2003年9月19日(金)「しんぶん赤旗」
消費税率を10%以上の二ケタに引き上げよとの大合唱がはじまっています。天下の悪税である消費税の廃止を一貫して求めている日本共産党は「いま暮らしも経済も破壊する消費税大増税が強行されようとしているもとで、それに反対する一点での広大な国民的共同とたたかい」(第二十三回党大会決議案)をよびかけています。
財界が、二〇〇七年度までに消費税は10%に、一四年度からは16%になどと提言すれば、政府税調も「二桁(けた)の税率に引き上げる必要もあろう」と小泉純一郎首相に答申。小泉首相は「在任中は引き上げない」と繰り返しながら、「私が行革をやれば、後の人が(消費税引き上げを)やりやすくなる」といい、まず社会保障の給付削減・国民負担増などをいっそう進めた上で消費税の増税をと道筋を描いてみせます。塩川正十郎財務相も「(首相は)将来上げないとはいっていない」と解説。〇七年度に引き上げるとすれば、〇六年度には法律の手当てが必要だとしています。
消費税は税率1%で年約二兆五千億円の税収(国民一人当たり年約二万円の負担)となります。10%なら約二十五兆円、四人家族で年約八十万円の負担(約四十万円の負担増)となります。総務省の家計調査によると、勤労者世帯の一カ月平均の消費支出が三十三万円程度(〇二年、一世帯三・四六人)ですから、二カ月分の消費支出をはるかに超える額です。
消費税は、所得にかかわりなく、買い物のたびに税金がかかります。このため消費税は所得が少ない人ほど負担が重くのしかかる最悪の不公平税制です。
年収二百万円未満の人と年収千五百万円以上の人の消費税の負担率の差は、税率5%で2・8ポイントですが、日本経団連が提唱する税率16%だと9ポイントまで格差が広がる−―日本共産党の佐々木憲昭衆院議員の追及に塩川財務相は「消費税の性格上、(低所得者ほど負担が重い)逆進性は包含されている」と認めざるを得ませんでした(一月二十四日、衆院予算委員会)。
厚生労働省の調査をみても、日本は貧富の格差が急速に広がっています。消費税の税率引き上げは、低所得者への負担をいっそうひどくし、貧富の格差に追い打ちをかけます。
消費税は、税を価格に転嫁しきれず、身銭を切って納税している、多くの中小零細企業にとって営業破壊税です。
経済産業省の「中小企業における消費税実態調査」(〇二年八、九月実施)によると、売上高が少なくなるほど消費税を価格に転嫁できないことがわかりました。年間の売上高が一千万円超千五百万円以下の事業者で消費税を全部価格に転嫁できずに「損税」を出している事業者は56・3%にのぼります。
消費税が景気破壊税であることは、一九九七年の消費税増税をはじめとした九兆円の負担増が、弱々しい足取りながらも回復をはじめていた日本経済をどん底に陥れた経験からも明らかです。
いまはもっと深刻です。日銀が半年ごとに実施している「生活意識に関するアンケート調査」(三月実施)によると、暮らし向きが一年前と比べ「苦しくなってきた」が54・4%と最悪になりました。一年前と比べ支出を「減らしている」も最悪の指数。理由は仕事、収入、社会保障などの将来不安です。大増税計画はもってのほかです。
小泉内閣や財界がいう消費税増税は「社会保障の財源のため」との口実は成り立ちません。
消費税導入から十四年間の税収の累計は百三十六兆円にのぼりますが、同じ時期に法人三税の税収は累計で百三十一兆円も減っています。
法人税の減収は、景気低迷だけが原因ではありません。消費税が導入され税率が3%から5%に引き上げられる一方で、大企業などが納める法人税の減税がくりかえされてきた結果です。庶民から吸い上げられた消費税は、大企業への減税の財源としてのみ込まれてしまった形です。
日本経団連の提言でも、消費税の大増税と、法人税は「大幅に引き下げていくべきだ」との要求がセットで打ち出されています。「社会保障の財源のため」ではなく「大企業の税負担のいっそうの軽減のため」というのが真実です。
「朝日」世論調査(六月十八日付)でも、社会保障財源を補うための消費税率の引き上げに賛成は28%にとどまり、反対が64%にのぼりました。国民の多くが「社会保障のため」というごまかしを見抜いています。
■「2004年度から毎年1%ずつ税率を引き上げた場合、2014年度から先は、消費税率を16%に据え置くことが可能」
(日本経団連の提言、1月1日)
■「遅くとも2007年度までに、地方消費税とあわせて10%までに引き上げることは不可欠」
(日本経団連の提言、9月12日)
■「消費税を最終的に(2020年度以降)20%未満(19%)に抑制することが可能」
(経済同友会の提言、2月27日)
■「(消費税は)二桁の税率に引き上げる必要もあろう」
(政府税調の中期答申、6月17日)
■「10%は最低だろう」(石弘光政府税調会長、7月6日、民放テレビ番組)
■「議論はタブー視せずやってほしい」「私が行革をやれば、後の人が(消費税引き上げを)やりやすくなる」(小泉純一郎首相、6月17日、石政府税調会長に)
■「首相は、将来上げないとはいっていない。(次の任期後の)07年度に上げるとすれば、06年度には法律の手当てが必要だ」(塩川正十郎財務相、5月25日、財政制度等審議会の地方公聴会)