2003年9月28日(日)「しんぶん赤旗」
十月解散・十一月総選挙がいよいよ迫るなか、マスメディアでは「小泉・自民党」対「菅・民主党」の対決構図をあおる報道が強まっています。こうしたなかで、総選挙を二大政党による「政権選択」選挙とするべきだとの立場から、日本共産党にも民主党に協力するべきだという議論が出ています。
その典型が、「朝日」二十七日付のオピニオン面に後房雄・名古屋大教授が寄稿した「真の政権選択選挙目指せ」という一文です。後氏は、新民主党の「小泉首相への反攻」の「成否」は、総選挙を「実質をもった『政権選択選挙』にできるかどうかにかかっている」と主張。「社民、共産両党は生き残りのためだけに小選挙区に独自候補を立て、新民主党の足を引っ張るのか。自民党政権存続に手を貸すような行動を自民党と新民主党が伯仲している選挙区でもとるのかどうか」などと、日本共産党に一方的な候補者辞退を迫っています。
しかし、この議論には、国民の多数がいまの政治に何を求めているか、国民にとって真の選択肢とは何かという肝心の問題が欠落しています。
後氏は「小泉自民党は手ごわい」として、自民党役員・閣僚人事で内閣支持率が「10%も跳ね上がった」ことをあげますが、その中身をみると、自民党政治の中身を変えてほしいとの声が強いことがわかります。たとえば、「読売」二十四日付の調査では、内閣支持率アップの一方で、54・7%が景気対策優先へ「政策転換した方がよい」と回答。「日経」二十四日付調査でも58%が経済運営に「不満」と答えています。国民が小泉自民党政治の中身に強い批判をもち、その転換を求めていることは明白です。
ところが、後氏が小泉自民党に対抗させようとする新民主党は、失業・倒産を激増させた「構造改革」路線では“本家”を自認。外交・安保でも「基本的に外交・安全保障のベース(基盤)は、自民党と違いません」(枝野幸男政調会長、二十七日放映のCS放送)と表明しています。
マスメディアでも「民主党が政府の構成など、『器』の改革に熱意を示すのは、政策という『中身』で自民党との明確な違いを打ち出せずにいる事情も影響している」(「読売」二十四日付)と指摘されています。
これにたいして、日本共産党は「米国いいなりの政治でいいのか」「生活不安をひどくするばかりの政治でいいのか」と提起し、米国追従・大企業中心の自民党政治を根本から変えることを呼びかけています。憲法や消費税問題でも、民主党が党としての態度を示せないでいるなか、自民党の改憲試案づくりや二ケタ税率への動きに真っ向から対決しています。
こうした政治の中身を抜きに「政権選択」選挙だからということで、日本共産党に対して、“民主党に一方的に協力せよ”というのは、国民の目から真の選択肢を隠す議論にしかなりません。
だいたい、選挙で政党が候補者をたて政策を掲げて有権者の支持を争うのは当然のことです。それを他党の「足を引っ張る」「自民党政権存続に手を貸す」などというのは、自らが思い描く「政権選択」選挙の鋳型に現実を無理やりあてはめ、それに合わない政党の存在を根本から否定する暴論です。
後氏は、民主党の応援団然として、こうした議論を唱えていますが、今年三月には自民党の国家戦略本部の会合にも招かれて「マニフェスト」選挙のすすめを説いています。
いくら「マニフェスト」を示したからといって、自民党政治の土俵のうえでは政治が変わらないことは、十年前の細川「非自民」政権で経験ずみのことです。「政権交代」をいうのなら、その経験をこそ検証すべきではないでしょうか。(F)