2003年9月29日(月)「しんぶん赤旗」
二十一日投開票の東大阪市議選で、わが党は前回当選者と同数の十二名の候補者をたててたたかいましたが、七名が落選、五名の確保にとどまりました。結果が出たとき、まさかこれだけの落選者がでるとは、衝撃的な思いが走りました。総選挙を目前にして、こうした大量の落選者を出したことについて、府常任委員会は、東大阪をはじめ、大阪と全国の党員、支持者のみなさんに申し訳ない気持ちでいっぱいです。同時に、一刻も早くこの敗因を明確にし、次の総選挙にむけた活動にまい進することこそ、大阪の党組織に課せられた責務であると自覚しています。
今回の市議選の結果は、定数五十に対し、わが党の当選者の順位が三十五、四十、四十二、四十八、五十位であり、次点から五十七位までをすべてわが党の候補がしめ、五十位から五十七位までの八人の票差が百八十七票という状況でした。
この結果は、あれこれの戦術上の失敗ではなく、得票そのものの総量が不足した中での大量落選であったことは明白であり、もし、一名ないし二名候補者をしぼってたたかっておれば、こうした事態を回避することができたと言えます。結果は、市議選をめぐる情勢認識と政治目標の決定で判断が正確でなかったことを示しています。
日本共産党の得票は三万五百三十四票、得票率は16・08%でしたが、これは前回からみて一万三千九百三十七票の後退(前回比68・66%)、得票率も5・6ポイント落ちこむものでした。ここには、東大阪市の政治状況のなかに、特別に複雑で困難な問題が存在していたということを改めて深く認識させられるものです。
府常任委員会は、地区委員会からの十二名の政治目標の承認申請を議論した際、第六回中央委員会総会決定をふまえて、「起点はリアルに、志は大きく」という立場で、押し込まれた参院比例票からどう押し戻すかという立場で検討しました。
この際、定数削減のもとで、過剰立候補して失敗した一昨年の羽曳野市や、いっせい地方選挙での四条畷市の教訓もふまえましたが、東大阪市は定数削減がなく、前回立候補の十三名を十二名にしてのたたかいであること、前回当選者の多くが中上位当選であったことなどから、安定当選ラインは参院比例票の一・五倍であるが、奮闘いかんで勝利できる目標という「甘い」判断をしました。しかし、「起点」を参院比例票のみから見て、東大阪市固有の政治情勢については考慮せず、どこまで押し戻すことが科学的で正確な「志」なのかについて、東大阪市固有の政治情勢をふまえた論議はされませんでした。ここに最大の問題がありました。
東大阪市では一九九八年の参院選と同時投票で市長選挙が実施され、党躍進の流れの中で、五十万都市ではじめての共産党員市長を誕生させました。
長尾市政は不正・腐敗にまみれた前市政を、職員採用制度の透明化や公正な入札制度の実現などで清潔市政に転換し、中小企業の町東大阪で、西日本初の全事業所実態調査をおこない、「技術交流プラザ」の立ち上げなど全国に誇る中小企業支援策を展開しました。また、積年の課題であった同和行政の終結にもとりくみました。
しかし、自民、公明を中心とした逆流勢力の妨害もあり、大型公共事業の転換や、大きな財源をともなう国保料の値下げなど、市民だれもが実感できるような福祉施策の本格的な充実には踏み切れないまま、昨年六月の市長選で、善戦したとはいえ、民主市政を失いました。
今回の市議選は、それから一年三カ月後の選挙でした。この間、民主市政を失ったあと、市長選挙での公約実現など、日本共産党を先頭とした全市的な運動の展開も不十分でした。こうしたもとで、東大阪固有の複雑で困難な政治情勢が生まれていました。このことを政治目標を設定するときに、深く検討すべきでしたが、きわめて不十分でした。
こうした問題とも結びつき、政治論戦の点では、民主市政のもとではげしい攻防となった国保料の値下げの問題を、当初は正面からとりあげることを避ける傾向がありました。「長尾市政のもとで充分実現できなかったことを掲げるのはどうか」という逡巡(しゅんじゅん)です。
この問題は改善され、国保料値下げ、中小企業支援、同和行政終結で、これまでも、これからも市民とともに建設的提案で市政を動かす党であることを鮮明にし、市民いじめと同和復活の自民・公明・民主(リベラル)に審判を下そうという攻勢的な論戦へと発展しました。しかし、日本共産党ならではの公約を突き出すことを含め、攻勢的な論戦を組み立てることが選挙まぎわの八月下旬になるという重大な遅れをつくったことも府委員会の反省点です。
国保料の値下げについては、わが党は市民の運動とともに、二度にわたって、値下げや抑制を実現してきました。十二年まえには値下げの直接請求運動をおこない、八割の世帯の国保料が値下げされました。長尾民主市政は一人あたりの繰り入れ額を府下衛星都市では一番に引き上げ、国保料の抑制につとめました。長尾市長が値下げのために提案した予算を「ドブにすてるようなもの」と言い、国保証取り上げの先頭にたってきたのは自民・公明・民主(リベラル)でした。どの党が国保料値下げにがんばる党なのか、どの党が国保料値上げの勢力であるかは、事実を見れば明白です。
府常任委員会が、今回の東大阪の市議選からくみ取った最大の教訓は、中間機関は、たえず地方政治の状況を具体的につかみ、政治目標決定に際しては、冷静で科学的な判断が求められているということです。そして、こうした「目」で各自治体の選挙戦にのぞみ、今後の中間選挙での勝利と躍進に力をつくしたいと思います。
同時に、こうした困難なもとでも参院比例票の109・5%を獲得したことは、総選挙躍進への足がかりとなるものです。選挙戦そのものの教訓については、地元の党組織の意見も聞いて総括を深めることが必要です。
そして、なによりもきたるべき総選挙で、公示までに勝利に必要な活動をやりきって、容易ではないが、奮闘いかんで前進・躍進できるという情勢に確信をもって、前進を切り開くために全力をつくす決意です。
(党府書記長 礒田常司)