2003年9月14日(日)「しんぶん赤旗」
暮らしと経済の大問題となっている雇用不安の拡大。この対策は総選挙の一大争点です。日本共産党は一日、「安定した雇用を増やし、雇用危機を打開するための四つの緊急提案」を発表しました(全文は二日付)。問題の解決にむけ、立場の違いを超えて知恵と力を合わせようと、総選挙候補らを先頭に申し入れ・対話も始まっています。「緊急提案」のポイントは−。
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党の緊急提案は長時間労働、サービス残業(ただ働き)をなくし、新規雇用を増やす本格的な取り組みを呼びかけています。
労働者が過労死ラインといわれる週六十時間以上働いている人は五人に一人(2003年版「厚労省白書」)。48%の労働者がサービス残業をさせられており、その平均時間は一カ月約三十時間にもなっています(2002年連合調査)。
第一生命経済研究所の試算では、サービス残業をゼロ(実労働時間は5%減)にして新規雇用に替えれば、百六十万人以上の常勤雇用者が生まれます。実質GDP(国内総生産)も、国民の所得と消費が増えて2・5%のプラスに。
タダで残業させるのは犯罪。横暴なリストラで巨大な利益をあげている大企業の責任は重大です。政府は、本格的に指導と対策に取り組むべきです。
緊急提案は、「サービス残業を繰り返しやらせる悪質な企業は、会社名の公表など違法行為の実態を消費者、投資家にも広く知らせるようにします。サービス残業の温床になっている残業時間の『自主申告制』を原則禁止し、入退社時間の記録など労働時間管理を徹底します」と述べています。
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大企業の乱暴なリストラが就職難と「フリーター」急増の大きな原因です。今年の「国民生活白書」も「企業側の要因が大きい」と書きました。
しかし、小泉・自公内閣はもっぱら若者に「自立・挑戦」を促すだけで、「企業側」への対策は極めて不十分です。
党の緊急提案は、「大企業は、新規採用の抑制を中止し、若者を正社員として雇用して、就職難と『フリーター』急増に歯止めをかけるべきです」「政府は、大企業に若者の雇用責任をはたすよう、強力に働きかけるべきです」と、ずばり述べています。
また、(1)派遣労働者が一年間同じ事業所で働いている場合、常用雇用にすることを努力義務にとどめている労働者派遣事業法の規定を、義務に格上げする、(2)職業訓練期間の生活保障のため、有給訓練や貸し付け制度の創設−など、若者の実態、要求にこたえ具体的提案もしています。
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福祉、医療、防災、教育など、国民生活に必要な分野は、人手不足が深刻です。住民サービスの低下も起こっています。
党の緊急提案は、この人手不足の解消を計画的に進め、雇用を増やすとしました。
保育士、看護師、介護士、消防士、教員の雇用増を挙げています。
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地方での雇用計画への国の財政的な支援は、ごく一部に限定されています。地方からは「国の施策は、建物への助成はあっても、人に対する支援はほとんどない」という声があがっています。
緊急提案では、地場産業の後継ぎのための職業訓練、高卒者採用企業への助成、介護や福祉サービス向上と合わせた雇用創出、町おこしや中小企業支援と一体となった雇用対策など、地域の実情にあった雇用拡大策への国の支援強化を求めています。
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失業率は〇一年七月以来、連続して5%台を記録するなど、雇用情勢は深刻です。最大の要因は、この間、自公政権、小泉内閣が「構造改革」をすすめ、大企業のリストラを支援してきたからです。 上位5社には大銀行ズラリ一九九九年に自民、公明、自由の三党が強行した産業再生法は、リストラをおこなう企業に減税などの支援をするものでした。同法適用により減税見込み額は八百億円を超えます。減税された上位五社には、「みずほフィナンシャルグループ」をはじめ大銀行が名を連ね、減税額は四百九十五億円、二万人を超える人減らし計画が実行されています。 さらに、ことし四月には、複数の企業による一体的なリストラ支援策を盛り込んだ「改正」産業再生法が、自民、公明、保守新の与党と民主党の賛成で成立しました。 「解雇しやすく」不安定雇用増す小泉内閣は、発足直後に、「二―三年の期限付きの雇用ができたり、社員を解雇しやすくすれば、企業はもっと人を雇うことができる」(小泉首相、〇一年五月)として、リストラ促進のための労働法制改悪の方針を打ち出しました。 先の通常国会では、派遣労働者の派遣期間を延長し、製造業への派遣を解禁する労働者派遣法改悪が自民、公明、保守新の賛成で成立。パートや契約社員を解雇しやすくし、サービス残業を広げる労働基準法改悪も与党と民主、自由の賛成で成立しました。 失業給付下げ 保険料引上げ自公政権は、失業者を増やすだけでなく、失業者の生活を破壊する雇用保険法改悪を相次いで実施しました。 〇〇年四月に自民、公明、保守、民主の賛成で成立した雇用保険法改悪では、失業給付日数を減らし、給付を五千億円分削減、保険料は四千億円分引き上げられました。さらに、ことし四月に与党三党が強行した法改悪では、雇用保険の基本手当の給付率の下限が60%から50%へ引き下げられました。保険料も二年後の引き上げが決まっています。 日本共産党は、労働法制改悪をはじめとした一連のリストラ支援法に反対し、労働者の雇用と生活をまもるため、全力をあげています。
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日本共産党の衆院候補は全国で、雇用危機打開のための「緊急提案」の中身で宣伝、大きな反響を呼んでいます。特に「青年に仕事を」という訴えには、世代を超えた共感が寄せられているのが特徴です。
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○…衆院比例東北ブロックの佐藤秀樹候補がJRいわき駅前で演説していたときのこと。高校生がたくさんいるので就職難の問題を話し始めました。すると、それまで「うるさいな」とヤジも聞こえていたのが、いっせいに注目。あちこちで手を振って声援してくれる高校生の姿が見られました。
○…「若者の就職難は親にとっても深刻な問題。働く意欲があっても仕事がない一方、体を壊すのではないかと心配になるような働き方がまかり通っている。こんな世の中でいいのか」という訴えが共感を呼んでいるのは、自身も大学生と高校生の子を持つ岡山二区の尾崎ひろ子候補。支部や後援会も、青年の雇用問題を特集した「後援会ニュース」を使うと、どんどん対話になるといいます。
○…候補者と各地の党組織が「緊急提案」を持ち、さまざまな団体を訪問し、共同を申し入れる活動も始まっています。
福岡県の中央・南地区委員会と行徳しゅうじ・二区候補は十日、マスコミや国家公務員関係など約三十の労組を訪問。「緊急提案」の内容を紹介しながら、来月開催予定の「雇用・リストラシンポジウム」への参加を案内し、どこでも高い関心が示されました。
○…島根一区の上代善雄候補は、松江市内の商業高校やハローワークを訪れました。「企業開拓に歩いても、高校生は採用しないという企業もある。県はもっと高校生を採用してほしい」という先生や、ハローワークでは「職員が手分けして事業所に高校生の思いを訴えて回っている」など、深刻な実態と要求が出されました。