2003年9月28日(日)「しんぶん赤旗」
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びっくりしたよ。友達の近くの工場で爆発が起きて大規模な火災が発生して住民が避難したって。この前にも製鉄所の事故が新聞紙上をにぎわせていたけど、大企業の工場でこんな大事故がどうして続くの。
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栃木のブリヂストン工場の大火災のことだね。激しい爆発音と黒煙で地域の住民は本当に恐ろしかっただろうね。父さんが勤めている鉄鋼の職場でも、新日鉄名古屋製鉄所でガスタンクが爆発して十五人が負傷した。大企業が新聞広告のスポンサーになっていることもあって、大企業のリストラをめったに批判しない商業各紙も、珍しくリストラが背景にあると辛口の論調を掲げていた。
日本経団連の奥田碩会長は二十四日、連合の笹森清会長との会談で、「熟練工が現場からいなくなって技能がおろそかになり、事故につながっている」といって、過度なリストラが大事故を招き、「反省すべき点がある」といっていた。財界トップもそう口にせざるをえない事態が起きているということだ。
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製造現場の人員削減はそんなに激しいの。
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激しいなんてもんじゃない。鉄鋼五社では、この十年余で労働者は六割まで激減しているのに、粗鋼生産高は維持している(図参照)。一人あたりの生産高は世界でも類をみない高水準になっている。
このなかで、死亡災害が増えて問題になっている。
川鉄千葉製鉄所(現・JFEスチール東日本製鉄所千葉)で働いている父さんの友人は、昨年秋に自分の目の前で五十二歳の同僚が突然閉まったサイドドアに頭をはさまれて死亡した。「頭のなかが真っ白になった」といまもショックを受けているといっていた。
千葉製鉄所では、パトロール中に点検台ごと廃液処理タンクに落ちる、トラクターショベルごと海に転落する、硫化水素のガス漏れで中毒死するなど、人減らしによる一人作業が増え、死亡事故が相次いでいる。亡くなってから数時間後に発見されるという痛ましい事故もあったらしい。友人は、会社が実施している職場総点検活動で「要員を増やしてほしい」とくり返し要求してきたが、会社側はまったく耳を貸そうとしないといって怒っていたよ。
経済産業省が昨年十月に、厚生労働省が今年五月に日本鉄鋼連盟会長あてに労働災害防止対策を徹底するよう求めた異例の指導文書を出していた。厚労省の指導文書は、四月末の段階で昨年同期を大きく上回る死亡災害が発生していることを重くみて「基本的な安全対策の確立を徹底する」よう求めている。
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基本的な安全対策が守られていないというのは、大変なことだね。
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まったくだ。安全を二の次にした極限までの人減らしで、これまで培ってきた技術が伝承できない事態に見舞われている。日本の近代製鉄発祥の地、新日鉄八幡製鉄所で今年七月、転炉で精錬した一六〇〇度の溶けた鉄を入れた鍋がひっくり返り、作業室にいた三人の労働者が死傷するという考えられない事故が発生した。職場のベテラン労働者は「絶対にあってはならないことがなぜ起こったのか。残念でたまらない」と悔しがっていた。
この職場は、従来一組五人でしていた作業を一組四人に減らされたうえ、定年で退職した人の補充を、リストラで休止した工場からまったく関係のない仕事をしていた労働者を充てていた。要員減に加え、熟練労働者はたったの一人で「起こるべくして起こった事故だ」との声もある。
その一方で、八幡製鉄所では、粗鋼生産高が四年前の二万二千二百トンだったものが、今年七月には四万八千四百トンと倍増している。職場は増産に追われ、猛烈な過密労働になっている。
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ひどいね。一刻も早くリストラをやめて安全優先の体制に切りかえる必要があるね。会社は対策をとっているの。
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ところが新日鉄の三村明夫社長は、事故の背景にリストラの行き過ぎといわれていることについて、「合理化は企業にとって永遠の課題でどう実施していくかが問題。現場要員の削減は無理なことはしていない」と開き直っていた。口では「安全最優先」といいながら、事故が起こったら「それ見たことか」ともっぱら労働者の安全意識に問題があるとすりかえる。もうけを最優先して安全をないがしろにしてきた鉄鋼大企業に原因と責任がある。
いまこそ利益最優先でなく、抜本的な対策を講じて社会的責任を果たすことが緊急だ。政府は監督と指導を徹底すべきだ。