2003年9月2日(火)「しんぶん赤旗」
小中学生が持っていることも珍しくなくなった携帯電話。一方で「出会い系サイト」などを使った事件も起きるなど、親としては子どもに使わせていいのか不安になることも。学校の現場で子どもたちと向き合っている、新潟県の公立中学校教諭・山田修さんの意見を紹介します。
今年二月、新潟県内のあるPTA連合会が、犯罪や非行防止のために「中学生に携帯電話を持たせない」というアピール文を各世帯に配布しました。中学生に所持を認めない、持っている場合は解約しようという内容です。
確かに中学校の現場では、携帯電話に関連した子どもの問題行動が、年々増えています。「問題行動の陰に携帯あり」は、私の実感でもあります。
「無制限な利用による時間とお金の浪費」「授業中のメールなど、学習への障害」「出会い系サイトを利用した“不純異性交遊”」「ケータイで連絡をとりあって万引きや窃盗、暴力行為」など、内容もさまざまです。
逆に、中学生が携帯電話を持つことによる利点はないのでしょうか。
その前に、私たちおとなが、携帯電話を持つようになったのはなぜでしょうか。それは「便利」だからです。いつでもどこでも連絡をとれる便利さは捨てがたいものです。それは子どもにとっても同じなのです。
塾やスポーツ少年団、遠距離通学する中学生が持っていれば、子どもだけでなく親も安心です。
私たち今時の中学教師は、携帯電話がなければ仕事になりません。不登校ぎみの生徒とのコミュニケーション、問題行動をとる子との連絡に「メール」の威力は絶大です。
「所持を禁止したところで、何人かの生徒は間違いなく隠れて持つだろう」が教師の本音だと思います。
私は、中学生の携帯電話所持については、もはや「所持禁止」をうんぬんする段階ではないと考えています。学校でも家庭でも、「いかに正しく使わせるか」「しても良いこと、悪いことを区別する、判断能力をつける」ことが必要なのではないでしょうか。
「出会い系サイトが心配」「電話料金が数万円もかかるからだめ」でなく、「危険なサイトに足を踏み入れない」「上限を決めて、その範囲内で使う」などのルールを決めることです。「月額三千円を超えた時点で発信できなくする」契約を利用することもできます。
もちろん“持たなければいけない”というつもりはありません。子どもに所持させるかどうかは、各家庭で決めればいいことです。“持たせる”でも“持たせない”でも、その理由を子どもに説明し、親子で語り合って、「わが家のルール」を決めてほしいと思います。
学校が、持ち込みや学校内での使用のルールを作ることも当然必要です。学校として、組織的・計画的に「使い方の教育」をする時代がきているといえます。「時と場所に応じた使い方」「学校生活と携帯電話」の教育、「クラス懇談会で各家庭の“わが家のルール”の交流」など、生徒や保護者に積極的に働き掛けていくことも大切だと思っています。
ほかに例がないほどものすごい勢いで普及したのが携帯電話です。今は“持たせない”と決めるにしても、中学生は、やがて高校生になり、社会人になります。おそらく間違いなく携帯電話を使うようになるでしょう。
親子や家族で議論を交わし、その家庭なりのルールができたりする。そんな経験自体が、子どもや家族の、そして親の、成長の一ページではないかと思います。