日本共産党

2003年9月12日(金)「しんぶん赤旗」

企業・団体献金に依存、ゆがむ政治

2002年 政治資金収支報告


126億円「ぬれ手でアワ」

医薬業界など百万単位で

パーティー収入

 二〇〇二年の政治資金パーティーによる収入は総額百二十六億三千二百万円で、過去最高となった昨年の百三十六億千八百万円を約十億円(7・5%)下回りました。収入全体に占めるパーティー収入の割合は9・3%で、昨年の8・7%を上回りました。

 深刻化する経済状況のもとで一夜にして巨額の資金を集める有力な手段となっています。

 たとえば、橋本派は一回のパーティーで二億二千百十六万円の純益をあげました。元手がほとんどかからない“ぬれ手でアワ”の金集めです。

 上位二十団体を見ると、自民党派閥や有力議員の団体が大半を占めます。民主党のほか、自由党党首の小沢一郎氏も上位にいます。

 パーティー収入トップの平沼会(平沼赳夫経済産業相の資金管理団体)は、政治資金収入の約六割をパーティーで集めており、日本医師会の百六十万円や地元企業の大口支払いが目立ちます。中川秀直自民党国会対策委員長の「秀政会」も八回パーティーを開催。山崎拓自民党幹事長の「拓政会」は日本医師連盟(三百五十万円)、製薬産業政治連盟(二百万円)など医薬業界によるパーティー券の大口購入が目立ちます。こうした実態は、パーティー収入が形を変えた企業献金であることを示しています。一方、特定パーティーの券購入先が明らかにされているのは製薬産業政治連盟を除く上位九団体で収入総額の13・1%にとどまり、依然不透明です。


亀井氏、青木氏、中川昭氏…

政党支部をトンネルに

企業・団体献金の迂回

 二〇〇〇年から政治家個人(資金管理団体)への企業・団体献金が禁止されたことから、政治家が代表を務める政党支部が企業・団体献金の受け皿となっています。そこから政治家個人の資金管理団体へ資金が流れています。(表)

 自民党の中川昭一衆院議員の資金管理団体「昭友会」に北海道第十一選挙区支部から七千二百十八万円を還流。政党支部を迂回(うかい)して巨額の企業・団体献金を集めている政治家には、亀井静香前自民党政調会長、綿貫民輔衆院議長、青木幹雄参院幹事長など自民党の有力議員がズラリと並んでいます。

 このうち、亀井氏の場合は、広島県第六選挙区支部から七千万円を迂回させているほか、「九州亀井静香後援会」「北海道亀井静香後援会」など、四つの政治団体を通じて自分の資金管理団体に四千万円以上の資金を集めています。中川昭一氏も「中川昭一札幌後援会」「中川会」などの中央・地方の政治団体から約四千四百万円の資金を自らの資金管理団体に集めています。

 一方、平沼赳夫経済産業相は「平沼会」で四億五千万円集めていますが代表を務める岡山県第三選挙区支部代表からの還流はありません。中川秀直自民党国会対策委員長も同様で、企業・団体献金は政党支部にとめておいて、資金管理団体とは“別のサイフ”にしているとみられます。


予定利率下げの裏で

9社4千万円 破たんの会社も

生保からの自民献金

 自民党は、生命保険会社の業績低迷を理由に生保予定利率引き下げを認める保険業法改悪を強行しました。その一方で、“業績悪化”のはずの生保会社から多額の献金を受け取り続けています。

 二〇〇二年度政治資金収支報告書によると、同党に百万円以上の献金をしている生保会社は、日本生命(千百八十九万円)、第一生命(八百四十万円)など九社。総額四千百万円にものぼっています。

 一九九二年から二〇〇一年までの十年間に、自民党が生保会社から受け取った献金は十三億八千五百万円。そのなかには赤字続きで破たんした会社も含まれていました。国民には保険金、年金引き下げなどの不安を与え、生命保険への不信感を広げながら、自らは業績悪化の生保会社から巨額の献金を受け取り続けています。


自民党総裁選候補

資金源は政治連盟、派閥

 自民党総裁選に立候補している4候補の政治資金を資金管理団体の収入から見ると、政治連盟や政党支部、派閥からの寄付に大きく頼っていることが分かります。

 資金管理団体向けの企業・団体献金は禁止ですが、地元の都道府県選管に届け出る政治団体や政党支部では受けられます。今回の公表では地方分が入っていないため、全体像は分かりません。

 小泉純一郎氏は収入4311万円のうち、健康保険政治連盟と製薬産業政治連盟からそれぞれ400万円、日本薬業政治連盟300万円など、製薬産業関係から引き続き多額の献金を計1100万円集めています。前年に500万円だった日本医師連盟などの献金が2002年はなくなっています。

 モーニングセミナー7回や懇親会などこまめに政治資金パーティーを開催し、2562万円を得ました。

 藤井孝男氏の収入は9671万円。代表を務める自民党岐阜県第四選挙区支部から1142万円の“寄付”を受けるなど政党支部を献金のトンネルにしています。セミナー3回で8040万円を集めました。

 4人の中で集金力トップの亀井静香氏は収入が2億2381万円。自民党広島県第六選挙区支部7000万円、派閥から8063万円を還流させ、北海道や九州などの後援会・政治団体から計2億83万円を集めています。

 高村正彦氏は収入7884万円のうち、政治資金パーティー(2回)が5106万円。政治団体の寄付では、派閥から1167万円を受けたほか、日本医師連盟から160万円(パーティー券含む)、日本歯科医師連盟から200万円(同)など計1817万円を集めています。

派閥の資金

トップは橋本派 パーティー収入5〜8割

 自民党の7派閥・1グループが2002年に集めた政治資金は18億9374万円。全体では前年比1億3071万円減(前年は旧加藤派除く)ですが、堀内派は669万円、河野グループは801万円増やしました。どの派閥も大規模な政治資金パーティーを開き、収入の5割から8割をパーティーに頼っているのが特徴です。

 支出先では派閥所属議員(元職、新人含む)の資金管理団体や政党支部への寄付が多く、派閥と領袖の政治団体間で資金の出入りもあるなど、カネのつながりが密接です。収入金額順に見てみます。(カッコ内は収入全体に占めるパーティー収入の割合)

(1)橋本派

 収入はトップの4億867万円で、パーティー収入が2億5765万円(63%)。集めた資金から43人に1人当たり100万〜400万円を配って計1億3500万円支出しました。

(2)森派

 収入は3億2052万円。パーティー収入は2万円の券を1万人余売り上げ、2億1738万円(68%)。所属議員1人に対し400万円を渡しました。

(3)堀内派

 収入は3億1337万円で、パーティー収入(2回)が2億2224万円(71%)。支出では23人に計1億148万円を配っています。

(4)江藤・亀井派

 収入は2億8188万円で、パーティー収入は1億4948万円(53%)。支出では24人に計2億595万円を配りました。副会長の伊吹文明衆院議員の資金管理団体に900万円を支出する一方、伊吹氏から派閥へ2000万円の寄付がありました。

(5)山崎派

 収入2億3507万円のうち、パーティー収入が1億1322万円(48%)。15人に5200万円を寄付しました。

(6)高村派

 収入は1億4192万円で、うち1億754万円(76%)がパーティーによるもの。14人に計5322万円を寄付しました。会長の高村氏の資金管理団体には1167万円が流れ、高村氏から派閥へ1600万円の寄付がありました。

(7)旧加藤派

 加藤紘一元幹事長が02年4月に議員辞職し、収入は1億3205万円。同年7月に開いたパーティーで1億787万円(82%)を集めました。10人に対し7150万円を配りました。

(8)河野グループ

 収入6026万円のうちパーティー収入が4832万円(80%)。12人に対し計2590万円を支出しました。


各党の特徴は

●自民党―――党費納入者70万人減

 収入は二百二十九億二千五百六十九万円で、前年比十五億二百五十一万円減。政党助成金の百五十一億六千三百九十五万円(66・1%)を筆頭に、企業・団体献金三十二億五千百六十八万円(14・2%)、参院選のあった二〇〇一年に比べて党員数が七十万九千六百人減ったため、党費十一億三千三百九十一万円(4・9%)と続きます。

 事業収入は小泉内閣発足の〇一年に比べ、「総裁グッズ」代が二億六百万円減るなど、総額で三億七百二十一万円減の五億七千五十八万円(2・5%)となりました。

 企業・団体献金はすべて政治資金団体の国民政治協会を経由したもの。同協会では日本自動車工業会(八千四十万円)、日本鉄鋼連盟(八千万円)、トヨタ自動車(六千四百四十万円)などの企業・団体から二十五億五千七百三万円、日本医師連盟二億三千三百五十万円、日本歯科医師連盟四億六千三百万円などの政治団体から十一億二千四百六万円を集めました。

●公明党―――企業・団体献金増

 収入は百五十三億八千四百八万円で、前年より十八億三千二百九十二万円減らしました。内訳は事業収入九十五億千九百二十万円(61・9%)、政党助成金二十九億六百十五万円(18・9%)、党費十一億三百八十一万円(7・2%)など。

 前年にはなかった政治資金団体の公明政治協会から三億三百十二万円の寄付を受け、大成建設からの十二万円を含めて企業・団体献金の割合が2%になりました。

●民主党―――2億円パーティー

 収入は百六億六千五十八万円で、前年比三億九千二百十三万円減。事務処理上の都合で政治資金団体の国民改革協議会から〇二年の献金はなく、パーティー収入を除く企業・団体献金は連合からの百万円だけです。

 主な収入源は、政党助成金八十七億千八百八十八万円(81・8%)、「民主党大躍進パーティー」などの事業収入二億五千五百九十五万円(2・4%)。〇二年九月の党代表選の際に登録料千円を払えば投票できるサポーターを募り、昨年ゼロだった党費収入を三億千四百一万円(2・9%)計上しました。

●社民党―――党費収入さらに減

 収入は三十三億六百七十五万円で、前年より七億千五百十万円減。政党助成金は三億六千百五十八万円減って十七億九千百九十九万円(54・2%)ですが、依然、収入の半数を超えます。事業収入は四千二十一万円減の七億五百七十六万円(21・3%)。党費収入は五千六百八十四万円減の三億二百十八万円(9・1%)と、四年間で人数が約一万二千人分、金額が約二億四千万円減りました。

●自由党―――9割近くが助成金

 収入は二十二億千八百四十四万円で、前年比十億五千八百八十七万円減。個人献金が二百二十四万円減って十三万円になったのをはじめ、党費収入が三十八万円減の四百三十四万円(0・2%)、事業収入が千二百十一万円減の五百八万円(0・2%)と軒並み縮小しました。収入のほとんどが政党助成金十九億六千八百七十九万円(88・7%)となっています。

●保守新党―――旧保守党を引継ぎ

 〇二年十二月二十三日に解散届を出した三日後、新党を設立。

 政党助成金の算定基準が一月一日時点であることから、助成金目当てに年内結成を急いだものです。

 保守新党としての収入は旧保守党(収入五億七千六十八万円)から引き継いだ分など三億四千九百四十二万円。〇二年の旧保守党の収入はパーティー開催もなく、政党助成金四億四千九百八十五万円(78・8%)が主でした。


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