2003年9月19日(金)「しんぶん赤旗」
日本共産党が十八日、フジテレビにおこなった「訂正放送の請求」の全文は次のとおりです。
東京都港区台場二丁目4番8号
株式会社フジテレビジョン
代表者 代表取締役
日 枝 久 殿
2003年9月18日
東京都渋谷区千駄ヶ谷四丁目26番7号
日 本 共 産 党
代表者 書記局長
市 田 忠 義
フジテレビ9月12日放送の「完全再現!北朝鮮拉致“25年目の真実”」において、下記のとおり真実でない事項の放送がおこなわれ、日本共産党の名誉が毀損(きそん)され、視聴者に多大の誤解をあたえた。よって、放送法第4条による、訂正放送をただちにおこなうよう請求する。
1 兵本達吉氏の日本共産党からの除名にかんしては、警備公安警察の関係者に就職のあっせんをもとめたのが真実の理由であるが、番組ではそのことはいっさいのべられず、「拉致問題」が理由であるとの放送がされた。
2 日本共産党は北朝鮮による日本人の拉致行為の問題について、その解決に早くからとりくんできたが、放送では兵本氏の活動だけが日本共産党の活動のようにあつかわれたうえ、兵本氏の除名理由を「拉致問題」として報道したこととあいまって、日本共産党が拉致問題の解明を妨害したかのように描かれた。
この虚偽の内容は、以下「訂正放送請求の理由」にのべるとおりである。
なお、上記事実を説明する資料として、『北朝鮮問題 「反省」すべきは公明党ではないのか』(日本共産党発行)、「兵本達吉氏はなぜ除名されたか ある雑誌での一文について」(「しんぶん赤旗」1998年12月1日付)、「『ノンフィクションドラマ』をうたった番組は日本共産党にかんする事実をどう偽ったか」(「しんぶん赤旗」2003年9月17日付)、および「通知書」(1998年8月27日付で兵本達吉氏あてに除名処分を伝達したもの)を添付する。
1 フジテレビ9月12日放送の「完全再現!北朝鮮拉致“25年目の真実”」は、その全体の企画意図はおくとしても、兵本達吉氏の活動と日本共産党の拉致問題への取り組みにかんしては、まったく虚偽の内容である。とくに、兵本達吉氏の除名については、1998年5月に東京・赤坂の料理屋で警察庁の警備公安警察官と会食し、かれが国会議員秘書を退職した後の「就職」あっせんをしてもらうための「面接」をしていたことが、日本共産党の規律にふれたとして除名になったのが真相である。これは、同年12月1日付の「しんぶん赤旗」に掲載されているとおりである。
番組は、兵本達吉氏役とその妻役の俳優に「党を首になるかもしれない」「拉致問題ですね」「あー」という会話をさせて、除名の理由が拉致問題にあるとのべている。しかし、拉致問題では、日本共産党は1980年代の後半から取り組んでおり、国会質問もあいついでおこなっている。兵本氏も1998年の上記時期まで拉致問題にかかわってきており、いうまでもないが、なんら規律問題になっていない。
日本共産党では、日本共産党の党内にスパイを送り込んだり、党員から情報を獲得しようと卑劣な手段をとる警備公安警察にたいする態度にはとくに注意をはらっており、個人的に接触することが禁止されているのは当然のことである。
この兵本氏の除名理由を真実に反して描くことが、日本共産党の拉致問題にたいする後述の虚偽を報道することにつながっており、日本共産党の名誉を著しくそこなうことになっている。その意味で、兵本氏の除名についてまったく間違った報道をした点での訂正放送をただちにおこなうよう、つよく求めるものである。
2 さらに、上記放送は日本共産党が拉致問題に積極的な役割をはたしてきたことについては、ほとんどふれられていないだけでなく、拉致問題の解明を妨害したかのような虚偽の報道に終始している。この点について以下、詳述する。
3 兵本氏が橋本敦参議院議員の秘書として拉致問題の調査・解明にあたったのは事実である。しかし、それは日本共産党国会議員団の方針にもとづき、その指揮下において活動をなしたものであって、兵本氏が独自の立場で自由に活動したものではない。そのことは組織政党として統一した方針のもとに活動する日本共産党としては当然のことである。まして、拉致問題というのは国際問題であるから、一秘書が自分の勝手な判断で行動できるものではない。
番組のナレーションで「(国会)質問の内容を考えるのも兵本の仕事」などとのべている。しかし、日本共産党では国会質問をどのようなテーマ、どのような内容でやるかは、当該の国会議員を中心にかならず集団的な検討を経て議員の責任でおこなうのであって、秘書が用意した質問をそのまま議員が読み上げるようなことは絶対にない。
4 日本共産党が拉致問題の解明に積極的であって、その解明を妨害した事実はいっさいない。
それは、日本共産党が、北朝鮮の金日成個人崇拝を外国におしつけるようになった1970年代から、それに強く反対し、また北朝鮮の国際的犯罪であるラングーン爆破事件(1983年)、日本漁船銃撃事件(84年)、大韓航空機爆破事件(87年)などにたいしても、いちはやくきびしい批判を発表し、国際的無法や日本国民への権利侵害・主権侵害を決してゆるさないという態度を堅持してきたことにしめされるとおりである。
5 拉致問題そのものでも、1988年の橋本敦参議院議員の質問で、北朝鮮による拉致という疑惑の存在を政府に確認させて、事態の解明に重要な一歩をふみださせたのをはじめ、事態の解明をすすめない警察当局に毅然(きぜん)として捜査をもとめた諌山博参議院議員の質問(1990年)、横田めぐみさん事件をとりあげた橋本参議院議員の質問(97年)、拉致をめぐる日朝交渉の現状をただした木島日出夫衆議院議員の質問(98年)など、真相解明と事態打開に奮闘してきた。さらに99年には不破哲三委員長(当時)が衆議院の代表質問で2度にわたり、拉致問題をふくむ日朝間の諸懸案を一括してとり上げるという現実的方策をしめして交渉ルートをひらくことを提案、この不破質問が契機となって、2000年4月からの日朝国交正常化交渉、2002年9月の日朝首脳会談へつながるものとなったのである。
したがって、日本共産党が拉致問題に消極的ないし妨害的であったかのごとき報道には明確な訂正が必要である。
6 なお、番組はその広報資料で、「関係者に150時間にも及ぶインタビューをおこない」「すべてのシーンが事実の裏付けをとっている」と書いている。しかし、日本共産党員の除名などの問題もふくめて、当然関係者である日本共産党にたいする問い合わせなどはまったくなく、その結果として虚偽の報道をおこなって日本共産党に重大な名誉毀損をあたえたことは許せない。あらためて、ただちに訂正放送をおこなうことをつよく求めるものである。
▼放送法第三条の二
放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと
二 政治的に公平であること
三 報道は事実をまげないですること
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
▼第四条
放送事業者が真実でない事項の放送をしたという理由によつて、その放送により権利の侵害を受けた本人又はその直接関係人から、放送のあつた日から三箇月以内に請求があつたときは、放送事業者は、遅滞なくその放送をした事項が真実でないかどうかを調査して、その真実でないことが判明したときは、判明した日から二日以内に、その放送をした放送設備と同等の放送設備により、相当の方法で、訂正又は取消しの放送をしなければならない。