日本共産党

2003年9月20日(土)「しんぶん赤旗」

年金支給

65歳より遅らせる

自民総裁選 小泉発言の背景


検討課題に打ち出す

 小泉純一郎首相が自民党総裁選で、焦点の「年金改革」(二〇〇四年度実施予定)で、年金支給開始を六十五歳からさらに遅らせることを検討課題にする考えを打ち出しました。財務省では六十七歳支給開始も検討されており、現役世代の年金不信に拍車をかけるものです。

 「年金改革」は総裁選の焦点にもなり、給付減・保険料負担増を容認する点では各候補に大差ありません。給付削減の具体的手段として支給開始年齢を提起したのが小泉首相です。公開討論会(十一日)で「いまの六十五歳以上でいいのかという問題も議論されます」と口火を切りました。

 四候補出演のテレビ番組(十二日、テレビ東京、ワールドビジネスサテライト)で小泉首相はさらに踏みこみます。

 キャスターに六十五歳支給を引き上げるということですねと念を押されると、「六十五歳でずっと続いていくと保険料負担も多すぎる、税金の負担も多すぎるということになってくる。必ず議論がでてきます」と断言しました。

 年金は厚労省担当ですが、支給開始年齢を六十代後半にする問題は、厚労相諮問機関の社会保障審議会の年金部会の検討案からは除外されました。五日示された坂口力厚労相試案にもありません。しかし小泉首相が議長となる経済財政諮問会議では「年金改革」の重要論点になっています。ことし六月に閣議決定した基本方針(骨太方針)は、「年金改革」の具体的手段の一つとして「支給開始年齢のあり方について…検討を行う」としました。

財務省と財界が推進

 政府内で推進役になっているのが財務省です。経済財政諮問会議で塩川正十郎財務相は、同会議へ提出した改革メモ(四月)に「健康寿命の伸長等を踏まえ、支給開始年齢の見直し」と明記。支給開始年齢の繰り延べを求める意思を示しました。塩川財務相は同会議の議論のなかでも「五十五歳、六十歳で定年というのは気楽すぎる。…本当の高齢者は七十五歳以上ではないか」(六月九日、同会議)など、六十五歳支給は早すぎるといわんばかりの論調をふりまいています。

 同会議では財界代表も連名で「支給開始年齢の引き上げ等も選択肢として検討する」文書を提出。はっきり「引き上げ」を求めたもので、「骨太方針」にもりこまれた「支給開始年齢のあり方」の意味するところは明確です。

 六十五歳支給自体、前回の二〇〇〇年「年金改革」で決まったばかりです。厚生年金のうち、各種公的年金制度との共通部分である基礎年金については前々回九四年の「改革」で六十歳支給から六十五歳支給に改悪。前回は、基礎年金に上乗せされる報酬比例部分が改悪の対象となり、六十代前半の給付がそっくり削られました。現在実施途上で、二〇〇一年から二十五年かけ段階的に六十五歳支給へ延ばされていきます。

不信広げた連続改悪

 “逃げ水”といわれるほど国民の年金不信を広げた連続改悪です。

 この六十五歳支給開始法案を最初に国会に提出したのが、厚相時代の小泉首相です。一九八九年の国会に、男子は一九九八年度から、女子は二〇〇三年度から十二年かけて六十五歳支給にしていく法案を提出しました。反対論にたいし「年金改革…というのは支給開始年齢と給付水準と、それから保険料負担、この三つの組み合わせをどうやってうまくやっていくかしかない」(参院予算委員会、八九年五月)と自説を繰り返します。

 六十五歳支給が決まり、「今人生八十年時代ですから、六十五歳から支給でもいいだろう、やっと認めてくれて…段階的に、決めたんです」(九七年七月十一日、厚相当時の講演で)と喜んだ小泉首相。首相就任前の前回自民党総裁選ではさらに「これから団塊の世代、昭和二十二年から二十三年に生まれた方々が、十年たつと六十五歳になる…今のまま維持することできないから、この給付を見直さなけりゃいかん」(二〇〇一年四月十八日、公開討論会)と表明しました。団塊の世代に照準を合わせ、六十五歳支給でも安心できない、手を打つという覚悟を示したものです。

手っ取早い給付削減策

 そして再び五年に一度の「年金改革」を迎えた総裁選で、支給開始年齢の再検討を表明した小泉首相。年金財源調達のための消費税増税について「この三年間はあげない」と否定するなかで、手っ取り早い給付削減策として、検討だけで終わるとみることはできません。(斉藤亜津紫記者)


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