2003年9月12日(金)「しんぶん赤旗」
一九九五年に制度が始まって以降、今年七月までの交付を含めた八年半の間に日本共産党以外の各党が受け取った政党助成金の総額は、二千六百五十億円にものぼります。各党は年々、助成金への依存を強めてきました。
自民党の収入に占める助成金の割合は九五年56・7%、九六年52・6%、九七年57・4%、九八年52・5%、九九年59・5%、二〇〇〇年53・6%、〇一年59・5%と変化してきましたが、今回公表の〇二年では66・1%で、初めて六割台になりました。
民主党は旧民主党時代の九六、九七年は10・6%、48・9%でしたが、九八年には58・8%となり、九九年82%、〇〇年69・6%、〇一年76%、〇二年は81・8%と依存度を急速に高めています。
税金を分け取りし、企業・団体献金との二重取りが止まらない状況に、全国三町一村で廃止を要求する意見書があがり、「国民は唯々諾々(いいだくだく)と承服できるものではない」(奈良県上牧町議会の意見書)との批判が広がっています。
〇一年参院選での自民党の比例得票数は二千百十一万票でした。しかし、助成金交付金額を国民一人あたり算出の二百五十円で割ると六千六十六万人分に相当し、実際の支持票より三千九百五十五万人分も多く受け取っていることになります。
交付された助成金のうち、使い残した部分を積み立てる「基金」残高は〇一年末より百五億四千十一万円も増え、百五十九億七千二百八十九万円もためこんでいます。通常であれば残額は国庫に返還されるべきですが、基金という形で政党が丸ごと懐に入れているのが実情です。
政党助成金の支出総額は、二百十三億四千七百万円で前年比56・8%の大幅減です。支出先でみると、自民党は「大会費」にホテル代の千八百八十七万円を含めて三千二百十六万円を支出。同じく民主党が千八百十万円、公明党が六百七十九万円、自由党が千九百五万円を大会運営費や会場費として使っています。
“税金で税金を払う”状況を続けているのは、自民、公明、民主の三党。自民党は、本部が東京都自動車税総合事務所に約三十八万円、千代田都税事務所に千五百九十六万円を政党助成金で支払っています。公明党、民主党の支部も、自動車税の支払いに政党助成金をあてています。
自民党では「備品・消耗品費」「事務所費」などの項目で、合わせて十一億九千四百二万円が支出されています。
民主党本部は、家賃や税務顧問料や社労士顧問料なども含めた「事務所費」計二億四千八百六十七万円を助成金でまかなっています。
公共事業をめぐる口利き事件が相次ぐなか、自民党は、国や地方自治体の公共事業を受注しているゼネコンから相変わらず多額の献金を受け取っていることが、二〇〇二年の政治資金収支報告書から明らかになりました。
献金額が二千二百九十一万円とゼネコンのなかでは最も多い前田建設工業と、二番目に多い清水建設(千六百九十一万円)は、ともに公共事業受注企業です。売り上げに占める公共事業の割合(受注率)は前田建設工業が34・5%、清水建設が20・9%です。受注率73・9%の東洋建設も千五十五万円、66・1%の東亜建設工業も千五百五十五万円と多額の献金を行っています。
業績悪化などを理由に、株主への配当がゼロとなったにもかかわらず、自民党への献金を続けているゼネコンもあります。〇二年に無配当だったにもかかわらず、献金した企業は、東洋建設、浅沼組(七百九十五万円)などです。東洋建設は〇三年も無配です。
銀行から債権放棄を受けている元大手の熊谷組からの自民党への献金をめぐる株主代表訴訟で福井地裁は二月、「株主への配当に優先して寄付を行う」ことについて「注意義務違反」の判決を下しています。
株主に配当さえできない企業から献金を受け取る自民党の姿勢が厳しく問われています。
ゼネコン名 | 02年の額 | 受注率 | 無配当 |
前田建設工業 | 2291万円 | 34.5% | |
清水建設 | 1691万円 | 20.9 | |
五洋建設 | 1678万円 | 47.9 | 03年 |
西松建設 | 1678万円 | 27.7 | |
東亜建設工業 | 1555万円 | 66.1 | |
大成建設 | 1391万円 | 30.8 | |
戸田建設 | 1250万円 | 25.7 | |
鹿島 | 1196万円 | 26.5 | |
大林組 | 1191万円 | 26.6 | |
竹中工務店 | 1191万円 | 10.7 | |
東洋建設 | 1055万円 | 73.9 | 01〜03年 |
銭高組 | 935万円 | 44.8 | |
鴻池組 | 817万円 | 42.0 | |
浅沼組 | 795万円 | 32.4 | 02年 |
奥村組 | 615万円 | 45.7 | |
鉄建建設 | 435万円 | 30.1 | |
佐伯建設工業 | 261万円 | 73.0 |
日本共産党の政治資金収入は三百三十四億円で、数字上は政党の中で一番多くなっていますが、これは収入の85・3%の二百八十五億円にのぼる「しんぶん赤旗」の売り上げなど事業収入がどの党よりも多いためです。
機関紙誌を発行するためにかかる経費百九十八億円と借入金六億円を、報告上の収入から除くと、「実収入」は百三十億円となります。
これに対し、企業・団体献金や政党助成金に頼っている自民、民主、自由、社民の各党は、報告書の収入と実収入の差がほとんどみられません。
政治資金収支報告書は、政党や政治団体が政治資金規正法に基づき一年間の収入と支出を届け出たものです。年間五万円以上を献金した個人、企業名などを公開し、パーティーなど資金集めの収支も記載します。
収支報告書の提出先は、総務大臣と都道府県選挙管理委員会の二つがあります。前者は二つ以上の都道府県にわたって活動する政治団体と政党、政治資金団体などです。主要政党本部や政党の比例区支部、衆参国会議員の資金管理団体の多くが総務大臣に届け出ます。
都道府県の選挙管理委員会に届け出るのは、都道府県の区域で主に活動する政治団体です。代表的なのは政党の都道府県本部や衆参両院の選挙区支部などです。
今回公表されたのは総務大臣分ですが、政治資金収入の割合は一九九九年以降、都道府県選管分が半分を超えています。(グラフ)
政治家の資金管理団体への企業・団体献金が二〇〇〇年から禁止されたため、政治家は都道府県選管届け出の政党支部などで企業献金を受け取っています。このため、総務大臣分だけでは、政治資金全体の半分以下しか把握できず、政治資金の全体像は分かりません。総務省が都道府県選管分の集計を公表するのは十二月。両方とも概要は官報(公報)に掲載され、原本の閲覧もできます。