2003年8月28日(木)「しんぶん赤旗」
「みなさんのご支援のおかげで泣き寝入りせず、争議に勝ち、雇用の場も確保させました」。りんとした女性の報告に、会場を埋めた労働者らから割れるような拍手がおこりました。吉野川の流れに沿った徳島県西部の山峡のまち、池田町で二十二日夕、争議勝利報告集会が開かれました。
日本共産党の春名真章衆院議員、自民党県議、町長(代理)、連合加盟の西部地区労役員、地域労連議長と多彩な来賓があいさつしました。
女性たちは、JMIU(全日本金属情報機器労組)四国ジェイティエス電装支部の組合員です。
四国ジェイティエス電装は十二年前、JT(日本たばこ産業)池田工場の閉鎖に伴い、JTと自動車部品大手メーカーの住友電装が設立した合弁会社で、自動車部品を製造していました。昨年七月、来年三月末で会社を解散し、池田工場を閉鎖すると発表しました。
住友電装が「国際競争力に打ち勝つため、国内生産体制を再編する」というのが名目です。同社は、〇三年度三月期は六十億円の経常黒字を見込んでおり、メキシコやタイ、中国などで生産を増やし、現在62%の海外生産比率を〇四年度には80%にまで高めようとしています。一方、国内工場を閉鎖し、そこで働く労働者を追い出そうという身勝手なやり方です。
「百六十人の雇用が奪われる」。職場と地域に衝撃が走りました。
ところが職場の労働組合(JTグループユニオン四国JTS電装労組)は「解散・清算に伴う配転・再就職の支援に向けた会社の姿勢・決意を聞きたい」と当初から工場閉鎖を容認。ようやく開いた昨年八月の組合員集会で、組合員の森本良美さんが「会社を残して」と要望したのに対し、組合役員は「上で決まったことだから」の一点張り。「だったら工場存続を求める署名運動をしたらどうでしょうか」と聞くと、役員は「そんなことをすれば退職金ももらえなくなるぞ」とどう喝しました。
会社提案をさっさと容認した労働組合。「このままでは工場閉鎖・従業員解雇は免れない」「泣き寝入りはしたくない」と女性たちが話し合い、悩みに悩んだ末、JMIU徳島地方本部に相談。支援を受けてたたかうなかで、JMIU支部を結成しました。
「労働者が解雇されようとして支援を求めているのを放置すれば労働組合の存在意義がない」(西部地区労役員)と支援の輪が広がりました。
地区労を中心にして、労働者や住民が「四国ジェイティエス電装の工場存続と雇用を守る住民の会」準備会を発足させ、十一月に開いた住民決起集会には六百人が参加。県知事や町長、商工会議所会頭からメッセージが寄せられました。
池田町議会も四国ジェイティエス電装問題をとりあげ、十二月に「工場存続と雇用の確保を求める決議」を全会一致で採択しました。決議は「JTや住友電装グループは日本を代表する大企業であり、今日の厳しい経済情勢の中とはいえ、工場を閉鎖しなければならない緊急性はない。むしろ、これまで地域に支えられてきた企業として、いまこそ地域に貢献する社会的責任がある」と大企業の身勝手なリストラを強く批判しました。
日本共産党国会議員団も全力で支援しました。昨年十月、春名衆院議員と池田幹幸参院議員が労働者と一緒に親会社のJTと住友電装に工場閉鎖を撤回し、雇用を確保するよう申し入れました。池田議員は参院委員会で追及し、小林副大臣が「実情はわかるので、なんらかの話をしたい」と答弁。一月に実施した労働者の政府要請に、春名議員が同行しました。
JMIU支部と会社は七月、解決金を支払うことで徳島地裁で和解しました。たたかいのなかで(1)四国JTS電装労組が発表していた当初の退職金を大幅に引き上げる(2)「四国加工」という代わりの雇用の場を確保し、再就職を希望する労働者は優先的に採用する−などの成果も獲得しました。
JMIU徳島地本の森口英昭委員長は「連合、全労連という組織の枠を超えた共同や地域住民、池田町と町議会、商工会議所の方々との理解と応援で大企業のリストラを押し返しました。働く者が安心して働ける職場と社会をめざし、がんばりたい」と話しています。
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九月三、四両日、静岡県熱海市で開かれる「リストラ反対、雇用と地域経済を守る全国交流集会」は、無法なリストラとたたかう職場の労働者や中小業者、女性、弁護士らが一堂に集い、雇用と地域経済を守ろうと交流を深める場として、期待が高まっています。