストラしていないか」という指摘がなされています。若者を粗末にする雇用のあり方と決して無関係とはいえません。

 わが国のものづくりの基盤を後世に引き継ぎ、未来をになう力をはぐくむことは、企業の社会的責任であり、こうした責任を果たさせるために政府としても実効ある働きかけをおこなうべきだと考えますが、いかがですか。

 第三は、雇用の最大の受け皿であり、日本経済の基盤をささえる中小企業を守ることであります。

 小泉内閣発足後の二年四カ月に四万四千件もの企業倒産が起きています。

 政府が「不良債権処理」を最優先して、銀行の貸し渋り・貸しはがしを促進したことによって、金融機関の企業向け貸し出しは、小泉内閣発足以前とくらべて、六十一兆円も減少しました。

 中小企業に必要な資金をきちんと供給し、不況の中でも必死でがんばっている中小企業の経営を守ることは、雇用を守るうえでも、経済の立て直しにとっても不可欠であります。

 そのために、第一に、不良債権処理の「二年、三年ルール」などの機械的スケジュールの押しつけを撤回すること、第二に、資産デフレで担保価値が下がったら「不良債権」扱いする資産査定方式を経営の実態を反映したものに改めること、第三に、わが党も要求し、国民の運動で実現した「借換保証制度」をはじめ、中小企業への公的金融支援を拡充すること、第四に、ヤミ金融をはじめ、高利貸し、暴力金融の被害を根絶すること。

 以上の緊急措置を直ちに講じるべきだと考えますが、総理の見解を問うものであります。

 同時に、米軍への「思いやり」予算約二千五百億円の約七割しかない中小企業予算の抜本的拡充、大型店の出店や一方的な撤退を規制し、零細企業に重い負担を押しつける消費税の免税点引き下げの中止を求めるものであります。あわせて総理の答弁を求めます。

予算の使い方を公共事業から社会保障中心にきりかえる

 国民に将来不安をもたらしているのが、医療費の値上げに続く年金改悪など、社会保障の改悪であります。将来の給付をまかなう財源がないから、給付を切り下げ、保険料を引き上げる、それでも足りなければ消費税の大増税、政府・財界入り乱れての大合唱ですから不安が増し、消費が落ち込むのは当然であります。

 いま肝心なことは、予算の使い方を、公共事業中心から社会保障中心にきりかえることであります。わが国の公共事業費は、国土面積が日本の二十五倍もあるアメリカよりもさらに多く、その一・五倍、日本とあまり変わらないイギリスの十三倍であります。ムダを削って、せめてこれを欧米諸国の水準にまで引き下げ、社会保障を予算の主役にすることこそ求められているのではありませんか。同時に年間五兆円規模にまでふくらんだ軍事費も聖域にすべきではありません。答弁を求めます。

消費税大増税−−新たな景気破壊まねき社会保障の土台を崩す

 国民に将来への不安をかきたてているもう一つの問題が、消費税の大増税計画であります。

 日本経団連や経済同友会など、財界がこぞって消費税の大増税を言い始めたのは、法人税の今以上の削減と、社会保障の保険料負担をまぬがれるために、足りなくなる分をすべて消費税に肩代わりさせるためであります。なぜなら、大企業は消費税はすべて価格に転嫁して、自らは一円も支払わなくてすむからであります。一方、中小零細企業にとっては、負担を転嫁することもできず、文字通りの営業破壊税であります。所得の低い人ほど負担が重くなる消費税は、国民の家計を直撃して、景気を一気に冷やす。それは、九七年、5%への増税がもたらした長期不況によってすでに証明済みであります。

 昨日の衆院本会議で、わが党の志位委員長は、このような不公平税制、くらしと営業と景気を破壊する消費税を税制の中心にすえることは「最悪の選択」ではないかと質問しました。すなわち、税のあり方をたずねたのであります。

 ところが総理は、自分の任期中は上げないといっただけで、問われていることにまともに答えませんでした。

 この点について、あらためて明確な答弁を求めるものであります。

 総理、大企業はあいつぐリストラで、自らの保険料負担を軽減するだけでなく、社会保障の支え手をも切り捨ててきました。そのうえ、今度は消費税大増税をなどという要求は、あまりにも手前勝手なものだとは思いませんか。さらに、消費税の大増税によって新たな景気破壊がおこれば、いっそう社会保障の土台が掘り崩される悪循環に陥ることは明らかではありませんか。あわせて答弁を求めます。いま国民生活が不安のただ中にあるとき、安易に消費税増税を口にすることは責任ある政治家のなすべきことではありません。

経団連献金−−消費税引き上げを金で買う最悪の買収計画

 経団連は、公然と企業献金のあっせん再開を口にし、しかも自分たちの要求に沿う政治行動をとった政党に献金するといっています。献金をするための政策の優先順位の第一位は、法人税の引き下げ、第二位は消費税の引き上げとなっておりますが、まさに消費税引き上げを金で買おうという、最悪の買収計画であります。大企業からのヒモ付き献金に頼って、どうして国民のための政治ができるでしょうか。総理は、所信表明演説で「信頼の政治」を確立すると述べられましたが、経団連からの献金は受け取らないと断言できますか、それともあなたのいう「信頼の政治」とは、財界からの信頼のことですか、答弁を求めます。

米の軍事占領支援でなく、国連中心のイラク復興、再建への協力を

 次に平和と外交の問題についてであります。

 イラクの状況は、いまどうなっているでしょうか。

 イラク戦争の「大義」とされていた大量破壊兵器は、いまだに見つかっていません。五月から捜索にあたってきた千四百人規模のアメリカの調査団でさえ、近く、「大量破壊兵器は見つからなかった」という中間報告をおこなうといわれています。

 米軍の不当な占領が続くもとで、それへの抵抗や暴力も広がっています。米兵の死者は、ブッシュ大統領が五月一日に大規模戦闘の終結を宣言して以降、百六十七人、それまでの百三十八人を大きく上まわりました。事実上の戦争状態が続いています。

 なぜ、このように泥沼化しているのか。それは、あの戦争が国連憲章違反の侵略戦争であり、まちがった戦争だったからであります。

 だから、アメリカとの同盟国を含む世界中の大多数の国が、反対の意思を明らかにしたのであります。国連も最後まで、アメリカの圧力に屈しませんでした。イラクへの侵略戦争は、国連の意思にもとづかないものでした。

 そして、九月二十三日の国連総会では、アナン事務総長が、名指しこそしませんでしたが、米英の先制攻撃にたいして、国連憲章の原則にたいする根本的な挑戦だと批判しました。総理はこれをどのようにうけとめられましたか。

 昨日の衆議院本会議での答弁では、アナン発言は「一般論だ」としりぞけようとしました。それでは伺います。アナン事務総長は「これらの国は、国家には先制的に武力を行使する権利と義務があり、たとえ他国の領土に対するものであっても、また、たとえ攻撃に使われる可能性のある兵器システムがまだ開発途中であっても、行使できるのだと主張している」と述べています。「これらの国」とは、いったいどの国を指していると総理は考えているのですか。

 あなたがイラク戦争を支持するとしてあげた根拠は、ことごとく崩れ去ったではありませんか。それでも、あの戦争を支持したことは正しかったというのですか。

 総理は、違法なイラク戦争を支持しただけでなく、今度は、現に戦争がおこなわれているイラクに自衛隊を派兵し、無法な米英軍の軍事占領を直接支援しようとしています。文字通りの参戦であり、これが、武力による威嚇と武力行使を禁じた憲法違反であることはあまりにも明白であります。米英の占領軍に協力してきたイラク統治評議会のチャラビ議長でさえ、財政や治安に関するより多くの権限を統治評議会に与えるべきで、イラクへのこれ以上の外国軍隊の派遣を拒否すると述べたのであります。

 日本がやるべきことは、アメリカの軍事占領に対する支援でなく、国連を中心にしたイラク国民の主権を尊重した復興、再建への協力であります。

 アメリカの同盟国であるカナダの外相は、「ほんとうの友人は率直にものをいう。いいなりになるのは従属国だ」といいました。

 「お茶会じゃないぞ、逃げるな」「寛大な負担を」とアメリカにいわれて、唯々諾々として従おうとする。なんと情けない態度でしょうか。イラクへの自衛隊の派兵、戦費負担をやめるとともに、イラク派兵法そのものの廃止を求めるものであります。

戦争はテロと暴力の土壌を拡大、テロ特措法はきっぱり廃止に

 次に、テロ特措法の延長についてであります。

 戦争でテロはなくなったのか。ビンラディンは見つかっていません。アフガニスタンの現状は、戦争はテロと暴力の土壌を拡大するだけであり、その解決にはならないことを示しています。

 テロ特措法にもとづいて、インド洋に派遣された自衛艦が、法律の目的をこえてイラク攻撃に事実上協力していたことが米軍からの証言で明らかになりました。これらを徹底的に検証したうえで、延長ではなく、きっぱりと廃止することを求めるものであります。

 この間の一連の事態は、アメリカがいかに強大な軍事力をもっていたとしても、軍事力にのみ依拠した国際秩序などは、決してつくれるものではないことを証明しました。

 日本共産党は、平和を願う地球的規模の巨大なうねりと呼応・連帯して、国連憲章にもとづく平和の国際秩序を築きあげるために、引き続き力を尽くすものであります。

米の無法な戦争に参加するための改憲策動の中止を求める

 最後に憲法問題について質問します。

 総理は国会の場で、「将来やはり憲法を変えるのがのぞましい」「国際常識にあわないところがある」とのべ、自民党の結党五十周年にあたる二〇〇五年十一月までに憲法改正案をまとめるよう指示しました。そして、それ以前にも、改憲のために必要な「国民投票法案」を成立させる、と明言しました。

 なぜ、いま改憲なのですか。それは、「後方地域支援」だから武力行使ではない。だから憲法違反ではないなど、憲法の勝手な解釈によるごまかしが、もはや通用しなくなった。アメリカがイラクへの侵略戦争のような無法な戦争を引きおこした際、この戦争に、公然と日本が参加するうえで、憲法九条が最大の障害となっているからではありませんか。憲法を変えないとできないこととはいったい何なのか、具体的にお答えください。

 圧倒的多数の国民は、「憲法九条」を変えてほしいなどと望んではいません。

 日本はこれまで、外国での武力紛争に直接参加したことは、一度もありません。「二度と戦争はしない。軍隊はもたない」と決めた九条の存在と、平和のための国民の運動が歯止めとなってきたからであります。

 それは私たちの誇りであり、アジア、中東をはじめ世界の多くの国々は、そこに信頼をよせてきました。

 一九九九年に開かれたハーグ世界平和市民会議では、「公正な世界秩序のための十の原則」の第一項目に、「各国議会は、日本の憲法九条のように自国政府が戦争をすることを禁止する決議をすること」をかかげました。

 アメリカでも湾岸戦争直後に、日本国憲法の第九条は二十一世紀における世界の平和の宝だとして、「第九条の会」がつくられました。

 ところが本家本元の日本政府が、こうした流れに逆行することばかりやっているではありませんか。かつての日本軍国主義による侵略戦争、植民地支配と重ね合わせて、「日本は戦争をしないと誓った自国の憲法に反する道に進んでいる」と、アジアをはじめとする世界中の世論が痛烈に批判しています。

 総理は、こうした批判をどのように受けとめているのですか。憲法の平和的・民主的原則を生かし、世界でもアジアでも、無法・不正義の戦争から平和のルールを守りぬくことが、いま、ますます重要になっています。日本共産党は、そのために、全力をあげる決意を表明するとともに、改憲策動の中止を強く求めて質問を終わるものであります。


市田書記局長にたいする

小泉首相の答弁

(要旨)

 市田忠義書記局長の代表質問にたいする小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次のとおりです。

 【十勝沖地震の被災者救済、地震防災対策について】

 地元の要望もふまえ、被災地の復旧、復興に政府一丸となって迅速に対応していく。予知にかかわる観測技術の研究開発、震災に強い街づくりの推進など、専門家や民間の力の活用を図りつつ、地震被害の予防と軽減のために引き続きとりくんでいく。

 【小泉内閣の経済運営について】

 雇用や倒産の情勢は厳しい状況にあると思うが、すでに民間企業設備投資が増加し、倒産件数は前年同期に比べ十二カ月連続して減少するなど、経済には明るいきざしも若干見えている。明るいきざしを確かなものとすることができるよう、引き続き雇用、中小企業のセーフティーネットに万全を期しつつ、改革を進めて、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を図っていく。

 【長時間労働、サービス残業の問題について】

 長時間労働の是正等が新規雇用の拡大にどの程度つながるかは単純にはおしはかれないが、豊かでゆとりある国民生活を実現するため、政府としては引き続きいわゆるサービス残業の解消に努めるとともに、所定外労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進を通じた労働時間の短縮にとりくんでいく。

 【若者の雇用問題について】

 政府としては「若者自立・挑戦プラン」を推進することとしており、先般も関係四大臣より経済団体に対し、同プランへの協力や若年者の雇用拡大、人材投資の促進等を要請した。今後とも産業界の理解と協力を得ながら、若年者の雇用の拡大に努めていく。

 【中小企業、金融対策について】

 中小企業の再生に向けたとりくみを強化しつつ、不良債権問題の解決を目指し、日本経済の活性化を図るとともに、やる気と能力のある中小企業への各種セーフティーネットの拡充、悪質な金融業者の撲滅に向けた関係省庁の連携等に積極的にとりくんでいるところだ。中小企業予算については、平成十五年度は千七百二十九億円を計上し、金融セーフティーネット対策、再生支援策、新たな事業に挑戦する中小企業支援策などに重点化し、中小企業を支援していく。厳しい環境のなかにあってもやる気と能力のある中小企業がその力を発揮できるよう、中小企業政策を進めていく。大型店の出店にあたっては都市計画による規制などのほか、周辺地域の生活環境保持に配慮することを求めている。他方、退店は社会的責任をふまえたうえで企業が自主的に判断するべきものと考える。消費税の免税点の引き下げは、消費税に対する国民の信頼や制度の透明性を向上させる観点から必要な見直しであると考える。

 【社会保障制度、消費税について】

 急速な少子高齢化が進展するなかで、今後社会保障給付費は増大していく見込みであり、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、給付と負担の見直しをはじめとした不断の制度改革が不可欠なものと考えている。社会保障予算は十五年度予算においても一般歳出を抑制するなか、主要経費中最大の約十九兆円を計上し、対前年度比プラス3・9%の伸びとしている。他方、公共投資関係経費は前年度当初予算から3%以上削減し、約八兆九千億円としている。従来、私は「消費税の税率は引き上げない」といっている。それをあたかも引き上げるという前提でご質問いただくのはいかがなものかと思う。

 【軍事費について】

 現下の厳しい財政状況をふまえつつ、テロなどの新たな脅威に対応するためにも、現在の組織や装備の見直し、効率化を図ることが必要であると考える。

 【経団連の企業献金について】

 経団連に限らず、企業等の民間の団体が政党などに対して寄付を行うかどうかは、その団体が自ら決めるべき問題だ。政治資金規正法にのっとって厳正に処理し、公明、公正な政治活動を担保することで国民の信頼を得ていくことが重要だと考える。

 【アナン事務総長の発言について】

 アナン事務総長の発言は、具体的な国名に言及することなく、国際社会が直面している新たな脅威に対する国際社会の対処のあり方について一般的に問題提起したものであると承知している。米国等による対イラク武力行使は、関連する安保理決議に基づくものであり国連憲章にのっとったものであると考えている。

 【イラク復興支援について】

 イラク復興支援は国連安保理決議でも要請され、わが国としては国際協調のもと、ふさわしい支援を実施していく。

 【イラク特措法、テロ特措法の廃止について】

 イラク人道復興支援法(イラク特措法)は、イラクの復興と安全確保を支援することを目的とするものである。多くの国がイラクの国家、再建を支援しようとするなかでわが国が参加しないということで果たして国際社会の信頼を得ることができるか疑問に思う。テロ対策特措法に基づく自衛隊の活動は、国際テロの防止および根絶に向けた国際社会のとりくみに寄与するために行われているものであり、イラクの米軍支援を目的としているものではない。国際社会がテロとのたたかいを継続しているさなかで、わが国が法律の期限が切れたからといって撤退するということで、果たして国際協調を保つことができるのか。私はそうは思わない。イラク人道復興支援法およびテロ対策特措法を廃止すべきとのご指摘には同意できない。

 【憲法「改正」について】

 小泉内閣は常に現行憲法を順守している。現行憲法を順守することと、将来憲法を改正すべきだという議論は矛盾していない。現行憲法を守っていながら、将来こうあるべきだと憲法改正を議論することは、私は政党としても政治家としても何ら否定されるべきものではないと思っている。いま、あたかも改正を議論することが憲法に反する行動をとっているかのような指摘、批判はまったく当を得ていないと言わざるをえない。憲法改正については、ちょうど二年後、自民党結党五十周年を一つの契機として、自民党としてもかくあるべしという憲法改正案をまとめて、国民的な議論を喚起して、国民にとって新しい時代にふさわしい憲法はどうあるべきかという点からとりくむものであり、多くの国民的議論を喚起するなかで、お互いの理解と協力を得つつ、将来の憲法改正に向けての努力を続けていきたいと思う。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp