2003年9月7日(日)「しんぶん赤旗」
七人の死傷者まで出した三重県多度町のごみ固形燃料(RDF=注)焼却・発電施設の爆発事故をきっかけにRDF発電施設のさまざまな問題が露呈しています。ごみの分別・減量化に逆行するとの批判を受けながらも、「夢のリサイクル施設」とのふれこみで、野放しですすめられてきたRDF発電施設。県や第三セクターのもとで稼働している各地の施設でも火災事故などのトラブルが相次いでおり、国がすすめてきたごみ行政の広域化、大型化、RDF化が問われています。多度町と同様な施設をかかえる現地の様子をリポートします。
RDF 「Refuse Derived Fuel」(ごみ由来の燃料の意味)の略。家庭から出る生ごみやプラスチックなどの可燃ごみを細かく砕き、石灰を混ぜて、圧縮してつくった固体燃料。雑多なごみからつくるため、思わぬ化学反応でダイオキシンなどの有害物質を発生する危険性もかかえています。RDFを燃やして発電に利用しようというのがRDF発電です。RDFは技術的にも未成熟で、発電施設も安全基準がありません。 今回、深刻な爆発事故を起こした三重県多度町のRDF焼却・発電施設と同様に、国の補助(廃棄物発電促進対策など)をうけて建設された施設は多度町のほかに、福岡県大牟田市、広島県福山市、石川県志賀町、茨城県神栖町にあります。また、RDF製造施設は全国で五十七カ所あります。 |
広島・福山 |
「安全性に問題はない」として試運転(八月二十六日)が始まったばかりの広島県福山市箕沖町のRDF発電施設「福山リサイクル発電所」で三日目の二十九日には火災事故が発生、三重県多度町の類似施設で爆発事故を起こしているだけに、地元の住民からは「ほんとうに安全なのか。情報の公開を徹底してほしい」との声があがっています。
同施設は県がすすめる「びんごエコタウン」構想の中核。日量三百十四トンのRDFを燃やし、毎時二万キロhを発電出力するという大規模な施設です。福山市、廿日市市など県内十五市町村が参画し、七カ所の施設からRDFを福山市に搬入し、発電をします。サイロにはRDFがすでに八千トンも貯蔵されています。
同構想が市民や市議会に知らされたのは二〇〇〇年一月。「寝耳に水」でした。日本共産党は地元の住民とともに、安全性が未確立なRDF発電の環境問題などについて、学習や宣伝、申し入れ、公開質問状と多彩な活動をすすめ、市議会でもとりあげてきました。
今回の火災事故にたいしても、党市議団は原因の徹底究明、施設の総点検、事業の抜本的な見直しなどを県や市に求めています。
「環境問題は長期的にとりくむ必要がある」として、住民が結成した「ゴミ発電(RDF)ごみ問題を考える会」は今月二十七日、「ごみ発電は安全か」と題する学習会を開く予定です。
(村井あけみ市議)
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三重・多度 |
爆発事故を起こした「三重ごみ固形燃料(RDF)発電所」(三重県多度町)は、三重県企業庁が昨年十二月、全国に先駆けて稼働させたものです。
県は「資源循環型の夢のごみ処理システム」だと声高に宣伝してきましたが、日本共産党は当初から、安全性が実証されていないことや、コストが高いこと、何よりもごみの分別、減量に逆行することを指摘し、一貫して反対してきました。
県は安全性を強調し、売電の利益を見込んで無料でのRDF引き取りまで約束し、市町村にRDF化を押しつけました。
県内六十九市町村のうち二十六市町村が一般ごみのRDF化に踏み切りました。ごみは県内七カ所のRDF化施設で処理され、同発電所に運び込まれていました。
RDF発電はコストがかかりすぎ、採算が取れないことは、すぐに明らかになりました。県は発電所の稼働前には、有料でのRDF引き取りへと方針を変更。「話が違う」と各市町村の猛反発を招きました。
そして稼働後は、その直後からRDF貯蔵タンクの異常発熱や発電施設の故障などトラブルが連続。まともな運転ができないまま、今回の大事故に至ってしまいました。
企業の言いなりに新技術に飛びつき、安全管理も企業に丸投げして強引に事業を進めてきた県の責任は重大です。
発電がストップしたことで、県内には今、処理できないごみがあふれ、深刻な事態になっています。ごみ処理をよそへ委託しようにも、費用がかさむだけでなく、火力の強いRDFを焼却できるところは少なく、RDFにする前の生ごみも、カロリーを高めるためにプラスチックなどを混ぜてしまっていて、そのまま受け入れてはもらえません。分別・減量という本来の流れに逆行したごみ行政のツケが一気に噴き出しています。
(三重県・白瀬総彦記者)
福岡・大牟田 |
稼働中のRDF発電所としては国内最大規模の「大牟田リサイクル発電所」(福岡県大牟田市)。大牟田でも三回の事故が相次ぎ、市民から「もう事故はないだろうなと思った矢先に、三重県で爆発死亡事故だ」「大牟田はいったい大丈夫なのか」との心配の声があがっています。
同発電所は、福岡県や電源開発などでつくる第三セクターで運営し、RDFの処理能力一日三百十五トン、発電能力二万キロhという規模です。
RDF貯蔵サイロは、爆発事故を起こした三重県が四千立方メートルなのに対し、大牟田は一万四千立方メートルと三・五倍にもなります。
大牟田リサイクル発電所は、三重県と同じ昨年十二月に稼働。その直後のことし一月、五月、八月八日と三回にわたって事故を起こしています。
三回目の八月八日の事故は、RDFを燃やす炉内で、発電のために約五百度の高温の蒸気を送る伝熱管に穴があいたもので、発電所側が「心臓部でおきた」と語るものです。
日本共産党の小沢和秋衆院議員、福岡県議団、大牟田市議団らの調査で、発電所側はこの伝熱管は「六年で交換する計画」だったと説明しました。それが、稼働期間わずか六カ月で摩耗し、穴があいたわけで、当初計画の十二倍の速さで摩耗したことが明らかになりました。
同時にもう一つの問題は、一日四十トン近く発生する焼却灰の処理です。
ダイオキシン発生源である塩化ビニール製品を取り除かないで燃焼させるのがRDF発電の特徴で、焼却に伴って発生するダイオキシンの大部分は焼却灰と飛灰にふくまれるといわれています。
焼却灰処理の計画が狂った結果、ダイオキシンなどの安全性を無視して、大牟田市長は、焼却灰を八月から大牟田市の最終処分場へ埋め立てると発表。福岡県も「RDF発電事業はいっときの遅滞もなくすすめなければいけない」とのべています。
日本共産党は、市民に呼びかけて、発電所や最終処分場の現地調査をするなど、「安全上も事業上も確立されたものではない」と中止を求めてきました。九月議会でも大きなテーマの一つに位置付けて、県・市の対応・対策を追及する予定です。
(西部総局・山本弘之記者)