日本共産党

2003年8月25日(月)「しんぶん赤旗」

難病新制度で負担3倍超に

全身性エリテマトーデスの女性

“患者の苦しみ 知って”


写真
東京都から送られてきた医療費自己負担の新制度の説明資料をもつ加納陽子さん

 十月から難病の新しい医療制度が始まります。自己負担増をしいるこの新制度をどうみているか、東京で暮らす難病患者の加納陽子さん(27)=仮名=を取材しました。(海老名 広信記者)

 暑い季節なのに、加納さんは半そでの服を着られません。紫外線に体が異常反応し病気が悪化するからです。病名は「全身性エリテマトーデス」。免疫性の疾患です。

 外出は黒っぽい長そでの上着にパンツスタイル。黒いつば広帽子に大きめのサングラスをかけます。「黒ずくめの異様な姿」で店に入れば警戒され、電車に乗れば乗客の視線が一斉に突き刺さります。加納さんは心の中でいい返します。「これで命を守ってるんだから仕方ないでしょ」

 二十歳のとき、関節がはれ微熱が続きました。二十一歳で、胸膜炎と関節痛がひどくて起き上がれず、口も開けられないほどでした。約二年間、入退院の繰り返し。

次々と命奪う

 病室では同年代の白血病患者らと親しくなりました。が、病魔は青春のただなかにある彼女たちの命を次々と奪っていきました。「葬儀に参列して彼女たちの遺影をみるつらさ。『次は自分か』という不安に耐えられませんでした」

 病気になる前はアルバイトに精をだし、お金をためていました。ニュージーランドにいって働きながら日本と違う自然や人々と触れあう夢をみて。でも、あきらめました。

 一時は車いすの生活でした。退院しても、「紫外線はだめ。冷えはだめ。人ごみはだめ」と制限された生活。

 ある日、母親の好美さん(48)が帰宅すると、頭をそった陽子さんが立っていました。「自殺できないから…。自分で頭をまるめた。生まれ変わりたいと思って」。そういう娘に母は言葉がみつかりませんでした。

人生設計狂う

 母、妹と三人の生活。好美さんは「娘の病気で人生設計が狂った」といいます。いまは娘を守ることで精いっぱい。「私が倒れたらどうなるのか」と不安がよぎります。

 「働きたい」と陽子さん。でも、体がいうことを聞きません。以前、退院後にアルバイトをしてすぐ悪化、再入院しました。「履歴書に病名を書いたら採用されないでしょう。健常者の友だちですら『働き口がない』という時代だから」

 難病の医療制度の変更に「これは改悪」と親子で声をそろえます。いまの自己負担は通院で限度額の月二千円まで、入院で一万四千円までを支払います。この限度額が十月から所得によって七段階になります。

 限度額は好美さんの去年の所得で計算され、最高段階の一万千五百五十円(通院)になりそうです。「何でこの収入で」と憤ります。今年は定昇がなくボーナスも減。「生活のため国民年金は払えなくなりました」。

 新制度では一回の検査通院に七千円の自己負担。交通費に二千円。食事代も合わせれば一万円にもなります。母娘は口々にいいます。「行政や政治家は難病患者の苦しみを知らないからこんな負担増ができるんだ。行政や政治家の不祥事のニュースをきくたびに腹がたちます。もっと医療や社会保障に目をむけた政治をしてほしい」


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