日本共産党

2003年8月17日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

この町、村が好きだから

合併しない道選んだ住民


 市町村の合併特例法期限二〇〇五年三月が近づき、千四百を超える市町村が法定協議会で協議しています。政府は、財政施策について市町村への「優遇措置は(合併特例法期限で)打ちきる」構えをみせながら、合併を推進。その一方で、住民投票で合併しない道を選んだ市町村が各地に生まれています。福島県東白川郡と島根県東出雲町のリポートを紹介します。


さびれてしまうのはイヤだ

福  島
塙町、鮫川村

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 福島県東白川郡の棚倉町、塙(はなわ)町、鮫川村の三町村合併の可否を問う住民投票(七月十三日)は、塙町、鮫川村で合併に「反対」が「賛成」を上回り、法定合併協議会は解散、大方の予想に反し合併は白紙に戻るという劇的な結果がでました。

 日本共産党は「棚倉町合併問題を考える会」(花坂和雄代表)や「未来をひらく鮫川村民の会」(金沢省道代表世話人)など、保守から革新までの幅広い住民や議員とも協力し、三町村の党議員を先頭に、いまの合併が、国の地方向け予算を減らすための押し付けであることや、合併推進派が根拠とする財政問題は、合併では解決されないことなどを明らかにし、合併反対を訴えました。

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住民投票で合併反対が7割を超えた鮫川村の役場

 唯一賛成が反対を上回った棚倉町は人口約一万六千人と三町村の中で一番人口が多く、中心地となる町でした。

7割余「合併ノー」

 一方、七割以上が反対に投票した鮫川村は、人口約四千五百人の昔ながらの山村で、JR水郡線の沿線からはずれています。一八八九年の合併以来、合併をしていない村です。合併しない道を選んだ理由で一番多かったのは「鮫川がさびれてしまう。合併したらみんな都会に持っていかれてしまう」(六十歳女性)という声でした。「いわき市を見ればそれがよく分かる」と指摘する人もいました。いわき市は鮫川村とも隣り合わせており、一九六六年に五市四町五村が合併して日本一(当時)面積の広い市となりました。手工芸品を作る高坂昭さん(78)は「昔からよく田人(現いわき市の最西端)に売りにいったもんだが、合併してからすっかりさびれてしまった」と言います。

 逆に東白川郡三町一村のうち残る一町「合併しない宣言」の矢祭町をあげ「矢祭町のことも影響した。同じ郡内に合併しない見本があるんだ」(自営業・七十歳男性)という声もありました。

 「合併のメリットだけが宣伝されて判断材料が足りない」という人も多くいました。実際、合併協の出したパンフレットは、“合併しない道”をまったく触れておらず、棚倉町でも「住民の利益、住民の目線で納得するように説明してほしい」(六十九歳男性)という声が出ていました。

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住民投票を告示する掲示板=棚倉町

推進村長は辞職

 さらに「住民向けの説明会で話されたのは、合併が前提ですでに決まったかのような話だった」「村民の間から合併の議論が出たのではなく、村の上部で勝手に合併を進めていた。理解を得られなくて当然」(前出の七十歳男性)など、住民の意見を後回しにした、いわゆる「上からの合併」に、住民が反発したと指摘する声もありました。

 住民運動では「村民の会」が「合併に不安を持つ大多数の村民の気持ちを尊重し、合併を『白紙』に戻し、住民本位の村づくりを目指す」べきだと訴えるビラを配布しました。今年四月に合併の推進を最大の公約として無投票当選した鮫川村の芳賀文雄村長は、この住民投票で事実上の不信任を突きつけられた形となり辞職しました。

 投票前、「鮫川はきっと反対が多いよ」と言っていた鮫川村で自営業の五十歳女性は「よかった。この村が好きだからなくしたくない。村政を身近に感じていられる。ほかの村民も口には出さなくても鮫川を好きなんだと思った。何年か後にまた住民投票をやっても、きっと同じ結果になるんじゃないかな」と話していました。

 (福島県・町田和史記者)


交付税減らし狙う押付け

島  根
東出雲町

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 島根県の県都松江市の東に位置する人口一万三千八百人の八束郡東出雲町は、七月二十七日に法定合併協議会設置を問う住民投票を行いました。「反対」が四千四百十四票で「賛成」の三千六百五十七票を七百五十七票上回り、「単独町政の存続」が決まりました。

 日本共産党東出雲支部は、民報「まちの灯」で早くから合併問題を取り上げてきました。昨年九月の町議会議員選挙でも「今回の合併は、交付税減らしが目的の押しつけ合併だから、合併すれば、きめ細かい住民サービスが失われ、負担がふえる」と合併反対を掲げ、引き続き二人の議員の再選を勝ち取りました。

町長も精力的に

 石原真一町長は「東出雲町は、人口も増え元気な町であり、合併には慎重にならざるをえない」と、集落ごとの町政座談会や各種団体との意見交換を精力的に行っていました。

 選挙が終わり、新しい議会構成となった後、同町議会は松江市と周辺八町村が合併するための法定協議会に不参加を決めました。昨年十月十八日の「町として法定協に参加しない」との町長見解に賛成が十、反対が四、保留が二という結果となりました。その後、保留の議員が賛成にまわり、賛成が十二となりました。

 合併推進派は、ただちに署名運動を展開し、東出雲町も含む法定協設置を関係町村に付議しました。しかし、東出雲町議会が否決したため、再び署名運動を展開し、法定協設置を問う住民投票となったのです。推進派は、「町長や議員は共産党に踊らされている」などと日本共産党を誹謗(ひぼう)中傷するビラをまいてなりふりかまわぬ攻撃をしかけてきました。

 党東出雲支部は、独自に反撃するとともに、住民投票に向けては、「単独町政を望む」一致点で広範な人々と共同して取り組み、「単独町政に賛同する会」を立ち上げました。

 七月に入ると、町長の後援会とも連携して宣伝カーをまわし、ビラを配布し、投票日当日も午後八時まで投票参加を訴えました。住民投票は、町議会議員選挙の投票率を上回る77・52%という高い投票率で勝利したのです。

 法定合併協議会 合併特例法第三条で「市町村は、合併の是非を含め、市町村建設計画の作成やその他合併に関する協議を行うために設置する」としています。

 市町村合併をしない矢祭町宣言 福島県東白川郡矢祭町議会が二〇〇一年に決議。国のすすめる合併の目的について「交付金・補助金を削減」と指摘。そして「矢祭町はいかなる市町村とも合併しないことを宣言します」と明記しています。

24日投票で町長選

 投票日翌日、松江市長は一市八町村で共同実施している広域行政組合について「東出雲町は、単独町政を選択したのだから、ごみや消防等は単独で実施すべき」だと発言。地方自治法の精神に反する発言に対し、町内外から怒りの声があがっています。

 八月二十四日投票の町長選挙には、合併推進を掲げる候補と単独町政をめざす現町長との一騎打ちとなります。党東出雲支部は町長選挙で石原真一氏必勝のため燃え、奮闘しています。

 (島根県東出雲町・吉儀敬子町議)


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