2003年9月3日(水)「しんぶん赤旗」
北朝鮮問題を利用して日本共産党を中傷攻撃した謀略本の著者は創価学会活動家で、三つの名前を使いわけ日本共産党や反創価学会の人物を攻撃、社会党(現社民党)機関紙「社会新報」記者という経歴まであることが本紙の調べでわかりました。
問題の謀略本は『拉致被害者と日本人妻を返せ 北朝鮮問題と日本共産党の罪』(未来書房刊)。拉致問題をふくむ日朝問題の解決に大きな役割をはたした日本共産党を中傷し、「しんぶん赤旗」など日本共産党の著作物を大量盗用したため、日本共産党が名誉棄損や著作権法違反で出版社や「稲山三夫」名の著者などを提訴。現在、東京地裁で裁判がおこなわれています。
未来書房の海野安雄代表取締役は学会の地域幹部で、謀略本の出版・販売などに創価学会が深く関与していたことが本紙の調べで判明しています。さる六月二十四日の裁判で未来書房側の訴訟代理人は、著者「稲山三夫」の本名を柳原滋雄氏と明言。さらに同代理人は二日の裁判で、本紙記者が本人確認のために取材していた東京・新宿区在住の柳原滋雄氏を本の著者と事実上認めました。
この柳原氏は創価学会活動家。日本共産党を攻撃する場合には「稲山三夫」、反創価学会の陣営を攻撃するときは「中田光彦」のペンネームを使用し、取材・執筆していました。
柳原氏は「中田」名で、元創価学会顧問弁護士で現在、創価学会を批判している山崎正友氏を攻撃する『サイコパスの犯罪』、『サイコパスのすべて』を創価学会直系の潮出版社から昨年相次いで出版。月刊誌『潮』の昨年八月号にも同じ趣旨で山崎攻撃の記事を掲載しています。
攻撃対象は、山崎元創価学会顧問弁護士だけではありません。『潮』一九九九年十二月号では、創価学会を厳しく批判していた白川勝彦自民党衆院議員(当時)を攻撃するために「元恐喝男に『支配』される白川代議士」という記事も「中田」名で書いています。
この「中田」の正体は、山崎元創価学会顧問弁護士が潮出版社などを名誉棄損で訴えた裁判(横浜地裁小田原支部)で今年三月、被告側が「中田」の本名を「柳原」と示したことで明るみに出ました。
さらに柳原氏には一九九〇年代に、本名で「社会新報」記者をした時期がありました。当時は自社さ連立政権で公明党(新進党と公明)は野党。
当時の「社会新報」編集関係者によると柳原氏は、宗教法人法改正問題を熱心に「取材」する一方で、反創価学会団体の「取材」にも取り組んだといい、「記者採用当時は創価学会員とは知らなかった。その後、彼の結婚式で創価学会や公明党が前面に出てきて驚いた」と語っています。柳原氏は、その後「社会新報」を退職しました。
「創価学会による被害者の会」役員は「『社会新報』の名刺で『取材』する人物が『中田』や『稲山』だったとは。謀略の深さには背筋が寒くなる。許せない」と語っています。
日本共産党が反共謀略本を出版した未来書房や著者、本の車内中づり広告を掲示したJR東日本を名誉棄損などで提訴した訴訟の第三回口頭弁論が二日、東京地裁民事四十七部で開かれました。日本共産党の代理人は「名誉棄損にあたらない」などとするJR東日本の主張に反論しました。
また、未来書房の本店が移っているので商業登記簿を訂正して出すことを求めました。さらに、被告である著者の柳原滋雄氏が山崎正友元創価学会顧問弁護士にかかわる裁判の被告である柳原滋雄氏と同一人物であるかどうかを明確にするよう求め、被告の代理人は、事実上、同一人物であることを認める対応をしました。