2003年9月18日(木)「しんぶん赤旗」
率直にいって、会談に現れた時の外相の表情には、明らかに大会での疲労の蓄積が刻まれていた。多くの国の多数の政党代表団が集まった大会だから、この間の外交活動の過密ぶりは想像にあまりある。しかし、話が国際問題の核心にせまるとともに、外相の表情が変化してくるのが、ありありと読みとれる。
私は、話を続けた。
不破 ベンアリ大統領の大会報告を聞いて、国際政治にのぞむ立場に多くの共通点があることを感じた。
一つはイラク問題。アメリカの一方的な戦争に反対という点では、以前から両党の立場は共通していたと思う。アメリカは軍事的に勝利したが、軍事的勝利と政治的勝利とは別問題だ。アメリカにとって、イラクの情勢自体が困難になっていることにくわえ、戦争と占領をおこなったアメリカもイギリスも、国際政治と国内政治の両面で困難な立場におちいっている。イラクの再建にあたっては、大統領演説にあったように、イラクの主権の尊重と領土の保全が当然の大問題になる。
二つ目は、パレスチナ・イスラエルの紛争問題。あなたがたは、早い時期から、パレスチナの独立国家の樹立とともに、イスラエルの国家的存在を認めるという、二つの国家の共存を軸にした解決という方向を提起してきた、とうかがっている。三年前に東京でお会いした際にも話したように、私たちも七〇年代から、パレスチナとイスラエルの二つの国家の共存という方向を主張してきた。
いま、二つの国家の共存を解決の目標とするということは、どちらの側からも否定されえないものとなっている。しかし、そこに実際に到達するには、多くの困難がある。いろいろな解決策が出されるものの、提案した当人がそれを困難にするといった傾向がある。以前からこの問題に深くかかわってきたあなた方が、問題の現状および解決の道筋について、どのように認識しているのか、うかがいたいと思う。
私は、アメリカのイラク戦争が脅かしている国連憲章と国際秩序の問題に話をすすめた。
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不破 最後に、より広い世界の問題、国連憲章にもとづく国際秩序の問題がある。私たちは、新しい綱領案で、この問題を国際課題の第一にあげた。アメリカのイラク攻撃の特別の重大性は、それが公然とこの秩序を破っておこなわれたことにあった。こういう行為が放任されれば、世界は、二十一世紀に、各国が依拠すべき基準を失ってしまう。
世界各国の政府と民衆運動は、「戦争反対」と同時に、「国連憲章をまもれ」というスローガンをかかげた。私は、国連憲章の問題が、これだけ多くの政府と民衆運動の共通の認識となり、また目標となったことは、歴史上初めてのことだと思う。二十世紀後半には、いろいろな侵略戦争があった。しかし、ベトナム戦争のときにも、ソ連のアフガニスタン侵略のときにも、国連が活動する余地はなかった。今回、イラク戦争にさいして、はじめて、戦争反対の声が「国連憲章をまもれ」の声と重なった。ここには、二十一世紀の世界政治に取り組むにあたっての力強い足場があると思う。
日本の国内にも、“あれだけ反対したのに結局は戦争になった。国連は無力だ”という声が一部にある。しかし、私たちは、各国政府と民衆運動とが、文明の違いをこえて、国連憲章を基礎に戦争反対でこれほど一致したことは、かつてなかったものだと考えている。そういうなかで、大統領が、国連憲章にもとづく秩序の問題に言及するのを聞いて、たいへん力強く思った。
最後に、とりあげたのは、私たちのイスラム諸国との外交の問題である。
不破 私たちはこの間、イスラム諸国との関係を広げるために最大限の努力をしてきた。それは、二十一世紀にイスラム諸国がさらに重要な役割を果たすであろうこと、イスラム世界と密接な関係をもつことが重要なことを、認識しているからだ。
招待を受けて今回の大会に参加し、チュニジアのイスラム世界における位置、またイスラム世界とヨーロッパをつなぐ役割を、まだ第一歩ではあるが、理解することができた。奥行きの深い、多層にわたるチュニジアの歴史と文化を理解することは大仕事だが、今後その仕事を進める上でも、多くの刺激をうけたことに感謝したい。(つづく)