2003年9月28日(日)「しんぶん赤旗」
地域の核は商店街―客を呼びこむ威勢のよいかけ声、子どもが走り回る街。いまでは「懐かしい光景」になりました。“商店街を守ろう”と大型店の進出に街をあげて反対したり市民、消費者や商業者が手を結んで、活気ある街づくりに立ち向かっている姿を紹介します。
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商都として栄えてきた茨城県の県庁所在地・水戸市に国内最大級の巨大商業施設「水戸メガモール」(仮称)が計画されていることが明らかになったのは二月のこと。「商店街がなくなる」「街に住めなくなる」と、市民や商店主らの反対運動が広がっています。
「メガモール」進出は、「不況で客が少なく、日銭をかせぐのもたいへん」「老齢化して後継ぎもいない」と青息吐息の商店主にとっては死活問題です。市内三十五の商店会が加盟する同市商店会連合会(蔭山二郎会長)は八月二十二日、約七千人の署名を添え「商店街存亡の危機」と反対請願を同市議会に提出。住民らも「商店街がなくなり、お年寄りなどが買い物ができなくなる」と加藤浩一市長に反対を要望しました。
予定地は同市南東部の市街化調整区域の約三十一ヘクタールで、既存の同市中心商店街に匹敵する面積。小・中学校や幼稚園、保育園が隣接し、県立高校も至近距離に位置しています。この一帯は地元不動産会社の太平洋物産が住宅団地の開発を計画していたところ。しかし、バブル経済の崩壊で計画がとん挫し、開発方針を転換したものです。同社が土地を開発し、大手総合商社の日商岩井が(1)都市型複合施設(スーパー、シネコン、専門店二百店など)(2)大型専門店(ホームセンター、家電など)(3)エンターテインメント(アミューズメント施設など)――などを建設する計画です。
売り場面積は七万四千平方メートル。商圏人口は県人口の三分の一に当たる百万人、年間売上額を三百億円と見込んでいます。
橋本昌知事の開発承認に当たっては市長意見書が有力な判断材料になることから、日本共産党市議団(四人)は加藤市長にたいして一貫して反対意見書の提出を要求。同市長は「議会の動向、土地利用審議会などの意見を参考に総合的に判断していく」という姿勢。同市長はまた、年度内の判断は困難としており、当初予定の二〇〇五年春のオープンは困難な情勢です。
二十二日の県議会予算特別委員会では、日本共産党の大内久美子議員が「知事の対応が注目されている」と指摘し、大型店立地を規制する法律改正や県独自の条例制定を求めました。二十四日には塩川てつや衆院議員が予定地を視察。水戸商工会議所役員と懇談しました。同会議所は「意見の八、九割が反対だ」とのべました。
同市商店会連合会の大橋章専務は「お客さんはメガモールというポイントに行くだけで、私ども商店街への波及効果は考えられない。“パイ”の食い合いになり、中小小売店は大打撃。シャッター通りになってしまう」と反対運動を続けていく構えです。(茨城県・栗田定一記者)
神奈川県茅ケ崎市(人口約二十二万人)の消費者と商業者が手を結んで「エコ・シティー茅ケ崎」をめざすとりくみをすすめています。 (木佐森美貴子・ほっと茅ケ崎準備室)
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一九九九年夏、その運動は大規模小売店ジャスコ出店に反対し署名活動などにともに暑い汗を流したことから始まりました。結局、ジャスコは出店しましたが、反対するだけではなく“商店街づくり、まちづくりにとりくもう”と「ほっと茅ケ崎準備室」(市民活動グループ)を立ち上げました。会の代表は茅ケ崎市商店会連合会(商連)の会長、副代表は茅ケ崎市消費者団体連絡会会長です。
この三年間、ほっと茅ケ崎準備室は消費者の立場で商連や商店会に企画・提案を行いまちづくりに取り組んできました。
「ほっと」をものさしに、まちの資源を生かし歩いて暮らせるまちづくり。茅ケ崎の環境や商業や農業が元気になり子どもから高齢者まで「ほっとする」まちをめざしています。
一昨年から缶よりびんを使おう!とリターナブルびんの推進に取り組みました。これは環境団体との話し合いから生まれました。
消費者は「酒屋さんは配達してくれない」と思っていました。酒屋は「安さだけでなく環境を考え、びん製品を使いたいと思っている消費者がいる」ことを知りました。
商連、酒販組合、消費者、行政がそろって環境問題の学習会を開きました。参加した酒販青年会の若いお父さんたちは「焼却炉や最終処分場から排出されるダイオキシンなど、環境ホルモンの汚染がない環境で子どもたちを育てたい」と行動しました。
大型店の販売システムが大量生産・大量販売・大量消費を生み、大量廃棄によって環境や商店街・コミュニティーを壊してきました。温暖化やごみ焼却による大気汚染を引き起こし地域の生産力を弱めました。
「ビールは環境にやさしいびんビールを」と始めた運動はいま、全国でも珍しい「茅ケ崎リターナブルワインの販売」にこぎつけました。
ワインのびんはリターナブルされず、増え続けている。びんはカレット(くずガラス)にされ再生利用がしにくい。処理費用は自治体が負担している―ことに注目したからです。
これまでに六百二十五ケース、七千五百本を販売、びんの回収率は一割です。
リターナブルびんのシステムは小さなメーカー、地元の酒屋、びん商、洗びん業者、問屋など小さいけれど地元に根付いた人たちの手で試行錯誤の上つくられました。
商業者と消費者が一緒に、びん・缶の分別収集を求める署名を集めて市議会に請願し、全会一致で採択。茅ケ崎市の廃棄物処理計画の変更に影響を与えました。この取り組みは市を動かし、規制緩和で不安を抱えた酒屋さんを明るくし、商店街の一員である酒屋以外の商店も元気にしています。
リターナブルびんの推進はその地域の状況にあわせてとりくむことが有効です。環境にやさしいこのシステムが全国に広がっていくことを茅ケ崎から呼びかけます。ぜひ挑戦してください。
今年度も商連はエコ・システム委員会(生ごみの堆肥化)、エコ・シティ茅ケ崎マイ・バッグ推進会議、茅ケ崎サイクルライフ研究委員会などの実験事業に活発に取り組んでいます。ほっと茅ケ崎準備室は委員として各委員会に参加しています。
大型店型から商店街型への経済システムに転換してこそ自然と共生する循環型のまちに変えることができます。
ほっと茅ケ崎準備室は「商店街はまちの必需品」と考えています。商店街があるまちこそほっとする、ほっと(熱い想い)なまちです。
鈴木光子・市消費者団体連絡会会長の話
湘南のなかの茅ケ崎。産業の少ない街で商店街が元気になってほしい。
時代が求める環境との調和を「茅ケ崎らしさ」で一緒にすすめたいと思います。