2003年8月29日(金)「しんぶん赤旗」
国土交通省がまとめた二〇〇四年度予算の概算要求で、川辺川ダム(熊本県)の本体着工費の計上を見送っていることが、二十八日明らかになりました。
本体工事関連費は一九九九年度から連続で予算に計上してきましたが、概算要求自体を断念したのは初めてのことです。
環境破壊をすすめ、無駄な大型公共事業だとしてダム建設に反対する農民や漁民、住民たちの運動が国土交通省をさらに厳しい状況に追い込んだ形になりました。
同省は、「本体着工ということになれば、これまでの繰越金で対応できる」とする一方、ダム建設に必要な漁業権収用を審理する熊本県収用委員会が結論を出していないことなどから、「概算要求では、本体着工費は計上しなかった」と説明しています。本体着工以外の移転補修費など五十六億円は計上しています。
川辺川ダム建設については今年五月、ダムから水を引く土地改良事業について、「ダムの水はいらない」と農民たちが利水事業の中止を求めた裁判で、国の手続きは「違法」との判決が出ていました。また、特産のアユ漁に打撃を与えるとして、漁民が「建設反対」という明確な意思を示したのにたいし、国が漁業権を強制的に取り上げるよう、県の収用委員会に申請し審理中です。
川辺川利水訴訟弁護団長・板井優弁護士の話 川辺川ダムの本体工事費の計上ができなかったということは、この事業に緊急性がないということを国土交通省も認めたことになります。したがって、国は強制収用の裁決申請を取り下げて、民意を問うべきです。