2003年9月1日(月)「しんぶん赤旗」
あしたの仕事があるのかどうか分からない派遣社員やパート、アルバイト。サービス残業と長時間労働にあえぐ正社員……。青年は大企業の都合のいいように働かされています。これでいいのか? 日本民主青年同盟は、政府の責任で雇用を増やし、安心して働けるよう求める署名活動を始めています。
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埼玉・所沢市の男性(32)は、ホンダの下請けをしている人材派遣会社に登録している派遣社員です。仕事がなければ無職、という状態です。「これでは安定した生活なんてできません」と署名に取り組んでいます。
給料は、日給と皆勤手当をあわせて一日九千円から一万円。週五日、海外発送部品の箱詰めをしています。「仕事では何かの技術を習得したいと思っていますが、今の働き方ではできません」
安定して物づくりできる仕事を、と工場で働く道を探しています。募集しているのはほとんどアウトソーシング(外注子会社)か派遣会社。正社員の求人は見当たりません。「ハローワークに通いたくても、やってるのは平日の昼間でしょう。仕事をさぼってクビになるのは困ります」
三十歳をすぎ、結婚や将来についての不安が増しています。「自分に自信がもてなくなってしまう」といいます。
「若い人が責任をもって仕事をするということを社会的に認めてほしい。同じように悩んでいる人はたくさんいると思います。だから、この署名は大事です」
東京・港区の民青同盟経営班では、経済問題の学習をしながら、青年労働者の置かれた状況を考えています。
『経済学Q&A』(学習の友社)をテキストに班員が分担してチューターをしています。八月末の班会では、「国際競争に勝つためにはリストラは仕方ないのか」と話し合いました。
社会人二年目のチューターの男性(23)は、NTTの十一万人リストラを例にとりました。NTTのもっている内部留保は八兆三千億円。労働者ががんばって働いたからためられたお金です。「もうかってもうかって仕方がない企業が、リストラする必要なんてない」と説明します。
アジアの安い労働力との競合に話題は移りました。「町工場のおじさんは、中国並みの単価で仕事しろといわれているそうだ。仕事するより寝ていたほうがいいと嘆いていたよ」「僕の働いている印刷会社でも、安売り競争が激しくて、いくら売ってももうからない」
班長の男性(32)が「大手の単価切り下げが中小業者を苦しめているんだ」と中小業者の置かれている状況を指摘します。労働者と中小企業の犠牲で大企業だけがいい思いをする――。チューターは、「国際競争で勝つため、というのは賃下げのいいわけにすぎないと思う」とまとめました。
班では、学習したことをもとに街頭宣伝をしています。残業代を請求できることなど働く人の権利を伝えると、「えっそうなんですか」と驚く人も多いといいます。派遣やアルバイトで働く人との対話も増えています。
民青同盟がよびかけている「青年に仕事を」署名をどのように集めるか――。「この署名、うちら(労働者)がやらんとね」「対話するとサービス残業をしているという人は多いね。請求して払わせていることを知らせていこう」。熱心に議論しました。
経営班の相談役をしている柳沢研さん(33)=印刷会社勤務=はいいます。「自分一人では、どうすればいいか分からない。でも、“不況はどうして起こっているのか”など、興味をもっている人は多い。そういう人たちに声をかけ、今の政治のあり方などを話しながら、方向性を見いだす。そういう行動を全国でやることに、この署名の意義の大きさを感じます」
東京都港区の民青同盟経営班の人たちは、どのような働き方をしているのでしょうか。
印刷会社の営業をしている男性(23)は、年間四千八百万円の売り上げノルマを課され、「達成はほとんど不可能です」。現在までの売り上げは約七十万円です。多い人で百万円。「僕がいる部署はとくに売り上げが悪いんです。もしかしたら、リストラの対象になるかもしれません」
月初めに誰がどのくらいの目標を達成したのかの一覧が回ってきます。「社員同士で競争させられている」といいます。
始業は朝九時。「暗黙の了解でみんな八時から出勤しています」。営業に回り社に帰ってきても、資料送付などの残業が。夜八時をすぎるのは珍しくなく、十時、十一時ということもあります。
昨年入社。同期八人のうち二人辞めています。「ノルマがきつい上に、やりがいがなかなかもてません」
IT関連のアウトソーシング会社で働く男性(32)はパソコントラブルの問い合わせに応じています。「僕の立場では、会社のためにがんばろう、と社員意識を求められても、つらい」。一方、本来自分が所属している会社のことはほとんどわかりません。
基本給は月十八万円くらい。生活のためにと、残業をこなしています。一日三交代。八月に一人辞め、二人で穴埋めをする異常事態に。夏休みはウイルス騒ぎで消えました。昨年、体をこわして十二日間入院。病欠は三日間で、あとは有給休暇を使わされました。
「自社じゃないから休ませてくれとも言いづらい。実は、隠れて就職活動をしてるんです。希望はどこかの企業のIT担当なんですが、どこを探しても派遣かアルバイトばっかりなんですよ」
コンピューターを使って製図の仕事をしているという男性(31)の会社は、東京・池袋に本社があります。三十人ほどの中小企業ですが、そこで働く人は半数くらい。ほかの社員は大企業に出向して仕事をしています。
入社して四カ月間は本社で仕事を覚え、昨年まで三年間、青森市に出向していました。出向先のプロジェクトに加わっていた人は百人近くいましたが、七割くらいがアウトソーシングでした。
今は、東京都内の大企業に出向しています。「ここもいつまで続くか。プロジェクトの関係で、次は九州に行くかもしれません」。あちこちに配転されるため、同僚には単身赴任をしている人も多い。「どこに行くか分からない、というのは不安です。先が見えてこないのがいちばんつらいですよ」
民青同盟がとりくんでいる「青年に仕事を−−政府は真剣にとりくんでください」署名の柱は次の四点です。
(1)青年の雇用拡大へ政府が責任を果たす
(2)新卒の未就労者に対する職業紹介、職業訓練などの具体的援助
(3)不安定雇用の青年を正社員に採用するしくみづくり
(4)学生の就職活動のルールづくり
民青同盟は、日本共産党とも協力しながら街頭宣伝や労働相談などにとりくんでいます。署名用紙は民青同盟のホームページからダウンロードできます。http://www.dylj.or.jp/
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Q 不況だから就職難は仕方がないのでは?
A 「不況」を口実にしていますが、実際はより大きなもうけを確保するためにとられている大企業の雇用戦略が最大の原因です。
長引く不況のなかでも中小企業(従業員五百人未満)は努力して青年の正社員を三万人増やしています。ところが大企業(同五百人以上)は百八万人も減らしています。(表参照)
大企業の三月期決算(二〇〇二年度)で営業利益(本業でのもうけ)を見ると、大きなもうけを確保しています。トヨタ自動車は一兆三千億円を超え、日産自動車は七千億円余。日立製作所千五百億円、松下電器千二百億円、東芝千百億円―。
大企業は、リストラで正社員の首切りをすすめながら、必要なときに安く雇えて、必要がなくなればいつでも首が切れるように、派遣労働、パートタイマー、アルバイトなどの不安定雇用をふやしてきました。フリーターが四百万人を超え、学生や主婦を除いた青年の五人に一人がフリーターという事態になったのも、このためです。フリーターの七割が正社員を希望しています。内閣府の「二〇〇三年版国民生活白書」でも、「大幅なフリーターの増加要因としては、どちらかといえば企業側の要因が大きい」と指摘しています。
一方、やっと正社員になれたとしても、膨大な仕事量を少ない人員でこなさなければならないので、大企業の職場は長時間労働、サービス残業(ただ働き)がまん延しています。
第一生命経済研究所の試算によると、サービス残業をなくせば百六十万人の雇用をつくりだすことができます。また、失業者減・所得増・余暇時間拡大で個人消費が増え、実質国内総生産を2・5%押し上げます。
日本共産党の志位和夫委員長は七月二十三日、国会の党首討論で小泉首相に迫りました。「若者の雇用問題は、日本社会の存続事態を危うくさせる重大な問題をはらんでいる」「政府として大企業に対して若者の雇用を増やすよう、本腰を入れて働きかけを、いまやるべきじゃないですか」。小泉首相は「ご指摘の点も踏まえて、今後の雇用対策にいっそう力をいれていきたい」と答えざるをえませんでした。
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